
御子柴 奈々(著/文)梱枝 りこ(イラスト)
〇あらすじ〇
数多くの偉大な魔術師を輩出してきた名門、アーノルド魔術学院。
少年レイ=ホワイトは、学院が始まって以来で唯一の一般家庭出身の魔術師として、そこに通うことになった。
周囲は貴族や魔術師の家系出身の生徒たちばかりの中、彼に注がれる視線は厳しい。
しかし人々は知らない。
彼が、かつての極東戦役でも数々の成果をあげた存在であり、そして現在は、世界七大魔術師の中でも最強と謳われている【冰剣の魔術師】であることを――。
枯れた魔術師と軽んじられながらも、やがて彼はその力を周囲に示していき……!?
これは、凍てついた規格外の天才がその冰を溶かしていく物語――。
冰の魔術、自分の正体を隠している、王道学園ファンタジーっということで興味がそそられたので買ってみた。2巻出たらたぶん買うと思う。
どこか主人公の達観している、物事の程度を見抜いている口調から語られる会話と地の文だけで十分面白いと思う。学友と口にせずとも通じ合うノリのよさだったり、相手の繊細なところに言及するまでに通るべき過程をスキップして相手を意識させてしまう言葉のかけあいだったり主人公視点だけでもすらすら読めて物語が進んで面白い上に他の視点も交じっていて今後さらに深みが出てきそう。
仲間と励ましあって高めあう成長譚でもあり、過去の血塗られた戦場で多くを失いすり減って凍結してしまった心をかけがえのない学友との生活で氷解させていく温かな物語でもある、脅かす不穏な存在もあってどうなるのか期待感も高まる、はい、2巻出たら買います。
違和感は主人公とアメリアが高身長であると書いてあるがどうも想像しにくかった。この世界の長さの基準が独自のものであるということにしておこう。
後はネタバレを含む感想~
普段と変わりなく接してくれる学友
数々の蔑視を見方をかえて楽観的に構える主人公の切り替えのよさに目を見張ってしまった。
抱え込んで蓄積して大変なことになってしまう以前に気にすることがない。惨状は過去に存分に経験済みだから程度がしれているかのようで・・・ここで侮蔑の視線が注がれているレイに、普段と変わりなく接してくれる学友の存在がなんてありがたいことか。学友はレイと関わって一緒にいると楽しいとか、自然と意識させられたりとか、励まされて自信つけられたとか各々思うところがあると思う。
そしてレイの正体や辿ってきた過去をしってもなお、学友たちの今のレイを見て今後も一緒にいたいと思えた展開は挿絵と相まって印象的だった。師匠の言っていた言葉の意味が、温かななものとなってレイ自身に浸透していくような。凍結した心に響くような。
環境調査部と園芸部に入り、恋愛小説を耽読している今のレイの学校生活は楽しそうだなぁ。
冰剣は強くて優しい
レイがリリースした時、場を凍てつかせ、青白い粒子を煌かせながらきっと冷めた表情で自身の髪を純白に変える様相はやっぱりかっこよくそそるものがある! あぁ・・・この久しい感覚とか思いながら。
冰剣の本質が開示されて戦況を振り返ると、冰剣の本質には優しさが芯に通っていると想像してしまうんだよね。灼熱の炎は消し炭にしてしまうけど、冰は凍結して相手を封じ込めることができる。冰は煌びやかで美しく、相手を傷つけず封じ込められるのはなんて優しくて強い属性なんだと思う。食用だったら鮮度を保てるし。
なぜ少年は冰剣の魔術師になれたのか、彼の学園生活を振り返ると出会った相手に更生や再起を見込んだ慈しみが確かにあったと思うので、冰剣の魔術師は真に心根が優しい者でなければなれなかったりして。
師匠の生き様を見ているとね。
あとがきを読みました。
自分も中学生の時にライトノベルに出会いました。原点は涼宮ハルヒの憂鬱です。
読まない時期がありましたが現在こうして手に取って読み続けている自分がいます。
先生が出会った最初のライトノベルが気になったのが読後すぐの感想だったりします。