無職転生  異世界行ったら本気だす 3<br><br>ルイジェルドとの出会い
無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ 3 (MFブックス)Amazon

理不尽な孫の手(著)
〇あらすじ〇
無職ニートだった男・ルーデウスは、原因不明の魔力災害に巻き込まれてしまったことで、家族と離れ離れになってしまう。災害によって転移した先は見知らぬ場所。一緒にいたのは、家庭教師の教え子でもあるお嬢様のエリス。不安が募るルーデウスの側に怪しい人影が…!?あの幸せを取り戻せ!大人気の"人生やり直し型"異世界ファンタジー第三弾、ここに登場!

ルーデウスの考える数々のシーンが印象的だった。魔術のように合理的につめて上手くいきすぎたり、
苦境に立たされて考えても考えても分からなくて切迫していたりと一人の少年の慢心と葛藤が軽く、時には重く語られていく魅力があった。魔大陸での出会いと冒険の物語。ルーデウスが命名した隠語につい笑っちゃう。

畏怖の象徴、スペルド族との出会い

魔大陸に転送されたルーデウスとエリスを、意識が戻るまでの間スペルド族のルイジェルドが見守っていた。
ルーデウスは恩義から感謝を伝えてあいさつをして相手を知ろうとするけど、エリスの絶叫ぶりは凄まじいものがあった。そう、スペルド族は畏怖の象徴として人々から忌避されてきた存在。だけどルーデウスは聞いていたスペルド族への先入観ではじめから避けるのではなく、助けてくれた1事実から相手をしっかりと見て、相手を知ろうとしていて懐が深かった!知らない場所でエリスと共に逃げられる自信はないのでとりあえず会話を試みて状況把握、時間稼ぎしようという算段もあるんでしょうが、それら含めても平静を装えるルーデウスは強いと思った。 

現実を前に身が竦むルーデウスの心情

ルイジェルドの過去を知ってスペルド族への認識を改めたルーデウスは、スペルド族への世評を変えることも目標の1つに据えるが、子どもを蹴った、たったそれだけの理由でルーデウスを蹴り飛ばした冒険者を躊躇なく殺めてしまうルイジェルドに恐怖を覚えてしまう。そういった弱い部分も見せるルーデウスの吐露はルイジェルドへの信頼が揺らぐ悩みの内容で読んでいてささるものがあった。常識が違うことがあるなら、認識合わせをその都度おこなっていこうというルーデウスがたくましく見える。

冒険に憧れていたエリス

魔大陸で得られる食材は乏しく味も期待できない中、得られた食材を上手く食べられるレベルに調理して食べるのでお嬢様育ちのエリスにとってはさぞ辛いものだろうと思っていたが、彼女は冒険の衣食住を楽しんでいる様子だった。だけど中央大陸に本当に戻れるのか不安をこぼして、彼女の思いを感づけなかったことに我が身を恥じるルーデウスのところのシーンは挿絵と相まって印象に残る。そして、エリスにとってルーデウスがどれだけ心の拠り所となっているのか1冊を通して伝わる。
エリスにできる剣術をルーデウスはできないし、ルーデウスにできる魔術をエリスはできない。互いのよいところを引き出し、足りないところは補って戦闘していくシーンも面白い。ルイジェルドが強すぎるが。
ルーデウスとエリスはルイジェルドに守られる存在ではなく共に戦う戦士となっていく流れに胸が熱くなる。

非道の道に進もうとも、少年は守るべきもののため覚悟を決める

ルーデウスの考えるシーンが幾度と今までの物語で出てきたけど張り詰めて考える様子は今までの比ではなく緊迫感が伝わってくる。悩む時、脳内に3つほど候補をあげてそれぞれ得られるメリットと被るリスクを検証していくんだけど、最後の展開だけはどうしてもどうにもならなくて相手を殺す選択以外がとれない・・・。
ここのルーデウスの苦悩から滲み出る語りが辛いが没頭して読んでた。共感しかなかった。
そこで、自分の目的はなんだ?と原点にたちかえった時、非道の道に進もうともエリスを守るため、無事に中央大陸に一緒に戻るため相手を殺すことに決めた少年の覚悟の重さが痛切に響いた。

そこはルイジェルドが回収するおちなんだけど、そこだけはルーデウスを共に戦う戦士ではなく、守るべき子どもと見て手を差し伸べたルイジェルドさんかっこよすぎ。ルーデウスにあとで言った、覚悟の語りが一番好きなシーンだった。

街でルーデウスがエリスに服をプレゼントして、エリスは大変気に入ったご様子。エリスが冒険者に執拗に絡まれてフードに裂傷が入り振り向き様のボレアスパンチ!という命名に笑うw
怒った理由はお気に入りの服のフードが破れたから。冒険者を必要以上にぼこりながらエリスが放つ

「これは、ルーデウスが、初めて、買ってくれた、服なんだからね!」

合掌。

他に味わい深い戦記を求める人に

硬派戦記「烙印の紋章」「レオ・アッティール伝」を手掛けてきたの著者の新シリーズ。

タイトルで想起される軽やかな筆致の物語ではない。
じんわり温まる小説や心揺さぶられる小説、熱い小説に読んでいれば幾度出会うことはあれど、はじめから最後まで味読ができた上で上記のどれかの小説たり得るものは、電撃文庫でデビューして20年活躍している杉原智則先生の小説が筆頭に挙げられる。面白いシーンで楽しませることも大事だけど小説の本質は、読ませる文章で深い没入感があり、味わい深く読める小説であると思う。物語を形作るのは文章だから。面白い上に味読ができれば、最高な小説に化ける。というのは杉原先生の本を手に取ってパラパラめくれば直感で全体的に文章がぎっしり詰まっていると分かる。とにかく読ませる文章と()のキャラの心の声によるテンポが堪らない。笑みをこぼしたり、ぐんぐんのめり込んだり、ドン!と考えさせられる心境に陥ったりと地の文の多さが魅力にしか映らない小説。会話の勢いでごまかさず、紛れもなく地の文で形作る物語で勝負している小説。
物語は、英雄の1人が災厄を阻止した平定後、敗戦国に立って目のあたりにした事実から自身の正義に問いかけ、悩み、虚飾に満ちた真実にメスを入れる物語。現地に立ってみて体感することは、真実は事実を曇らせるということ。読者の現代に通底するテーマがあり、現実に影響を及ぼす力があるライトノベル。
イラストレーターをかえた2年ぶりの続刊に、作品を追っていた多くの読者が歓声を上げた。

少しでも気になったら、1巻の熱いAmazonレビューの数々をご一読ください!
3巻は2年ぶりの続刊であるにもかかわらず1巻よりも星の数が多いのでファンの方々がどれだけ切望されていたか伝わってくるかのようです。著者はブログやTwitterをやっておらず宣伝は発売時の公式アナウンスだけなので多くの口コミが集まるのはうれしい限り。

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