無職転生 異世界行ったら本気だす 21<br><br>エリスに届いた言葉はゼニスの真意
無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ 21 (MFブックス)Amazon

理不尽な孫の手(著/文)シロタカ(イラスト)
〇あらすじ〇
何者かにゼニスが拉致され、行方不明になった。
彼女を捜し出すためルーデウスは、ミリシオンを奔走する。
「俺だって、ゼニスの息子です。父さんに『死んでも母さんを守れ』って言われたんです。
義務があるんです。責任を持って死ぬまで面倒をみます。だから母さんを返してください……」
これまで事あるごとに後手後手になってきたルーデウス。
果たして無事にゼニスを取り戻すことはできるのか……!?

対話を重ねて相手が抱える背景を引き出すことができず、辛抱強く接しても真意を汲み取ることも難しい。
そこで一呼吸おいて、相手が抱える問題は1人が背負っているのではなく大なり小なり周りの人も負っていることに目を向けて紐解いていくのは根回しではなくて図々しくもなく、誰もが望まぬ結果を避けるために推し量る上で大切な心掛けであると言われている気がした。

はネタバレを含む感想

母のため、娘のため譲歩なき互いの言い分

ルーデウスの母であり、クレアの娘であるゼニスをめぐって衝突する二人の人物。裏で使役している黒幕がいるけど見せ場はルーデウスとクレアの譲らんとする主張の応酬だと思う。クレアがもう少し理由の一端を明かせば誘拐事件とか戦闘とか多くのミリス教団の重役を巻き込んだ大事にならなかったんだろうけどクレア側が言うのが憚られるのは彼女の頑固な人柄と秘匿にしておきたい内容から同情の余地があり、ルーデウス側も母ゼニスを守りたい一心で感情的になって少々理性に欠ける言動をとるのも同情するのでままならなかった。
全てはお見通しという神子の鶴の一声があってもクレアの突き放す物言いに和解の道は程遠い。
言葉を発しない廃人になっているゼニスのここぞとばかりのアクションに場の人が、読んでる自分も目を。今までと今回で重大な場面で一押し足りないとき、袂分かつような場面で合いの手を入れるゼニスは廃人なんかじゃなくて心をもち突き動かす情動をもっているんだと思わせてくれた。

神子は母ゼニスの記憶を言葉にする~エリスには届いていた

神子の人の記憶を見る能力でゼニスの記憶が赤裸々に明かされる。パウロの死を知っていて、ルーデウスの家族のことを思っていて、信頼して、心配して、ゼニスのここ一番の行動には取り持ってあげなきゃいけない気持ちが内包されていたことが明らかになって目頭が熱くったルーデウスに共感した。印象的だったのが、
ルーデウス邸にきたエリスがゼニスに伝えたあいさつが届いていて、ゼニスの心の声をエリスに発していたことが定かだったこと。これは15巻の最後の方のシーンだった。

ゼニスは何も言わなかった。
だが、エリスには確かに聞こえた。ゼニスの声が。
『それはルディの前で言わなきゃだめよ。私の前でそんなに畏まらなくても、いいのよ』
そんな言葉が。

無職転生 異世界行ったら本気出す 15巻 P314

エリスが気を感じたんじゃない、ゼニスの言葉がエリスに届いていたことが分かってよかった。

ついに明らかになる人神の使徒

ルーデウスが薄々疑問に感じていたものがとうとう使徒本人の置き手紙から明らかに。
使徒はパウロとルーデウスが再会した時の諍いをとりもってくれたり、戦闘以外で大いに貢献したりゼニスの居場所を明らかにしたりと、飄々としていて含みのある言動だけど信頼に足る人物として協力的だったのに手のひらを返されてしまった。
ルーデウスは人神に多大な恩を感じていたが、人神が自分の家族を殺める運命にあることから牙をむき敵対関係になった。使徒本人は時に人神の手によって裏切られ、大切な者を失っても今まで受けた多大な恩により人神の使徒であろうとする。使徒本人が言う、受けた痛みは多大な恩に比べれば水に流せるというような表現は腑に落ちる感覚だった。そう思わせるのも人神の思惑かもしれないが。


味わい深い作品を求める人に知ってほしい作品

硬派戦記「烙印の紋章」「レオ・アッティール伝」を手掛けてきたの著者の新シリーズ。

タイトルで想起される軽やかな筆致の物語ではない。
じんわり温まる小説や心揺さぶられる小説、熱い小説に読んでいれば幾度出会うことはあれど、はじめから最後まで味読ができた上で上記のどれかの小説たり得るものは、電撃文庫でデビューして20年活躍している杉原智則先生の小説が筆頭に挙げられる。面白いシーンで楽しませることも大事だけど小説の本質は、読ませる文章で深い没入感があり、味わい深く読める小説であると思う。物語を形作るのは文章だから。面白い上に味読ができれば、最高な小説に化ける。というのは杉原先生の本を手に取ってパラパラめくれば直感で全体的に文章がぎっしり詰まっていると分かる。とにかく読ませる文章と()のキャラの心の声によるテンポが堪らない。笑みをこぼしたり、ぐんぐんのめり込んだり、ドン!と考えさせられる心境に陥ったりと地の文の多さが魅力にしか映らない小説。会話の勢いでごまかさず、紛れもなく地の文で形作る物語で勝負している小説。
物語は、英雄の1人が災厄を阻止した平定後、敗戦国に立って目のあたりにした事実から自身の正義に問いかけ、悩み、虚飾に満ちた真実にメスを入れる物語。現地に立ってみて体感することは、真実は事実を曇らせるということ。読者の現代に通底するテーマがあり、現実に影響を及ぼす力があるライトノベル。
イラストレーターをかえた2年ぶりの続刊に、作品を追っていた多くの読者が歓声を上げた。

少しでも気になったら、1巻の熱いAmazonレビューの数々をご一読ください!
3巻は2年ぶりの続刊であるにもかかわらず1巻よりも星の数が多いのでファンの方々がどれだけ切望されていたか伝わってくるかのようです。著者はブログやTwitterをやっておらず宣伝は発売時の公式アナウンスだけなので多くの口コミが集まるのはうれしい限り。

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