無職転生 異世界行ったら本気だす 18<br><br>アイシャはもう一度託される
無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ 18 (MFブックス)Amazon

理不尽な孫の手(著/文)シロタカ(イラスト)
〇あらすじ〇
強敵を退けて、アリエルを次期アスラ王にするという指令を完遂したルーデウス。
その後も数々の指令をこなしたり、奴隷商人からリニアを助けたりしながら、一年半が経とうとしていた。
そんなある日、リニアのもとにドルディア族の村から手紙が届く。
『大変だ、聖獣様が行方不明になった! 至急捜索を!』
大森林へ事情を話しに行くことを決めるルーデウス。そして再び訪れることになる思い出の部屋(牢屋!?)。
なんとそこに閉じ込められていたのは……!?

卒業したリニアとプルセナはいつも通りの2人で、2人が関わると悲しいことも笑いにかえるようなコメディな話になると思う。それはそれで2人の人柄のよさがなせるものだと数巻に及ぶ物語から実感する。
アリエル王女による王国の動乱から1年と半年が経ってルーデウスは20歳になったんだな。

はネタバレを含む感想

アイシャはもう一度託される

魔法大学を卒業してプルセナとリニアが最後に族長の後継ぎをかけて決闘したのが13巻だったのが懐かしい。ルーデウスの友人である2人の登場にきっと何か問題を持ち込んでくるんだろうと思ったらその通りで・・・
ルーデウスがいたから笑い話に治まったようなもんかね。商業に失敗して大量の負債を抱えて奴隷になってしまったリニアを見捨てず、日本円で多額の金を払ってリニアを買ったルーデウスは優男というか友人を見捨てると後味が悪いから手中に収めた。オルステッドコーポレーションに入社して破格の給料もらってなかったらどんな選択をしたのか別ルートの話があったら気になるもんだけど。
ルーデウスの邸のメイドとなったリニアはポンコツらしく指南役のアイシャの手に余るものだった。
鬱憤がたまっていきとうとうアイシャはあの猫(リニア)を捨てよ とか言いだす。
リニアの能力を引き上げることができなかったアイシャの失敗であるとルーデウスから気づかされ、人を簡単に見捨てちゃいけないものだと教えられたアイシャは、ルーデウスからお金を受け取りリニアと事業を起こしてもう一度ゼロから2人でやってみてくれないかと頼まれて承諾する。アイシャに気づかせて生かすも殺すも自分次第のビッグチャンスを与えるルーデウスさん考え抜いてますなあ。
天才肌アイシャが器用に物事をこなせない者の気持ちに気づきにくいのは、ルーデウス邸のメイドで働く閉鎖的な環境にいるのが一因だと思う。今回の事業をきっかけに家族以外の多くの人と関わって、根は努力家の一面を生かしてどんな活躍をしてくれるのか読み進めていったらサングラスをかけて黒ずくめの組織の顧問役になってて笑った。

語られるジュリエットの半生

生い立ちから現在までのジュリの内面の変化が初の彼女の視点から語られていた。
家族全員が奴隷として売られ、奴隷としての価値が低いジュリは生気を失って虚ろな目で生きる希望がない日々をすごしていたある日、ルーデウスにもう死にたいか?なんだったら終わらせてやろうか?と問われ、ジュリの本心を引き出したいルーデウスにじっと見続けられ、死にたくないと言った。ここはジュリと出会った巻でひきこもりの経験が長いルーデウスの中の人だからこその的確な問いであったとその巻の感想記事で書いたと思う。
今回はジュリ視点で語られることで双方の気持ちが分かり話に深みが出た印象的なシーンだった。
ジュリが作り出した傑作の土人形に素晴らしいと言ったザノバは、土人形の出来を褒めるだけでなく、研鑽を積んできたジュリ自身の力が生み出したものだと褒めたたえていて温かなシーンだった。ジュリをきっかけにザノバ自身の変化がうかがえた。

味わい深い作品を求める人に

硬派戦記「烙印の紋章」「レオ・アッティール伝」を手掛けてきたの著者の新シリーズ。

タイトルで想起される軽やかな筆致の物語ではない。
じんわり温まる小説や心揺さぶられる小説、熱い小説に読んでいれば幾度出会うことはあれど、はじめから最後まで味読ができた上で上記のどれかの小説たり得るものは、電撃文庫でデビューして20年活躍している杉原智則先生の小説が筆頭に挙げられる。面白いシーンで楽しませることも大事だけど小説の本質は、読ませる文章で深い没入感があり、味わい深く読める小説であると思う。物語を形作るのは文章だから。面白い上に味読ができれば、最高な小説に化ける。というのは杉原先生の本を手に取ってパラパラめくれば直感で全体的に文章がぎっしり詰まっていると分かる。とにかく読ませる文章と()のキャラの心の声によるテンポが堪らない。笑みをこぼしたり、ぐんぐんのめり込んだり、ドン!と考えさせられる心境に陥ったりと地の文の多さが魅力にしか映らない小説。会話の勢いでごまかさず、紛れもなく地の文で形作る物語で勝負している小説。
物語は、英雄の1人が災厄を阻止した平定後、敗戦国に立って目のあたりにした事実から自身の正義に問いかけ、悩み、虚飾に満ちた真実にメスを入れる物語。現地に立ってみて体感することは、真実は事実を曇らせるということ。読者の現代に通底するテーマがあり、現実に影響を及ぼす力があるライトノベル。
イラストレーターをかえた2年ぶりの続刊に、作品を追っていた多くの読者が歓声を上げた。

少しでも気になったら、1巻の熱いAmazonレビューの数々をご一読ください!
3巻は2年ぶりの続刊であるにもかかわらず1巻よりも星の数が多いのでファンの方々がどれだけ切望されていたか伝わってくるかのようです。著者はブログやTwitterをやっておらず宣伝は発売時の公式アナウンスだけなので多くの口コミが集まるのはうれしい限り。

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