叛逆せよ! 英雄、転じて邪神騎士2<br><br>感極まるシーンに重ねる魅力
叛逆せよ! 英雄、転じて邪神騎士2 (電撃文庫)Amazon

杉原 智則(著/文)魔太郎(イラスト)
〇あらすじ〇
かつて邪神を討ち倒した英雄、ギュネイは、敗戦国となった邪神王国・ランドールの荒廃ぶりを見かねてつい手助けをし、ついには城一つを奪還してしまった。
 そんな中、邪神降臨を目論んだ大司教の娘、ロゥラを旗頭とする一団が決起。かつてギュネイも刃を交えた邪神王国四天王の生き残りを中心に、再び邪神を降臨せんとしているという。
 他方、ランドール再興の兆しを感じた周辺国からも大部隊が進軍してくる。
 邪神王国に迫るさらなる危難を前に、ギュネイの取る一手とは? というか、そもそも助太刀してていーのか!?

見事すぎる・・・度肝抜かれました。感極まるところのシーンと1巻からちらちらほのめかしていた気になる箇所を最後の方で大いに伏線回収していくところが相まって感動感激だった。確かに後々振り返ってみると、
ここのところから~ あーここもだ!ときれいにピースがはまっていく読後感がいいし、なんとも清々しいほどに気持ちよくしてやられたという余韻がいい。物語が没入できるほど返ってくる反動が多いと思うので
杉原先生の筆致には脱帽。とても丁寧な地の文で情報量が多いので魅力はもちろんのこと様々な表情している時の内面や場の空気感、深度が高い物語の設定と、回顧するシーンを入れることで今の物語に深みをもたらしてくれるところなどに魅せられる。とても素敵な作品に出会えました。
2年の間があいて続刊の3巻が出るということでうれしい限り。

はネタバレを含む感想

どうしても武力がいる

魔術の力を手に入れてから復讐に身をまかせてきたジルの省みは、彼から語られる独白と地の文からその者の人生の苦難を感じさせる熱量をもったものだった。1巻で登場して2巻で改心するまでにジルを中心に描かれたのは本編でいうと少しかもしれないけど深く感情移入できる面白さは先生の筆力によるものだと思うの感心するばかり。
弱っている時、神にすがりついたり、自身の都合の解釈で信仰する神を捻じ曲げてしまったりすることを無意識のうちにやってしまったことを気づかせる存在の有無が人生の分岐点といえるほどの重みがあるように思えた。
言葉でどれだけ真摯に伝えても相手には響かない。頬をひっぱたいて気づかせるには相手を負かすほどの力がいるということをリアリティに伝えてくれる。
ブルートがおままごとと蔑称した三者会談では、邪神降臨を目論んでいるロゥラ陣営の圧倒的な力の前に話し合いにはならず相手の要求をのまざるを得ない状況だった。そこで颯爽と現れたギュネイはとてもかっこいい。
自分にはランドールの姫君というお飾りだけで何も力がないことに悔やんで歯噛みするミネルバ王女を奮い立たせるギュネイの言葉かけは、自身の経験に裏打ちされた、そして自分自身にも言い聞かせている重みのある言葉の数々だった。打ちひしがれているミネルバに過去の聖女エリシスを重ねている。
邪神派かミネルバ派か、揺らいでいる民は多いが変わらずミネルバを信じている民は多くいる。民は不安な時に頼れる力をもつ者に傾倒するけど、力なら自分がいる!とミネルバに真の忠誠を誓うような姿はとても感動的なシーンだ! 

ディドーの願い、父と再会

ディドーは本巻に出てくる邪神派筆頭の娘でありギュネイ暗殺を任命されていた女性。
ギュネイをずっと見てきて、敵でありながらギュネイの在りように同情して父のやり方に疑問を覚えていく心の変容はひきこまれる。そして最後で父と言葉を交わす感極まるシーンに1、2巻で薄々ほのめかしていたとびっきりの伏線回収を重ねることで、もう、見事すぎるよ・・・感涙する気持ちと伏線回収するところまで真実に気がつかない自分でよかったと気持ちのいい清々しさが同居して感動感激だった。ここまで読者の心に大いに響く物語の進め方と構想はすごいな・・・と久々に感想が物語の枠を超えた。

最後の約束は、どんな時もギュネイのよき理解者であることを言外にいっているようで胸を打つ。
ーーー不履行のかなわぬ約束だから

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