烙印の紋章 Ⅵ いにしえの宮に竜はめざめる 感想

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杉原 智則(著) ●3(イラスト)
〇あらすじ〇
魔道士ガルダの軍勢からヘリオを奪還したオルバたち。それを端緒にアークス・バズガン率いる西方連合軍はガルダ打倒を目指す。功績が認められ、傭兵の一小隊を任されたオルバは、猛将ニルギフが守るカダインへと向かうことになるが、そこでは恐るべき罠が待と構えていた。西方全体に広がった戦火は、それぞれの思惑までも呑み込んでいくが-。かつてない難敵を前にオルバの抱く覚悟とは?ガルダとの決戦の行方は!?英雄への道を描くファンタジー戦記、第6弾。

ネタバレを含む感想

メフィウス皇太子ギル・メフィウスは、死にも、逃げ隠れもせぬ。ここにいる!
いかに鋼の心をもっていようと内なる奥底にある、誰にも触れられたくないやわらかいところに闇を抱えているもの。心の闇を増幅させてオルバを屈服させようとしたガルダだったが、ギル・メフィウスという心に響く名から気づかされ、向き合い、這い上がり、エスメナに皇太子ギル・メフィウスはここにいると叫び心肝によびかける流れは本巻で一番印象に残っているところ。亡者兄ロアンの頭を踏みしめ、姉アリスの背中を蹴って駆けたという描写があるところがいい。あるのとないとでだいぶちがうと思った。
心の深淵の描写は叛逆せよ3巻の聖女エリシス、カミラ・ニュクスのときも思ったけど達筆で、闇と、そこからの兆しは読み入る。

前巻から傭兵稼業をはじめ、上官の命令に従わなければいけない立場になってみたことでオルバは、シークに窘められながらも学んでいく。情報が要であることを熟慮していて、自分が嫌いな人間は相手も自分を嫌っている。前巻でオルバの考えに賛同を示してくれた将軍に比べ本巻は、ないがしろにされて聞く耳をもってくれない。反感を口にしてしまった後々 そうか、と腑に落ちるところは今後上に立つ立場が再びあった時には真価を発揮する期待がある。
タウランには王がいないと前巻から気にかけていて戦を通じて、王や貴族とは民にとってどのような存在であるべきか少し考え、混沌としている乱世で求められる血族の語りが好き。故にアークス・バズガンの功績として歴史に残るよう彼を立たせた。
王侯貴族の風格を漂わせていたが本巻でより光っていた。皆の士気を鼓舞するシーンの数々は読んでいる読者をも燃えさせてくれる。鯨波が小説を超えて読者にも吹きすさぶ勢いだ。


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