オリンポスの郵便ポスト2 ハロー・メッセンジャー 感想

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藻野 多摩夫(著/文)いぬまち(イラスト)
〇あらすじ〇
「地球人類は火星を見捨ててはいません。我々は皆さんを助けに来ました」
 オリンポス山の麓に不時着した謎の宇宙船に乗っていたのは、地球の全権大使を名乗る少女・メッセだった。
 八十年ぶりに再開される地球と火星の交信のため、エリスは彼女を火星の首都・エリシウムへと送り届けることになる。
 目的地に至るため、過去の戦争により汚染された死の渓谷《ルクス・グラーベン》を渡る二人の危機を救ったのは、かつてのクロの面影を持つ黒いレイバーだった。
「お願い! クロ! 目を覚まして!」
 そして死の渓谷に隠された施設で彼女が見たものとは──。 第23回電撃小説大賞《選考委員奨励賞》受賞の感動作、第2巻登場。

ネタバレを含む感想

前作オリンポスの郵便ポストは、1巻完結巻としてまとまっていて感動的なラストだった。火星を開拓したロボットとその歴史、隕石嵐と内戦、どんな手紙も届けてくれるというオリンポスの郵便ポスト、辛い過去をもつ長距離郵便配達員エリスと、それぞれ冗長にならない程度に丁寧に説明し過去と現在をリンクさせた、エリスとロボットのクロの旅路はロードームービーのようで感動的な物語だった。

2巻は写真の帯コメのように、地球からやってきた大使・メッセとエリスが火星最大の都市・エリシウムに向かう道中を描く。だけど、エリシウム山が見えたところで物語が終わる。エリスとメッセが途中、廃棄された研究所の研究員と開発された兵器の少女シロと出会い、最後は少女3人でエリシウムに行きますよー!で終わる。描かれたのはエリスとメッセのドンパチしながら育まれる仲、クロに似たロボットとの戦い、研究員の贖罪、シロとの出会い。
著者があとがきで、蛇足に思われたかたがいるかもしれませんと言及しているように2巻については蛇足であるという感想が散見される。
だけど自分は、この物語の雰囲気が好きな読者として続きが読める喜びがあって、彼女らが過去の出来事を糧にして、もう大丈夫だと3人で前へと進もうというところで終わる着地は前巻の旅とは違う感動があったのでよかった。
前巻がオリンポスの郵便ポストまでの旅路なら2巻は登場人物たちの心の旅路であると。
旅なんだから途中で立ち止まって悩んでもいい、中々吹っ切れない思いに胸を焦がし、切々とした時間を過ごしてもいい。だけど過去には戻れず立ち止まるか、寄り道か、前へと進むしかないわけだ。
2巻に出てくる登場人物の多くが過去を引きずっていた。懊悩して、衝突して、吐露して、打ち明けず心に留めておいて。過去を共有して相談して気づかされて、過去の時間が今の、これからの自分の支えとなっていることが心の旅路の1つの答えなのかなと思った。
数々の悲劇と惨劇だらけで悲しいことばかりだけど、悲しいが全てではなくて捉えようによっては違った答えがあると気づかせてくれる。とてもよかった2巻だった。

そして地球に火星を援助する意思があることを伝えるため、火星最大の都市エリシウムが近くなってきたところで物語は終わる。続きは読者の想像に委ねられるのだなぁと。2巻が出てから3年、続刊は出ていない。元々1巻で終わる予定の物語であとがきの最後が今までの感謝の言葉で締めていたので2巻で終わりなのだと。
1巻がまとまって終わっていて、2巻がこれから期待を膨らませるところで終わっているので、先を想像するのが楽しみな終わり方がかえって好印象。
またメッセの過去の語りで、学校の先生や家族の人の名が明かされていたこともよかった。
一回しか出てこない人物にも名がある。
壮大の物語の一部を切り取って丁寧に仕上げているような感じ。

人為的に隕石嵐を起こしたのではないか、援助と情報収集たのめ火星に向かった宇宙船カッシーニが何かの陰謀によって堕とされたとか気になるところは残る。でも本巻で地球は隕石嵐から復興していて火星に援助できるほどに回復していることが分かったし、エリスに施された義肢技術は地球では100年も前に廃れた技術であることが分かった。軍事も人が戦場で血を流すことはなく、機械兵士が人に代わって戦場に立っていること。
機械が人に牙をむいたらと思うとこわい。

2020年8月に出た新作を少し読んだんだけど、なんと『エリシウム』というキーワードが出てくる。

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