数字で救う! 弱小国家 電卓で戦争する方法を求めよ。ただし敵は剣と火薬で武装しているものとする。

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長田 信織(著/文)紅緒(イラスト)
〇あらすじ〇
小国ファヴェールの王女・ソアラは悩んでいた。隣国との緊張が高まり、戦争の気配がちらつき始めた今、国力が低い自国を守るにはどうすればよいか。父王は病に倒れ、頼みの綱の家臣たちも、前時代的な「戦いの栄誉」ばかりを重視し、国を守る具体案を誰も持たないまま。このままファヴェールは滅ぶのか……。しかし、そんな時、彼女の前にある人物が現れた。《ナオキ》――後の歴史に《魔術師》の異名を残したその青年が扱う『数字』の理論と思考は、ソアラが求めた「国を救うための力」だった……!異能ナシ、戦闘力ナシ、頼れるのは2人の頭脳だけ……! 理系青年と、敏腕王女が『戦争』という強敵に挑む『異世界数学戦記』、ここに登場!

数学×戦記ということで期待以上の面白さだった。数学を駆使して事が上手く運ぶ場合と、時をこえる数学といえども『心』をもつ人たちの物語である以上どうしても数学の解のようにスッキリと解決できない難しい面が掘り下げて語られて魅力的だった。 理屈と感情の間でゆれる物語は今後次第で化けるのではないかなって。
数学×戦記て、理詰め×人の勢いと熱さの物語。どちらに焦点を当てても楽しそうだし、それらのシナジー効果と物語の積み重ねからさらに相乗効果をうんだらと思うと、このシリーズがもつ物語の可能性に期待を膨らませる。各国の情報と場所が載っている地図があって今後広がっていく世界が楽しみ。
数学が好きな長田先生の数学のロマンを込めたシリーズ。

ネタバレを含む感想

数学を認めてくれる

王女殿下ソアラと転移してきた主人公ナオキが語り部となっている視点が変わる一人称小説となっている。
戦記モノで3人称小説でないのは久しぶりだった。
ナオキは勝負下着で覚悟を決めたソアラを一晩中計算させ続ける豪胆?ぶりでソアラを敵に回しちゃいけないと思ってる。恋心の兆しが見えたら数式で表現しちゃいそうな勢いがありそう。
そしてソアラは父上にはいつも怒られ、臣下からの信頼が薄いんだけど女傑に見える~。心と態度がもう。
国の趨勢を担う身で上から下からの圧力で板挟みになりながらも心が強く毅然とした態度の数々は凛々しい王女の姿。信頼できて、相談できて、弱さを見せられるナオキという存在が彼女の中でとても大きい。
当たり前の中に矛盾を見つけて周りに相談しては無碍にされてきたソアラにとって、自分の考えを認めてくれたナオキを言葉では生涯の仲にしたいと言っている。
ナオキも日本での出来事から、元の世界には未練がないと言っている。数学を愛してくれるソアラという王女が目の前にいる世界が今は気に入っていそうだ。ソアラがナオキのパートナーになっているような。
二人が突っ走っているようなので臣下とのつきあいが今後の課題になってきそう。2人が臣下たちを推し量ってやれるのか。上手くいく、だめになるどちらに転ぼうとも面白くなりそうだからいいけど、王国の〇〇となったナオキは臣下から疎まれそうだ。内政については思惑が絡むので今後どうなるんだろう。

数式で人と分かり合えない難しさ

数学を戦記に組み込んで頭を働かせながら深く楽しく読むことができた。手を止めてイメージして得心がいく数学の話だった。心理面をうまくついていると思った。
一番はじめの数学講座は教科書の発展的な内容か『やってみよう』のコーナーにのっていそうなもので懐かしさを感じた。
数式で人とわかりあえない難しさ、突っ走っている二人の考えに難色を示す臣下たち、謀略から苦境に立たされる時があるなど数学的なことと戦記モノの配合がうまく機能していて、今後の数学の楽しさと熱い戦記モノが楽しみ。

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