無職転生 異世界行ったら本気だす 13<br><br>家族の温かみ

理不尽な孫の手(著/文)シロタカ(イラスト)
〇あらすじ〇
二番目の妻と娘を迎えて、ルーデウスは新たな生活をスタートさせる。シルフィとロキシー、二人の妻は仲が良く、彼女たち双方を大切に思うルーデウスは幸せに暮らしていた。三人で買い物に行ったり、魔術を学んだり、友人の結婚式に参列したりと、リアルが充実した毎日を送る。
そんな中、妻達二人とともに仕事をすることになったルーデウス。そこにいたのは、かつて苦い別れ方をした少女サラだった。
「元カノと仕事で一緒になる、なんて」

13巻。語られる日常編はどれも安定して面白いと思う。各キャラの生い立ちや、根底にある信念、目標、ルーデウス邸に集まるまでの経緯が既刊で語られてきて、数々の物語の積み上げがあるからこそ平坦な日常編が深みのある話になると思った。父パウロの家族が1つに集まる願いが体現した表紙と本編から家族の温かみが伝わってくる。

結婚をシルフィーに認めてもらえたのだと実感するロキシー

前巻でルーデウス一行がルーデウス邸に戻り、父の死とゼニスが廃人になっていること、ロキシーと結婚することを伝えた。シルフィはその場で認める寛容さ示していて良妻すぎると思った。
ルーデウスが別の女性を連れてくるのは時間の問題だと思っていて、シルフィ1人でルーデウスを独占できるものだと思っていなかったと。1巻ではリーリャと関係をもった父パウロを非難していたのにいざ実際ルーデウス自身もシルフィとロキシーと関係もっているんだから親子の血筋を感じさせる。
ノルンとアイシャの1年遅れの10歳誕生日会にサプライズでシルフィから結婚祝いの贈り物をロキシーはもらって、本当にシルフィに認めてもらえたのだと実感したようでなにより。ロキシーは自分自身を自罰的にみたり卑下したりといった傾向が見受けられたから報われた。

サラと再会、揺らぐ結婚観

アスラ王国のお偉いさんの護衛任務でルーデウスが任命され、仕事場にいくと7巻で別れたサラと再会した。
7巻は書籍版のための書き下ろしストーリーだった。根性の別れだと思っていたけど再会して、仲直りすることができた。互いに心のしこりを残したままだったから解消されて晴れやかな気持ちになった。
ルーデウスは好いていなく、サラは恋していた。だがサラの恋は7巻の時点で終わったのだと明言した。
サラからあんた変わったね、と言われた時ルーデウスは気づいていなかった。
7巻より近い距離感で会話できていることはルーデウス自身の変化がうかがえる。7巻ではエリスを失った喪失感でいっぱいで口調は丁寧語、波風立てないようくりくだって一歩距離をおいて接する姿勢を堅持していたものだから。今のルーデウスはあの時になかった自信がある。
サラとまた会えるといいな。

シルフィから、特別に思っている相手だったら結婚相手は2~3人いてもいいと言われた時にルーデウスがエリスのことを思い出していたのは哀愁を帯びているようだった。
ルイジェルドから勘違いであると指摘されて揺らいだ10巻。
エリスとの再会が待ち遠しい。

ノルンは兄から剣術を学びたい

そう言いだしたのは前巻で、体操、ランニング、素振りといった基礎鍛錬を繰り返してきたようだ。
型に入ろろうとする時、訓練が厳しくなり甘えが許されず一度投げ出したら二度と教えることはないというルーデウスの忠告にノルンは元気よく はいと返事をする。たぶんここまでなんで剣術を学ぼうと思ったのかノルンから語られていない。ルーデウスがベガリット大陸にいっている間、教会で無事を祈るノルンに声をかけて、なんで自分がここにいるのかを考え自分にできることをやろうというクリフの教えに感化されてノルンは努力を積み重ねてきたようで強い人だなあとしみじみ思う。
そして父の死を時間をかけて受け止めて父の剣を部屋に飾り、剣術を学びたいといったノルンの真意が気になるところ。守られる対象としての自分がいやか、大好きな父の背中を追うのか、父の助けにいけなかった当時の自分が悔しくて力を手に入れたいと希ったか。ノルンが凛々しく映った。練磨を重ねた剣術がどう生きてくるのか気になる。

味わい深い作品を求める人に知ってほしい作品

硬派戦記「烙印の紋章」「レオ・アッティール伝」を手掛けてきたの著者の新シリーズ。

タイトルで想起される軽やかな筆致の物語ではない。
じんわり温まる小説や心揺さぶられる小説、熱い小説に読んでいれば幾度出会うことはあれど、はじめから最後まで味読ができた上で上記のどれかの小説たり得るものは、電撃文庫でデビューして20年活躍している杉原智則先生の小説が筆頭に挙げられる。面白いシーンで楽しませることも大事だけど小説の本質は、読ませる文章で深い没入感があり、味わい深く読める小説であると思う。物語を形作るのは文章だから。面白い上に味読ができれば、最高な小説に化ける。というのは杉原先生の本を手に取ってパラパラめくれば直感で全体的に文章がぎっしり詰まっていると分かる。とにかく読ませる文章と()のキャラの心の声によるテンポが堪らない。笑みをこぼしたり、ぐんぐんのめり込んだり、ドン!と考えさせられる心境に陥ったりと地の文の多さが魅力にしか映らない小説。会話の勢いでごまかさず、紛れもなく地の文で形作る物語で勝負している小説。
物語は、英雄の1人が災厄を阻止した平定後、敗戦国に立って目のあたりにした事実から自身の正義に問いかけ、悩み、虚飾に満ちた真実にメスを入れる物語。現地に立ってみて体感することは、真実は事実を曇らせるということ。読者の現代に通底するテーマがあり、現実に影響を及ぼす力があるライトノベル。
イラストレーターをかえた2年ぶりの続刊に、作品を追っていた多くの読者が歓声を上げた。

少しでも気になったら、1巻の熱いAmazonレビューの数々をご一読ください!
3巻は2年ぶりの続刊であるにもかかわらず1巻よりも星の数が多いのでファンの方々がどれだけ切望されていたか伝わってくるかのようです。著者はブログやTwitterをやっておらず宣伝は発売時の公式アナウンスだけなので多くの口コミが集まるのはうれしい限り。

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