
木緒 なち(著/文)えれっと(イラスト)
〇あらすじ〇
偶然出会った河瀬川に誘われ、サクシードソフトで働くことになった僕、橋場恭也。進めていた企画が発端となって常務と対立し、栄転とは名ばかりの異動で第2開発部、副部長に就くことに。分断されたものの、その後も13部のメンバーと共に空き時間を利用してどうにか企画を成立させる方法を画策するもさほどうまくいかず……。異動先での仕事も慣れ始めた頃、僕は河瀬川に呼び出される。「わたしたちの企画に力を貸して。もう一度、みんなと活気のある現場を作って、作品を作る手伝いをして欲しい」その企画はあの“プラチナ世代”との超大型企画だった――。いま、ここからもう一度始める青春やり直しストーリー、第2弾!
最後には勝利するのか、再びの敗北を喫するのか、どちらの結末を迎えるのかが見どころであるけど自分は結果までの過程で描かれる社会人たちの葛藤や情熱、ふとこぼしてしまう言葉の数々からうかがえる諦念等が濃くて一人一人異なる背景から滲み出る情動の数々が交錯して終着点へと至る熱い物語だった。
粉々に砕け散った心のピースを優しく拾い上げて再び奮い立たせたくれるやつがいる。感化されて気づきを与えられてかつて自分が抱いた初心を思い出させてくれる。自分が大切にしている初心を胸にひめてれば自然と力がこみあがってくるんだと思った。常々原動力であると思うのだった。
会社外の人との話も1つの答えをくれる印象的な話だったのでとてもバランスがいい1冊だと思った。
どっかでいってたリゼロの言葉を思い出した。
後はネタバレを含む感想~
運命について、ぼくリメβとリゼロの言葉から思うこと
アパートの管理人の伊知川のエノキとシメジの話からの運命についての言及は印象的。
とある日、ホイル焼きを食べたいから会社帰りにエノキを買いにスーパーによる。
売り場でシメジが安くておいしそうだったのでシメジを買って家に帰った後エノキを買っていないと思い出す。
→エノキのことを意識していたのにシメジを買ってしまったのは、エノキとは会う運命になかったのかと橋場に問うところ!
橋場と河瀬側の出会いのところにあてはめると、エンタメ業界の中途採用に応募して撃沈している日々を送っていたある日の夜、節約のために新宿駅まで歩くことを選んだおかげで投身自殺するように見えた河瀬河に出会い紆余曲折を経ていまの橋場があるということ。運命の導きであると伊知川さんの問いに納得しつつある橋場だけど伊知川は運命というのを信じないと次のように言う。
「だって、つまらないじゃないですか。良いことも悪いことも、ぜんぶ最初から決められてるとか、そんなの生きてる価値ないし。自分の意思でどんな風にでも変えられるから、人生っておもしろいんだもの」
p140
印象的な一言だった。良いことも悪いことも運命ってという一言で片づけてはいけない、どんな意志で選択して、結果に対して自分がどう思ったのか振り返る大切さを悟られたような気がする。シメジを買ったのも、そう買うことを選択してた伊知川さんがいるわけだよ! 運命っていう言葉を言うのは一種の思考放棄であると思うんだが過言ではないと思う。人生っていうのは自分の意志で選択したものの連続で成り立っている。って感じ
外的要因によって起こる嫌な事に、運ねぇな・・・ってぼやいてしまうのは否定できないけどw
この本に書かれている運命のくだりでふと思い出した言葉があって、リゼロのどっかの巻で誰が言ったのか、地の文だったのかさえ忘れてしまったけど言葉だけはずっと残っている。
運命は波打つ自らの上で抗うものこそを愛し、その結果に対して希望を抱かせるもの
Re:ゼロから始める異世界生活 ?巻?p
抗った上でみた景色から新たな可能性や希望を抱くことができる、そして意志で選択して現実にする。
そんな人生の教訓のようなものがボクリメとリゼロがからまって思い浮かんだのであった。
はじめのほうで書いてあった、ぼくは現実を作っているっていうのが腑に落ちた。作るには目に見えない材料が必要な時もある。
ここで伊知川さんがまた別のシーンでいい事言っているのを思い出した↓
「はい。どういうことにしろ、ちょっとずつでも前に進んでいる人が強いんです」
p75
迷ってる暇があったら~とか最初に手を付けるのは迷いが~という橋場の地の文は共感しかなくてちょっとずつでも進んでいる人は強い。意志を抱いて終わり、目標を掲げて終わり。意志から行動まで起こすのってエネルギーがいるよね。本を手に取って開くまでもそう(は?)
でもほら・・・開いてからどんどん読み進めるじゃないですか。
停止している車を発進させるのに一時燃料を多く使って、加速はそんなに燃料を一時でみれば消費しないのと同じように。
1から2にするよりも、0から1にするほうが難しい。(行動でカウントされるのであれば)
本巻は、意志と運命について考えるきっかけを与えてくれた1冊だった。