叛逆せよ! 英雄、転じて邪神騎士3<br><br>ギュネイを救い上げた聖女エリシス
叛逆せよ! 英雄、転じて邪神騎士3 (電撃文庫)Amazon

杉原 智則(著/文)ヨシモト(イラスト)魔太郎(企画/原案)
〇あらすじ〇
邪神を討ち倒した英雄ギュネイは、敗戦国ランドール王国の荒廃ぶりを見かねて手助けを重ねるうちに、救世主〈黒狼の騎士〉として祭り上げられてしまう。
そんななか、〈純潔の聖女〉エリシスの暗殺計画の情報を得るギュネイ。居ても立ってもいられず、ランドールの姫・ミネルバに暇を乞うが……
「これまでよくぞ仕えてくれました、と言うと思いましたか? 許しません!」
「ええっ!?」
時を同じくして、それまで沈黙を貫いていた不死騎士団残党が王都に押し寄せてきて――二人の王女の間に立つギュネイ、今こそ決断の時!?

本巻をこのラノと下半期の好きラノに入れます。

2年ぶりの続刊という叛逆せよ! 英雄、転じて邪神騎士3
文も物語も惚れ惚れする・・・杉原先生信者になった。
2巻でランドール国内の問題が一区切りついて、3巻からギュネイの初恋の相手聖女エリシスがいる国を巻き込んだ話になろうとしている。明らか続く展開であとがきにも次作!とあったので先生、信じてますよ?

※2020年10月12日 追記

11月1日時点 29件の評価 ★4.9

涙ぽろぽろでてきた。少しずつ星が増えてきてる。25個評価4.9。続刊が出た喜びの声の数々。 1巻→2巻に1年、2巻→7月に出た3巻に2年と時間を要し読書メーターでは目を背けたくなる登録数だけど、こんなにも間があいても多くの星がつくのは、古参ファンが多いってことかな。
筺底のエルピスとかアルデラミン、プロペラオペラなど手堅い作品が好きな人にささると思うんだよなぁ。地の文多めで読ませる文章が最高で筆致と物語で勝負してる。エルピス4巻のミケーラは棺の制御について考えていた~などの楽しい面白い長文の地の文とか好きな人に~。このラノで誰か挙げないかなぁ。
てことで心が震えたから凪ぐために帰りに教科書に載ってる遺跡見てきた。杉原先生は来年でデビュー20年。これからも作品をだし続けてほしいと願わずにはいられない。筆力高くて会話の勢いでごまかさず、確実にストーリーで勝負してるラノベ作家は貴重ですよ・・・普段作者まで目がいかない自分にとって

はネタバレを含む感想

ディドーとの約束、エリシス暗殺の疑い

実態が分からない薄気味悪い手練れのエンダーという人物が聖女エリシスの暗殺を未だに狙っている可能性がある。今後もミネルバ王女の力になろというところで初恋相手の聖女エリシスに危険が迫っていることに内心そわそわしているギュネイ。そこで思い出されるディドーのおまえのままでいろ、ミネルバ王女の、ランドールの力になってほしいという約束。自分が複数いたら・・・と思うギュネイに同情するばかりで災難の連続で物語としては面白いけど本人からしたら心労だよなぁって。
対してエリシスは黒狼の騎士が災いをもたらす元凶である を意味するような神託を1巻で得て、3巻で調査のためギュネイを心配する気持ちを抱えてランドールに乗り出してリーリンと再会したところで本巻は終わったのでどうか続きを読ませてください!と懇願するばかり。
ギュネイとエリシスはどうか再会してほしい。1~3巻で過去の旅路の語りでエリシスとギュネイのエピソードはいくつかあって今やエリシスの存在感はとても大きく魅力的。

女傑、ミネルバ王女

ランドールに入ってからギュネイはいく先々で英雄のように手助けをおこない、黒狼の騎士としてまつりたてられてしまった。ギュネイの手がなければ亡国の姫君ミネルバ王女の存在は埋もれたままだったかもしれない。
正体を明かさないギュネイはミネルバにとって、信頼に足るものがないのと、他に頼る力がないのですがりたい・・・が始まりだったような。そしてギュネイに託して1回どころか連続して窮地を救ってくれた結果である今のランドールはギュネイの後ろ盾によるものでギュネイは今やランドールの剣のような立ち位置だ。
ミネルバ王女は見返りを求めないギュネイの善意によるものだと捉えているが、ギュネイにとっては罪滅ぼしのようなもの。責任といっている。
頭で考えるよりも行動をとってきた結果で自分自身の首を絞めている感じは否めないけどそういうところも王女はギュネイをずっと見てきて、歳がかわらないことや、行動派、予想外なところでおどおどしてしまうギュネイを知っている。かまをかけるところとか見事だったなぁ。王女の風格、ミネルバ王女は女傑だ・・・。

「本当は熱くて優しい血潮が流れていながら、それを冷たい鎧で覆って、誰にも、決して、それを感じさせない。感じることを許さない」

P240 ミネルバ王女の言葉

ミネルバ自身は孤独だが自分以上にギュネイが孤独であることを見抜いている。
そして王女は2巻でギュネイに弱さもみせてしまっている。
本当に愛人だったらひきとめられたのにと告げている。
ギュネイの中でミネルバ王女の存在感が高まり続けている。
ここでギュネイは、たとえ6英雄を敵にまわしても姫のために力を振るうことを約束するのだが、これは姫の算段だったのかなんて野暮なことは言いたくない。挿絵もあってとても美しい場面だったと思えた。

ギュネイを救い上げた聖女エリシス

エリシスとギュネイの1つの感動のエピソードを小分けにして本編の間間に差し込んで物語後半の敵の手に堕ちようとしているギュネイを救いあげる感涙のシーンに結実させた流れに感動感激。過去編を入れながらギュネイの悩みを掘り下げつつ本編の後半のシーンで意味をもたせる構想がとても好き。
ギュネイたちがランドールを滅ぼす前の戦の中、ギュネイは鎧の効果で死人が見え、死人の叫びをあびながらたくさん殺していくうちに死人と生きた人間の違いはただ、心臓の動きだけ。死人の死の世界への誘いの声が甘美な響きにすら聞こえるようになった。
そこでエリシスは問うのだ。あなたはどこにいるの?ギュネイ と。
多くの死人がギュネイに群がって、心臓を貫いてたくさんの死を経験しているかのような感じを幾度と繰り返したギュネイは自分がこの戦いで何を願い、何を得ようとしているのかも分からないくらい、もう亡者だった。
ギュネイは戦う相手がまわりにいないのに自分にまとわりつく死人をはらうべく剣を振り回し、誤ってエリシスを切ってしまった。
地にエリシスの鮮血が広がっていく中、エリシスは両手でギュネイの両頬を包んで生きている証である温かな体温を伝える。このシーンに今までのエピソードが結実する感動と、丁寧な描写と人の温かみを伝える感動的な雰囲気にのまれる没入感、そしてとてもすてきな挿絵があって胸を打つ。

「そして、わたしの手にだってあなたのあたたかさが伝わってくる。だからあなたもここにいる。そうよね、ギュネイ?」

P305

他の作品で既視感があるかもしれないけど杉原先生の筆致で描かれることでより一層の感動がおしよせてくることを断言したい。読んでる時は没頭していたので既視感なんてない。いらないのだ、既視感など物語への没入を邪魔するジャミングである。後々振り返って思ったことを書いた。

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