無職転生 異世界行ったら本気だす 22<br><br>攫われるルーデウス姫
無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ 22 (MFブックス)Amazon

理不尽な孫の手(著/文)シロタカ(イラスト)
〇あらすじ〇
これまで身を隠し続けていたヒトガミの使徒がついに発覚した!!
対抗するために戦力を集めることになったルーデウスは、魔大陸に君臨する不死魔王アトーフェを説得することに。
強力な味方を引き連れ、魔大陸を訪れるルーデウス。
だが、一癖も二癖もある相手に交渉は難航し!?
「アトーフェ様。戦う前に、一つ、私の話を聞いてはいただけないでしょうか」
立ちはだかる話の通じない魔王。傍若無人な彼女に対してルーデウス一行は……。

嵐の前の喜劇が微笑ましく映る巻だった。人神陣営との戦いに備えて仲間を増やしていくルーデウス達。
ルーデウスに力を貸してくれる仲間が多く、ドタバタしながらも着実に仲間を増やしていくのはルーデウスの"力"なのだとクリフの言葉を思い出して得心がいくところ。

はネタバレを含む感想

攫われるルーデウス姫

アトーフェを仲間にするために、極上の贈呈品をもって魔大陸に赴くルーデウス達。
アトーフェに挑む前のエリスとロキシーでタッグを組んで戦闘するシーンでは、エリスの中でロキシー=ルーデウスの家族を守らなければいけない存在から背中を任せられる存在となっていく様子はよかった。ルーデウスに師と崇められるロキシーだが、自分自身の強さを自覚していてエリスの足手まといになるかしれないけど先んじてエリスから守られる存在としておかれたことに歯がゆい気持ちを抱くのは共感してしまう。守られる歯がゆさ、強さが足りない悔しさ。ここ口絵にもなっていて印象的。
エリスは魔王に問われ、勇者よ!と言いルーデウスはノリで姫と言ってしまったばかりにアトーフェ武勇伝の再現によって攫われてしまう! 表紙から決死の戦闘を連想していたけど魔大陸での話はコメディよりでそれはそれで面白かった。人神陣営との大決戦の前の喜劇という位置づけで自然と腑に落ちていた。
魔王アトーフェは変わらず話が通じなくて、話し合いはいつみても魅力的。

ロキシーの故郷で再会

ルーデウスがロキシーの故郷を訪れるのは、3巻の魔大陸に転移した時以来。ミグルド族は長寿で中学生の容姿をしていて、見た目中学生の門番にロキシーは俺の娘なんだよ!と言われた時のルーデウスの心の声が面白かったのを思い出すw  
ミグルド族特有の念話で会話する術をロキシーはもっておらず、ララはもっていた。
ロキシーは自分の生い立ちを振り返ってララが成長するまでミグルド族の村で暮らしたほうがいいのではないかと提案する。自分と同じ辛い思いをしてほしくない母の我が子を慮っての提案だったんだろう。
そこをルーデウスは否定する。ルーデウスは父親だったのだ・・・。
そこで、ララが初めて言葉を発したシーンには挿絵があってよかった。

味わい深い作品を求める人に知ってほしい作品

硬派戦記「烙印の紋章」「レオ・アッティール伝」を手掛けてきたの著者の新シリーズ。

タイトルで想起される軽やかな筆致の物語ではない。
じんわり温まる小説や心揺さぶられる小説、熱い小説に読んでいれば幾度出会うことはあれど、はじめから最後まで味読ができた上で上記のどれかの小説たり得るものは、電撃文庫でデビューして20年活躍している杉原智則先生の小説が筆頭に挙げられる。面白いシーンで楽しませることも大事だけど小説の本質は、読ませる文章で深い没入感があり、味わい深く読める小説であると思う。物語を形作るのは文章だから。面白い上に味読ができれば、最高な小説に化ける。というのは杉原先生の本を手に取ってパラパラめくれば直感で全体的に文章がぎっしり詰まっていると分かる。とにかく読ませる文章と()のキャラの心の声によるテンポが堪らない。笑みをこぼしたり、ぐんぐんのめり込んだり、ドン!と考えさせられる心境に陥ったりと地の文の多さが魅力にしか映らない小説。会話の勢いでごまかさず、紛れもなく地の文で形作る物語で勝負している小説。
物語は、英雄の1人が災厄を阻止した平定後、敗戦国に立って目のあたりにした事実から自身の正義に問いかけ、悩み、虚飾に満ちた真実にメスを入れる物語。現地に立ってみて体感することは、真実は事実を曇らせるということ。読者の現代に通底するテーマがあり、現実に影響を及ぼす力があるライトノベル。
イラストレーターをかえた2年ぶりの続刊に、作品を追っていた多くの読者が歓声を上げた。

少しでも気になったら、1巻の熱いAmazonレビューの数々をご一読ください!
3巻は2年ぶりの続刊であるにもかかわらず1巻よりも星の数が多いのでファンの方々がどれだけ切望されていたか伝わってくるかのようです。著者はブログやTwitterをやっておらず宣伝は発売時の公式アナウンスだけなので多くの口コミが集まるのはうれしい限り。

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