
理不尽な孫の手(著/文)シロタカ(イラスト)
〇あらすじ〇
エリス不在の虚しさと共に、母・ゼニスを探すためローゼンバーグへと辿り着いたルーデウス。やるべき事をやるだけと単独でAランク依頼を受けようとするルーデウス。その心は予想外にエリスとの別れに蝕まれていた。
ルーデウスのゼニス探しの旅が始まった。ルイジェルド、エリスはいない。
エリスが近くにいない喪失感を抱えたまま前へと進むルーデウスの旅路。新たな出会いと別れが描かれ切なさの余韻が残る1冊だった。
後はネタバレを含む感想~
ソロで祈祷をささげる毎日
エリスに捨てられたと勘違いしているルーデウスにあるのは虚無感・・・今までの粋なルーデウスの語りから一転、生気を失った者の語りになってしまった。母ゼニスの捜索のため、北の国でソロで名を売っていく。
魔術師でも大事なのは体力であることを重んじて毎日欠かさずランニング、体幹トレーニングをしている。
勇ましい魔術師に見えるのに当の本人が見る世界は灰色のよう・・・
前世の時の感覚と重なって辛そう…だけど前世の方が辛かったのでまだ前を向いて生きていけるという。
精神年齢ではおっさんなので、人生経験を積んでいるルーデウスのメンタルは強いと思う。
毎日ロキシーのパンツに祈祷をささげるのは面白いように見えるけど本人にとってはロキシーのパンツが心の下支えなんだよね。
一部の否定が全否定になってはいけない
サラという弓使いの少女が登場する。貴族の怠慢によって両親が死んだサラは貴族であるルーデウスを嫌っていたが1巻を通しての関わりで見方をかえていく物語は一種の切ないラブストーリーとして読める。本当に最後が切ない。サラがルーデウスを認めて、意識するようになって、意識が次第に恋心へと昇華していく様相が描かれて、サラ視点の語りが間にあって、両者の視点から語られる惹かれあう物語が面白い。
サラとは違うパーティのリーダー、ゾルダートも第一印象が悪いけど、それだけで全否定しちゃいけないんだとしみじみ思う。
サラとゾルダートの2人を見て、家名や第一印象という一部の否定が全否定になってはいけない教訓を教えてくれる。
本心を隠して作り笑いを浮かべるルーデウスの本性を暴きたいゾルダートは後半だとルーデウスの悩みに付き合ういいやつなんだ・・・さすが一目を置かれているパーティリーダーだと。
精神疾患を抱えていることが判明
もうエリスに愛想をつかされたルーデウスは、次の恋を見つけよう決めていた。サラが積極的にアプローチしてくるので本能に委ねようとするが・・・・・・・・・
心が燃えていても体が反応しない。
ここんところは気まずい感じだった。サラがかわいそうで・・・
そんな悩みを聞いてくれたのがゾルダートで、彼の勧めで夜の大人のお店で遊んでも反応がなかったことに意気消沈してしまう。
帰りに酔った勢いでサラはガキで、店の嬢は大人~!と言ったのをルーデウスを探していたサラが聞いてしまっていて、ビンタをくらってしまう、失墜の底だわ・・
自殺をしようとするルーデウスの気持ちははかりしれないなぁ。
ルーデウスの精神力が・・・・! 前巻で、アイシャから紛うことなき兄は変態です!と言われルーデウスの精神力がゼロよぉ・・・と心でぼやいていたけどここは真の意味で精神力がゼロになってそう・・・
さらにルーデウスが追い詰められるとはあまりに不運であった。
伝えたいときにもう、想い人はいない
サラが後でルーデウスが精神的な疾患を抱えていたことに気づき、もう一度会いたいと思った時にはもうルーデウスはいない。切ない青春小説だった。ルーデウスとサラとの関わりだけのページを切り取ると短めなんだろうけど切なさが余韻として残る物語だった。
ルーデウスが一言もサラに残していなかったのが完全な否定に映ってしまった。
サラが前巻のルーデウスと重なって見えた。
再会を望みたいところ。