烙印の紋章 たそがれの星に竜は吠える 感想

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杉原 智則(著) ●3(イラスト)
〇あらすじ〇
かつて高度な知能を持った竜が支配し、魔素を利用した文明に支えられた世界。十年の間、戦争を繰り広げてきたメフィウスとガーベラは王族同士の政略結婚により、その長い戦いに終止符を打とうとしていた。幼い頃、戦争により故郷を追われ剣闘士となったオルバは、瓜ふたつの容姿をしていることから、婚礼を控えた、うつけと噂されるメフィウスの皇子とすり替わることになる。一方、勝気なガーベラの姫、ビリーナは皇子を籠絡して自国の利益を図ろうとひそかに決意する。そんな二人の婚礼の途中、何者かの襲撃があり-!?二人の思惑と和平の行方は?杉原智則が贈るファンタジー登場。

ネタバレを含む感想

杉原先生が書く質実剛健な本格的な戦記はとても面白い。地の文が多めで、それでいてくどくなく、濃さがあり、とにかく読ませる文章で描かれる戦記。3人称視点で描く思惑も魅力的でふと笑ったりする場面が間にある、のめりこむ戦記物。ここまでくると派手な展開がなくても面白い。
本巻は、先生の過去作品を読んでみたいと思って手に取った1冊。初めて読んだ杉原先生の作品は、
叛逆せよ! 英雄、転じて邪神騎士 』(電撃文庫)
2020年7月に出た3巻は2年ぶりの続刊のようで杉原先生の作品をずっと追ってきた読者にとっては、たとえようがない喜びがあったようです。発売日の開店時間近くに買いに行ったら入荷数が少なくて、読メ読者数が少なくて4巻が出るのか不安。2020年で一番続刊が出てほしい作品は叛逆せよ4巻のみ。


烙印の紋章1巻読み終わって、あと11冊も続刊があるのがうれしくてたまらない。聞く話によれば半ば打ち切りで終わってしまったようですが、最後は上手く畳んでくれているのではないかと、先生の堅実な構成から思う。
剣闘士オルバの凄惨な過去と鍛錬を重ねて鍛え上げられた肉体と、肉体を鍛えて培われた精神的な強さを描き、物語の舞台の最下層にいる人物が瓜二つ皇子とすり替わり、民の窮状を身をもって知っている彼がビリーナ王女と共にどのような采配を振るのか楽しみ。
皇子の立場で陣頭指揮をとって、戦場では剣闘士時代の仮面をつけ、正体を隠して死線に立つ男。
果敢と勇猛を体現している姿が勇ましい。正体を知っているのは仮面をつけたフェドムとその周り、剣闘士の信頼できる仲間数人。うつけ者の皇子だと思っていたビリーナ姫含めて周りの人達が皇子の変わりぶりに訝しむ様相を見せるのもまた一興。

ガベーラの第3王女ビリーナ姫。和平のための政略結婚とはいえ、少しでも自国が有利になるようにオルバ(=ギル・メフィウス皇子)につけいり、取り計らう狙いは彼女の過去の武勇をみればいかに女傑の振る舞いか。男勝りな姫。本物の王子だったら簡単に裏から糸ひけそうだけどオルバだし、オルバとビリーナ姫の口論は、どちらもごもっともな意見で、今後の日常会話も含めたかけあいが楽しみ。

自分が何者であるのか、何を為し得るのか。星降る夜、兄ロアンと交わした会話の答えは、いまだに見つからない。
剣ひと振りで身を立てるという少年期の幻影を追い続けるのか、奪った者に対して復讐の剣を振り上げるのか、奪われたものを追い求める手段を講じるのか。

P325

オルバの今後の指針について。
立場がかわって見方・考え方が変わるのか。
憎しみに形を与え、憎しみを切り裂く指針となった剣をふるう意味はかわるのか。
オルバとビリーナを筆頭にした国の趨勢を追っていきたい。

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