探偵はもう、死んでいる。2 感想

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二語十(著/文)うみぼうず(イラスト)
〇あらすじ〇
高校三年生の俺・君塚君彦は、かつて名探偵の助手だった。
シエスタを失ってから一年が経ち、夏凪や斎川と出会い、シャルと再会した俺は、ある日、彼女たちとともに《シエスタ》に誘拐される。
そこで語られるのは俺が『忘れている』らしいシエスタの死の真相。
探偵と助手の長くて短い旅の記録。
地上一万メートルの上空で始まる少年と少女の冒険譚だった。
「君たちには、どうか見届けてほしい。私が挑んだ最後の戦いを──」
そうしてシエスタは告げる。
まだ誰も知らない真実を。
どうして探偵がもう、死んでいるのかを。

ネタバレを含む感想

2巻は発売日近くに買っていたけど積んでいた。
間があいたのは、書店で見た2巻の帯を見て萎えたから。内容に触れていない豪華声優がのっている帯で釣ろうとするところに。
大事なのは物語なのに、当時は短絡的な考えで積み本入りとなっていた。
どんな背景があるのか知らず、小説の帯はできるだけ物語だけで勝負してほしいな、妥協して内容に触れている第三者の推薦コメントとか、物語が主体となっているやつだったらいいなというのが自論。
声優の物語で声優が帯コメ書いている『クズと天使の二周目生活』ならわかる。以下のように。

『どうせいろんな女性声優に帯コメ頼んでるんだろ!!!!』
※このように本作ではリアルな女性声優が描かれています。

クズと天使の二周目生活4巻(ガガガ文庫) 帯

声優ラジオ番組のお仕事ラノベ、面白いです。



1巻の感想を振り返ると、面白い小説を形成する様々な要素を詰め込んだ1冊。何かが突出しているのではなく上手く調和しているのか、詰め込んだ分、地に足がついていないふわふわした不安定さがあるのかよくわからない。というような内容に触れていない使えない感想を書いていた。
でも、先生がいう『自由さ』は1巻読んだ後も、2巻読んだ後も共感できた。3巻は過去を振り返った後の登場人物たちの再始動と内面の整理なのかと想像すると『自由さ』からできる構成なのかなぁ~と思う。

自分はライトノベルのある程度巻数積んでから語られる過去編が好き。エロマンガ先生とか。なれる!SEとか。何冊か出た本編の次に過去編の内容が多めの1冊が出て、本編に深みがでる構成はシリーズライトノベルの魅力だと思う。なので探偵はもう、死んでいる2巻で過去編が出るのは意外だったけど、読み終えるとこの小説は1,2で上下巻構成になっている印象をうけた。だからわずか2か月で続刊が出て、3巻に向けて余情を残す、いい着地だった。
勢いは、死なない←

分からないまま別れるところが二人らしい



内容は、過去の探偵と助手の軽妙な会話が面白いけど物悲しさをずっと感じていた。だって、そうだろ?

探偵はもう、死んでいる。

一人称小説の助手の文言から影響を受けているようだ。
『探偵は』の後ではなく、『探偵はもう』の後に読点をつけているところが変わりようがない死という事実を印象づけている。

シエスタは最後まで凛々しく、プロフェッショナルで怜悧な彼女でいてほしかったと思う。最後まで依頼人の利益を守るプロだから。
たまには、不真面目なこと~のところ、ネタになる思い出話になって面白いはずなのに心の奥底では疑問を覚えている。からかい、からかわれる関係。探偵と助手。助手がたまにからかっていつもと違う一面のシエスタが微笑ましかったりするのがちょうどいい。
そこは一線を引いたプロフェッショナルな探偵と助手というビジネスの関係だから。
だから物語の最終でシエスタが君塚を『彼』と表現したところが、よかった。

「黙りなさい。今は、私が彼と喋っている」

p313

敵に代名詞の『彼』と言ったんだろうけど、『助手』や『君』以外で君塚を表現していたところが印象に残った。
本名を知らず彼女を<<シエスタ>>というコードネームで呼び、シエスタは君塚を本名で呼ぶことはなかった。
『君』は君塚のあだ名なのか、人称代名詞なのか。どっちだと思う?と言うシエスタから答えはないまま、シエスタの本名は分からないまま終わるところが二人らしい、探偵と助手というかけがえのない絆の関係だ。

他に味わい深い戦記を求める人に

硬派戦記「烙印の紋章」「レオ・アッティール伝」を手掛けてきたの著者の新シリーズ。

タイトルで想起される軽やかな筆致の物語ではない。
じんわり温まる小説や心揺さぶられる小説、熱い小説に読んでいれば幾度出会うことはあれど、はじめから最後まで味読ができた上で上記のどれかの小説たり得るものは、電撃文庫でデビューして20年活躍している杉原智則先生の小説が筆頭に挙げられる。面白いシーンで楽しませることも大事だけど小説の本質は、読ませる文章で深い没入感があり、味わい深く読める小説であると思う。物語を形作るのは文章だから。面白い上に味読ができれば、最高な小説に化ける。というのは杉原先生の本を手に取ってパラパラめくれば直感で全体的に文章がぎっしり詰まっていると分かる。とにかく読ませる文章と()のキャラの心の声によるテンポが堪らない。笑みをこぼしたり、ぐんぐんのめり込んだり、ドン!と考えさせられる心境に陥ったりと地の文の多さが魅力にしか映らない小説。会話の勢いでごまかさず、紛れもなく地の文で形作る物語で勝負している小説。
物語は、英雄の1人が災厄を阻止した平定後、敗戦国に立って目のあたりにした事実から自身の正義に問いかけ、悩み、虚飾に満ちた真実にメスを入れる物語。現地に立ってみて体感することは、真実は事実を曇らせるということ。読者の現代に通底するテーマがあり、現実に影響を及ぼす力があるライトノベル。
イラストレーターをかえた2年ぶりの続刊に、作品を追っていた多くの読者が歓声を上げた。

少しでも気になったら、1巻の熱いAmazonレビューの数々をご一読ください!
3巻は2年ぶりの続刊であるにもかかわらず1巻よりも星の数が多いのでファンの方々がどれだけ切望されていたか伝わってくるかのようです。著者はブログやTwitterをやっておらず宣伝は発売時の公式アナウンスだけなので多くの口コミが集まるのはうれしい限り。

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