86―エイティシックス―Ep.8 ―ガンスモーク・オン・ザ・ウォーター 感想<br><br>イシュマルの語りが響く
86―エイティシックス―Ep.8 ―ガンスモーク・オン・ザ・ウォーター― (電撃文庫)Amazon

安里 アサト(著/文)しらび(イラスト)I-IV(著/文 | イラスト)
〇あらすじ〇
〈レギオン〉完全停止の可能性。
 終わらぬはずの、戦争の終わり。
 それは人類の悲願。明日への希望。
 しかし、戦士たちは――戦いが終わった先、戦場で死ぬ定めだった「エイティシックス」は、どこへゆくのか。
〈シリン〉との出会いで、死を恐れぬことの不気味を知った彼らは、閉じていた未来への眼を、無理矢理に開かされた。
 ある者は、愛する人を見つけた。
 ある者は、世界を見て夢を描いた。
 だが……、それが出来ぬ者は。
 温かい希望の光が、彼らの鉄の意志と結束を歪め、そして。
 ついに、過去最悪の犠牲を生む。

86アニメ化うれしいですね。作画が大変そうですが・・・制作会社はA-1 Picturesなんで大丈夫そう

はネタバレを含む感想

変わることを望む者、望まない者

1巻の時から2年の歳月がたった? 1巻のカラー口絵に載っていたエイティシックス達の何人かはいなくなってしまった。
8巻までくるとエイティシックス達の内面に変化があり時が進んでいることを思わせてくれる。長期シリーズの魅力だなぁと。
戦い抜く誇りや、自分は人とみなされず、常に奪い続けられる身で死ぬ定めの運命であることを背負って戦ってきたエイティシックス達。
1巻の時点でみんなで集まった時には少しは将来のことを口にしていたかもしれないけど、8巻の時の状況の方が、語る将来が現実味を帯びている感覚がある。それは自ず戦うための理由が増えて活力になるのかなぁ。将来のことを考えるっていうのは、考えられるだけの心の余裕が少しでもあると思う。以前までのような度重なる戦争で心が摩耗して他のことは考えられない状態よりかは回復に向かっていると思える。そこでレギオン停止の可能性が見えたものだから、終わらない戦いを終わらせる戦いが始まるのか。
変わっていく仲間達を見て、変わらないほうがよかったと言外に語っている仲間や、気持ちを引きずっていて、なかなか割り切るのが難しいと思う仲間もいる。1人で抱え込まず、共に戦ってきた仲間に相談するシーンを次巻でも読みたい。

あとは誇りっていうワードがたくさん出てくるんだけど、誇りは見方を変えれば縛りのように見えた。

伝えていなかったことを後悔しないように・・・

今回は海上の要塞攻略の話で挿絵で紹介されていてよかった。なんとも巨大な禍々しい景観だった。
今回の戦いでシンに頼りきっている現状が浮き彫りになるけどしょうがないとしか言えない。
限られた戦力で今まで最善を尽くしてきたし、特に過去の高機動型との戦闘ではシンがいないと務まらなかったと思う。一番アニメ化してほしいのが高機動型との戦闘!6巻の内容なのでアニメ化になっても描かれないけど見たいシーンがそれ!熱いのがそれ!
戦力面でなく、精神面でも仲間達にとってシンがいかに精神的支柱となっていたか伝わってきた。
レーナもそれはそれは取り乱していたけど。シンが戦線離脱するところで思ったのは、戦場で生きているからこそ、言いはぐれることがないように伝え合ってほしいと思ってしまう。特にクレナ。

自分に恥じない生き方をしたい

誇りさえも捨てて戦う征海氏族の考え方が理解できないセオのシーン。
色々失っても自分を支える誇りをなくすなど考えられないセオだったが、イシュマルがセオに語り聞かせた恥じない生き方のところはじんわりと響いた。
戦死した戦隊長に心の中で伝えていた内容は、イシュマルの言葉に感化されたんじゃないかと思う。

レギオンの軍事力・・・

要塞のトラップとか、後で出てきたやつとか踏まえるとレギオンの軍事力が悍ましい。
チャンスがあったら人の脳を鹵獲する回収機とか。
人類はじり貧なんじゃないかと思うけど、そこはアネットさんの発明に期待したいなぁ。

あとはアネットとシンの2人きりの状況が出てきてほしい。幼馴染に近い関係なのに、再会できたのに・・・どうしてもシンとレーナに焦点がいきがちなのはしょうがないけど・・・

味わい深い作品を求める人に

硬派戦記「烙印の紋章」「レオ・アッティール伝」を手掛けてきたの著者の新シリーズ。

タイトルで想起される軽やかな筆致の物語ではない。
じんわり温まる小説や心揺さぶられる小説、熱い小説に読んでいれば幾度出会うことはあれど、はじめから最後まで味読ができた上で上記のどれかの小説たり得るものは、電撃文庫でデビューして20年活躍している杉原智則先生の小説が筆頭に挙げられる。面白いシーンで楽しませることも大事だけど小説の本質は、読ませる文章で深い没入感があり、味わい深く読める小説であると思う。物語を形作るのは文章だから。面白い上に味読ができれば、最高な小説に化ける。というのは杉原先生の本を手に取ってパラパラめくれば直感で全体的に文章がぎっしり詰まっていると分かる。とにかく読ませる文章と()のキャラの心の声によるテンポが堪らない。笑みをこぼしたり、ぐんぐんのめり込んだり、ドン!と考えさせられる心境に陥ったりと地の文の多さが魅力にしか映らない小説。会話の勢いでごまかさず、紛れもなく地の文で形作る物語で勝負している小説。
物語は、英雄の1人が災厄を阻止した平定後、敗戦国に立って目のあたりにした事実から自身の正義に問いかけ、悩み、虚飾に満ちた真実にメスを入れる物語。現地に立ってみて体感することは、真実は事実を曇らせるということ。読者の現代に通底するテーマがあり、現実に影響を及ぼす力があるライトノベル。
イラストレーターをかえた2年ぶりの続刊に、作品を追っていた多くの読者が歓声を上げた。

少しでも気になったら、1巻の熱いAmazonレビューの数々をご一読ください!
3巻は2年ぶりの続刊であるにもかかわらず1巻よりも星の数が多いのでファンの方々がどれだけ切望されていたか伝わってくるかのようです。著者はブログやTwitterをやっておらず宣伝は発売時の公式アナウンスだけなので多くの口コミが集まるのはうれしい限り。


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