
理不尽な孫の手(著/文)シロタカ(イラスト)
〇あらすじ〇
神オルステッドの配下となり、エリスを妻として迎えることになったルーデウス。家を守ってくれる守護魔獣を召喚したりして、ひとまず平穏な日々を取り戻していた。
そんなある日、彼にオルステッドから“アスラ王国第二王女であるアリエルを王にする”という初任務が下される。
「危険は無いと聞いていますが、仮にも迷宮と呼ばれる場所です。注意していきましょう」
甲龍王ペルギウスの後ろ盾を手に入れるためのヒントを探しに、図書迷宮に行くルーデウスたち。
そうして初代国王の資料を探している中、ある日記を見つけることになる! その日記の著者、内容とは……!?
社員のよさをひきのばす社長の手腕から、社長の年の功がうかがえる。駒として使うのではなく、今後に期待して必要以上に情報を開示しない社長と、気前がよいルーデウス。ただ二人の社内会議だけで面白い。
2人の間に漂う空気感の変化にギャップを感じずにはいられずツボだったりする。
図書迷宮は知の源泉だった。描写を想像するだけで感服する。
後はネタバレを含む感想~
答えを探しに図書迷宮
オルステッドコーポレーションに入社したルーデウスの最初の業務は、アリエル王女殿下をアスラの王にすること。
人神に対抗するため、直近の歴史をかえることから始まる。あのアリエルですらペルギウスから与えられた試練に窮することになり、オルステッドのヒントで図書迷宮に潜るんだけど表紙にもある通り迷宮なのに壁一面が魔物たちが作った本棚とはなんて面白そうなんだろう。魔物だからって全てが敵というわけではなく害のないものだっている。反射的に手をかけるものではないね。
迷宮に憧れを抱くエリスはかわりなく先行しようとしてルーデウスに引っ張られるのは既視感があり、ルイジェルド、エリス、ルーデウスで旅した3年間を想起させる。
王として重要な要素
かつてアリエルの騎士で、アリエルをかばって亡くなった人物が王として重要な要素のヒントを彼女に与えることになる。確か3~4巻あたりで登場した人物だった。アスラ貴族の歪んだ性癖をもっていたアリエルとルークの目を覚まさせた人物としてのイメージが強い。アリエルの場合は今でもときおり根が変態なのか勘違いしそううな描写が小出しで出てきて中々軽妙。
王としての重要な要素についてアリエルの中で答えが定まり、期待する答えではなくてもペルギウスに認められたアリエルの言動はかつてのペルギウスの盟友と重なるものがあった。
掲げる理想を共有し、意志を託すのにふさわしい人物。采配や人徳など求められる資質は多いんだろうけど、命をかけるにふさわしい人物かどうかってのは君主体制では根底に必須か。
ルーデウスが入社した福利厚生が抜群にいいオルステッドコーポレーションの企業理念は何なんだろう。
ルーデウスはエリスと模擬線
ルーデウスとエリスの模擬線ではルーデウスが瞬殺で負けた。木刀手にしたエリスの光の太刀で一瞬だった。
ルーデウスの凄いな、まったく見えなかったの一言に喜ぶエリスが印象的で、オルステッドを倒すため、大切な人に追いつき守るために修行してきたエリスの努力が実った一面であり微笑ましいシーンだった。
剣の間合いに入ったら剣術がほぼ強い。一瞬で切られてしまうので魔術師は剣士の間合いに入らないよう距離を置いて戦うの基本であることを分からせる模擬線だった。無詠唱でも剣術の瞬撃にはおくれる。
後衛のルーデウスに前衛のエリス。せめぎあう関係ではなく、背中を預けて共に戦う長年の理想が具現化したようなタッグに思える。ルーデウスとエリスだもの。