
理不尽な孫の手(著/文)シロタカ(イラスト)
〇あらすじ〇
長い間残されていた、サラとの遺恨を解決したルーデウス。
そんなルーデウスたちは、甲龍王ペルギウスが住む天空城塞を訪れることになる。城内で新しい知識を習得したり、珍しい経験をしたり、貴重な時間を過ごす日々。
一方で、風邪かと思われていたナナホシの体調が急転する!
「俺を魔大陸に送ってもらう事は、可能ですか?」
ナナホシの治療法を探すため、行動を始めるルーデウスたち。
しかし転移した先は、デッドエンド時代の苦い思い出が残る、あの場所で……!
応用すれば戦い向きの魔術、研究を重ねることで可能性が広がる魔術、認識を覆す魔術、話の後編で分かる魔術の凄さなど魔力が引き起こす事象の話が広がっていくのが興味深かった。
描かれた魔大陸の様子に懐かしさを覚えた。剣術の可能性も面白い。剣と魔術が併存する世界の魅力がある。
後はネタバレを含む感想~
病に罹ったナナホシの慟哭
魔力をもたない者は外的に触れる魔力によって徐々に体が蝕まれていくのか。魔力をもつ者は上手く体内の魔力で中和させていくらしい。
シルフィの解毒魔術で症状を和らげようと思ったら悪手だったらしくナナホシは血反吐を吐いてしまった。そこでルーデウスはシルフィは悪くない悪くないと宥めるんだけど、それ、いくら愛する妻だからって血を吐いて意識を失っているナナホシを放っておいておこなうものなんだろうかと疑問を覚えてしまった。
意識を取り戻したナナホシは、現状治療法がなく余命幾許もないことを知る。
そこでこぼすナナホシの慟哭は凄絶だった。ルーデウスは耳を傾け続けるしかない。
周りからの言葉なんて上っ面にしか聞こえない・・・
そこでルーデウスは立ち上がる。そこからの行動力はかっこいい。決めたらもう迷いはない。
大帝キシリカ、不死魔王アトーフェラトーフェ
魔界大帝キシリカなら何か治療法を知っているのかもしれないと期待して転移魔法陣で魔大陸へワープ。
空中城塞から各大陸の各スポットにワープできるとは末恐ろしい。ペルギウスの御威光か。
飢えた物乞いに食べ物を差し出すクリフはミリス教の体現者だった。
物乞いは突如
「ファーハハハハハ!」
と高らかに笑い、ボロ布を取り去って魔界大帝キシリカ・キシリスが姿を現す。清々しいほどのキリシカの登場シーンは毎回好きだ。ルーデウスの時もロキシーの時も同じだった。
俺がガネーシャだ!!っていう者と同じオーラを感じさせる。
キリシカの助言通り、キシリカ城で手に入れたソーカス草を茶にして飲むことで体内にたまった悪性の魔力を取り除くことができ、ナナホシは研究を続けられることになった。返しきれない恩に気にしなくていいというルーデウス。そうだよな。仲間を助けるのに理由なんていい。助けたくて助けた。
不死魔王アトーフェラトーフェ。強きものを配下に取り込む魔王。
ルーデウス一行は魔王を倒さないと空中城塞に戻ることはできず戦闘することになるんだけど、
出だしがコミカルで途中から互いに接戦していて切羽詰まった状況がひしひしと伝わってくる描写は面白かった。
ロキシーから教わった水王級魔術を応用した電撃の有用性を証明した戦いだった。人神の助言よればオルステッドにも有効らしいし。
ルーデウスおじいちゃんにひと目見てもらいたかった
2年ぶりの人神。人神の助言通りに手紙を無視して魔法大陸に残っていればパウロは死ぬことはなかったという。ルーデウスが助けたロキシーは別の冒険者と協力してパウロ達が助け出す運命にあったという。
その場合ロキシーと結婚することはなかった世界線。やりきれなさが残った。
今回の人神は助言ではなく、頼み事だった。地下室に何か起きてないか確認してくれという。
そこで登場 50年後のルーデウス。人神の助言通りにすると凄惨な未来を迎えること、周りにはだれもいなくなる内容だった。思ったのは50年後もルーデウスは生き続けているということ。選択の結果が悲劇になろうとも生き続けていることが大事だと思う。力は手に入れたのに守るべき大切な者はいないと語ったルーデウスおじいちゃんの悲壮な語りは物悲しい。
・ナナホシに相談
・エリスに手紙を送る
・人神を疑い、敵対しない
ルーデウスおじいちゃんが現れる前に作った日記帳を彼は取りだしてルーデウスに渡す。
ここからルーデウスの未来を変える戦いが始まる! のか。
過去転移に成功しても体全部をもってくることはできず、ルーデウスおじいちゃんはすぐ亡くなってしまう。
最後の方に口にした
「…お前に…後悔を…ヒトガミの、思い通りに…なんでこんなところで…言うべきことは…過去に来たんだから、せめて、ひと目…」
はシルフィやロキシーのことを指していると思うと悲しい。ひと目みせてあげたかったよなぁ。
ルーデウスおじいちゃんの覚悟に短いシーンでありながら心打たれるものがあった。
剣の修行を終えて
そしてエリス!剣神はもう教えることはないと言い、エリスに剣王の称号を授ける。
エリスは家族のところに帰るという。エリスの家族はルーデウスただ1人だったと思う。
6巻の時点でエリスは1人になり、ルーデウスと家族になろうとしたから。
剣の修行を終えてとうとう再会に向けて動き出すんだな。つり合いがとれない理由から力を求めて、力を手に入れた彼女の活躍に期待しかない。