
理不尽な孫の手(著/文)シロタカ(イラスト)
〇あらすじ〇
魔法大学に入学し、前世では出来なかった充実した学園生活を送っていたルーデウス。
ある日、街で共に転移事件を調べているフィッツに出会う。
しかし、普段とは違いどこか余所余所しい様子を怪しんだルーデウスは独自に調査を開始。
その結果、生徒会によって隠されていたフィッツの秘密を知ることに。
「でも、フィッツ先輩は隠しておきたいのか」
ただならぬ事情を感じたルーデウスはそれを胸にしまっておくことにするが、当のフィッツに森へ連れ出されてしまう!?
2人の焦れったい距離感での関わりだけでも面白いのでそのままでもいいと思ってたけど、興味本意から話が進んで中々ふみこめないもどかしさを抱えつつも援助があって、色んな人の温情や善意が微笑ましい物語への帰結へと集約していく温かな話だった。
言わなかったことを後悔しないようにと心がけるルーデウスの考えは、彼のこの世界での経験を思えば共感するもの。
そして、番外編では久々の重要人物の登場に心が躍った。
悲劇のヒロインにならないよう願うばかりだ。
後はネタバレを含む感想~
白い仮面少女
ルーデウスがあれだけ乱れるのは滅多にないだろうと。ルーデウスの心臓を刺し貫いた龍神オルステッドの傍にいた白い仮面少女と再会する。彼女が表に出ない特待生だった。
1巻、前世で死ぬ直前に34歳が目にした少女だった。ルーデウスのように転生ではなく、転移できていることが判明して地球に戻る方法を模索している。だがルーデウスのように魔力はないので、実験でわかったことを情報提供する代わりにルーデウスに実験を手伝ってもらうギブアンドテイクの関係に落ち着いた。
白い仮面少女の名をナナホシ・シズカ。ナナホシっていう響きは、料理関連で既に登場していたね。
一緒につるんでいた男子2人が転移?転生していたら気づいてもらえるよう本名を使っているらしい。
ナナホシが転移したタイミングがフィットア領消滅と重なることから近因的に自分がひきおこしたものだとナナホシは語る。じゃあルーデウスの転生は?となんと転生の因果関係に言及するようになるので話が壮大になってきた。物語を進めながら徐々に、間に少し真相に踏み込んでいく話はスパイスが効いているようで面白い。
ほんと少しずつなんだよね。ルーデウスは9巻の時点で15歳。あと現行だと13冊も先があるからじわじわと世界の理に迫っていくのは読み手の心をくすぐっていくようだ。
また会えたね、シルフィ
8巻の初対面のタイミングでフィッツの言動がシルフィのそれにしか見えなくて一体どうなってんのかと思ったけど、前巻にシルフィとフィッツで会話しているシーンがあったから、あれ、別々の人物なの?と懐疑的に思ってたけど本巻で真相が明らかに。
フィッツはシルフィだった。シルフィを支えるアリエル王女とルークは協力的だった。
シルフィの意をくんで本人にまかせたまま半年がすぎて何も進展がないから焦れったくなったアリエル王女はとうとうシルフィの本心を引き出し、本人に再認識させる手際は見事で、本心からの笑顔は温かく見守る聖母のよう(想像
シルフィが真実をルーデウスに打ち明けられるよう入念な準備をして本番を迎えるんだけど、予想外に事が運ぶ展開はなかなか痛快で、最後には打ち明けてられてなによりだった。1年かけて積年の思いをつげられた。
本巻の後半にエリスの時と同様に再会してからの内面の様子がシルフィ視点で語られていて答え合わせしているような感覚で読んでいた。
そしてルーデウスの不能も完治した。互いに好きといい愛の営みを終えて微笑ましい展開なんだろうけどちょっと待ったをかけたい。
エリス応援派とてはエリスが悲劇のヒロインにならないことを強く望む!
読み終わった後次巻をちらっと見たら結婚話になっているんですが・・・
剣の聖地にて
きたー! エリス登場。番外編だけど短くもこれからの展開につながる興味掻き立てられる話だった。
本編でルーデウスが決闘を申し込まれた時に、彼の目に映った剣の少女はエリスに仕返しを企んだ剣神の長女ニナだったんですね。
魔王を王級並みの魔術でしとめたルーデウスを見て、エリスがあの強さと並び立つことを目指し鍛錬を積んでいることに気づき、ニナのエリスを見る目がかわっていく・・・次の話があったらいいな。