筺底のエルピス 4 -廃棄未来-<br><br>超絶の面白さと超絶の辛さが両輪となって読後にしばらく言葉を失う
筺底のエルピス4 -廃棄未来- (ガガガ文庫)Amazon

オキシ タケヒコ(著/文)toi8(イラスト)
〇あらすじ〇
殺戮因果連鎖憑依体ーー。古来より『鬼』や『悪魔』と呼ばれる人類文明の宿敵。それを消滅させる唯一の手段が失われ、世界が破滅へと突き進むなか、最悪の黒い鬼を生み出すことを予言された少女と<<門部>>の生き残りを、あまりに邪悪な存在と数奇な運命に翻弄される狙撃手の少女が追う。積み上がる仲間の死と、『すべてを取り戻せる』という希望の裏に隠された残酷な真相を乗り越え、果たして逃亡者たちは、戦いに終止符を打つ約束の地に辿り着けるのか。人類の存亡をかけた、影なる戦士たちの一大叙事詩、希望と慟哭の第四弾。

前巻

ネタバレを含む感想

超絶の面白さと超絶の辛さが両輪となって読後にしばらく言葉を失う第4巻。

人を傷つけたくないという心意が具現した、人を切れなかった停時フィールドが立ちふさがる邪魔者を躊躇わず斬るだろうという叶の思いが反映して死の太刀へと変化してしまった。
結と離れ離れになってしまって、気づけなかった、とめられなかった自分を責め、共にいた仲間は圭を含めて全員が死に、独りぼっちになったこの世界に未練などないと、どうなったっていいと思い至るまでに変わってしまった。しまったではなく、変わってしまうでしょう・・・と、同情したいくらい16歳の夏の終わりから2年ほどの間に目を背けたくなる現実を目にしてきた上に世界がもう秩序を失って滅びに向かっている。もうとっくに涙は枯れてしまっている。
少しの描写だけど百刈圭と乾叶二人での逃避生活を、人里離れた廃村で夏の終わりから雪解けの春のはじめまで送っている。
敵が音を上げて交渉しにくるまでは生きのびないといけなくて、2人で衣食住をなんとかこなす半年以上の日々には、辛い思いを共有しつつも、何かで笑いあい、楽しいことだってあったと思うんですよ。
痛みを抱えつつも、2人で苦楽を共にする慎ましやかに暮らす日々。
叶は百刈圭が傍にいたから背負っていけたのに、失ってから叶の世界は壊れて、倫理観を失うまでに堕ちてしまった。
滅亡へのカウントダウンが目に見えたところで敵が占拠している門部に投降し、敵の狙いが分かり、今の世界線を破棄して過去へとわたって、託されたたったひとつの希望を叶えて、全てを取り戻せたはずなのに!当然過去にはもう1人の自分がいて、今の叶が抱えてきたものを共感してくれる人は誰もいない・・・自分の居場所なんてないという、突きつけられる痛哭する現実。圭を失ってから流していなかった涙がとめどもなくあふれでるところはしばらく余情として印象に残り続ける。
世界は絶望から希望にかわったが、叶の絶望は取り残されたままなのだ。

でもね、きっと、結と百刈圭は今の叶に寄り添ってくれると思うんだよね。百刈は普段おどおどしているけど、
そこは叶を奮い立たせる発破をかけて。結は叶の支えとなり、門部と今の叶をつなげる架け橋のような存在になってくれるんじゃないかって、そう期待を膨らませて次巻を読もうと思う。
結を守ってきた叶は、過去の世界で結に救われた・・・なんてストーリーを想像してみたり。
頬を伝った涙のように、込み上がる情動を形にできたのであれば、叶はまだ枯れ果てていないと思う。

絶望ってのは周りに人がいない孤立した存在となって、自分の抱える思いが世界の全てとなってしまうような立ち位置で外的なきっかけが何もない状態だと思う。
1人の幸せは予想できるけど人からもたらされる幸せは予想できないように、人がいることで
予想できない立ち直れるきっかけがもたらされるかもしれないから。


ゲオルギウス対エンブリオ戦は激熱だった。ユーゼフの甲冑型の柩は最高峰の防御力では?と思って肉弾戦にもちこめばエンブリオに通用するかと思ったけど意外とあっさりやられてしまった。妙に艶めかしく、エンブリオの遊びが入って。
ラファエラの思いを汲み取って最期にミケーラが心の中で言葉にした一言が残響となって次のページに視線が移らなかった。

<そうね、あの子と、友達に、なりたかっー>

P96

あの子=結。
ミケーラがそう思ったところが印象的だった。結だったら誰だって分け隔てなく関わってくれそう。ミケーラへの殺意がまったくなかった結という存在。取り戻した世界で2人が言葉を交わすことがあったらいいな。
ペルラ姉妹の会話も。

スポンサーリンク

Twitterでフォローしよう