吸血鬼に天国はない(3)<br><br>つかみとったもの
吸血鬼に天国はない(3) (電撃文庫)Amazon

周藤 蓮(著/文)ニリツ(イラスト)
〇あらすじ〇
「お兄ちゃんも真面目に生きて、天国を目指そうって気になってきたんですか?」
 個人でやっていた運び屋を、会社として運営し始めて早一月。恋人のルーミー、そして社員として雇い入れたバーズアイ姉妹たちとともに仕事を回す日々。経営は苦しいながらもシーモアは、情報屋のフランから「真面目」とからかわれるような幸せに浸っていた。
 だがある日シーモアのもとに捜査官から、ルーミーのもとに殺人株式会社から、脱獄した『死神』の捕獲・討伐に協力するようそれぞれ秘密裡に依頼が入る。
 一方、『死神』の手による連続殺人事件が巷を騒がせるようになり、街は徐々に無秩序がはびこるようになっていた。はからずも同時期、街には新たなる怪異が産声を上げようとしていて……。

シーモアとルーミーの恋人同士という関係は、契りを結んだ意識的なつながりにとどまっていた。だけど死神や死神を取り巻く者達との関わりから感化されて、気づき歩み寄っていく感動的な話だった。
"愛とは"、"普通とは"自分を自分たらしめるものとは何かについて考え前へと進んでいく各々キャラの考えは思慮深いように思えて話が深いなぁ~とつくづく思いながら読んでた。
またルーミーと出会ったからこそ死神を見るシーモアの目は、死神を畏怖の対象と見ている多くの者の目と違くて1巻、2巻での知見が生かされていて奥ゆかしさを感じた。

はネタバレを含む感想

背負い込むことは色づくこと?

今までソロで運び屋として、表社会、裏社会で仕事を請け負う際は一貫して中立の立場を堅持していたシーモア?。面倒事に踏み込まず、引き際をわきまえて仕事をこなしていくシーモアは世渡り上手なイメージだったけどルーミーやリン、ニベルコルと出会い、共に仕事を回すようになって従来のように仕事をこなしていいのか考えるようになる。モノトーンの世界が淡く色づくイメージだった。だってこの世界は、大戦と禁酒法によって旧世界の価値観が崩壊している世界。禁酒によって裏で酒を醸造する裏組織が台頭し、警察官や議員が酒を買っている始末。"この世界は壊れてしまっている。ただ、その世界にシーモアがいるだけ"だと。アニメ映像にしたら茶褐色が色濃く映る世界なんだろうか、心理描写を表現する小説ではモノトーンの世界なんだろうか。
恋人の契りを結んだルーミーと、社員として招き入れたニベルコル、リンとの日常は、平穏が続く限りは楽しく幸せという言葉を使っていいくらい満ち足りた(足りてる?)日々だろうと思った。
共にすごす時間も長くなれば、関係もきっと深まる。シーモアは社長として資金繰りに頭を悩ませつつも今の生活の方がいいと捉えているなら、目に映る世界はモノトーンから色づいたものになっているのかなぁって。

シーモアにとって、他の人の幸せが自分の幸せになっている。
裏組織との仕事の方が報酬がいいけど、取引を続けていけば、シーモア個人ならいいとしても他の社員に危害が及ぶかもしれないことを考慮しているシーモアから思った。今の生活楽しそうだもの。
そんなシーモアに情報屋が含蓄ある言葉をかけるもんだから、もっと情報屋との接点を増やしてほしい。

たしかなもの

死神。理不尽を現実にする超常的存在。死神を捉えた警察官の娘エマ・コスナーとの出会いによって描かれる心の変容は好きだった。ただ機械的に物事を判断するAIではなくて時には失敗もするけど感情を宿す者の言動は心の機微に紐づいている。だからこそいい。美しい。見る者の立場によって同情の余地の度合いが変わる。
また、ルーミーと出会ったからこそ、シーモアは死神をただの怪物として敵対するのではなく、相手を理解するところから歩み寄ることができたんだなって。
シーモアだからこそ気づけた死神の様相。論破する過程の中で確認できた"たしかなもの"
この本で描かれる"たしかなもの"や"それ"について、なにか言葉で的確に言い表すことや飾り立てるのが陳腐なように思える。今までたくさんの人間を喰らってきた吸血鬼ルーミーを受け入れて共に生きていく中で醸成された"たしかなもの"についてそれは"たしかなもの"としか言えない。だから尊い。周藤先生が作り出す世界はなんて深いんだ!と思う。自分は深く本を読めてないから・・・つくづく

道をはずれてこそつかみとったもの

父の死から自分の価値基準がぐちゃぐちゃになって、普通の道からはずれて家出して運び屋を営むようになった。ルーミー達と出会い共に暮らすようになって幸せを享受し、普通の道へと帰着しようとしている。この"普通ってなんだ?"という言及が小説にあって考えさせられるようになっている。
自分が辿ってきた道に後ろめたさを覚えるのか、糧となったのかシーモアが答えをひねり出していくストーリーが印象的。

終始何言ってるか分からないけどだらだら残す。

スポンサーリンク