
杉原 智則(著) ●3(イラスト)
〇あらすじ〇
婚約者である皇太子ギルを亡くし失意のビリーナだったが、その死の真相を探るため帝都ソロンを発つ。ホゥ・ランとも再会し、二人は再びアプター砦へ赴くことになる。一方、ガルダ打倒を果たしたオルバはタウーリアへと凱旋。束の間の平穏を享受する。しかし、そんな折にメフィウスによるタウーリア電撃侵攻の報が入る。グールの独裁がますます強まる状況のなか、ノウェ&ゼノンやイネーリなどの面々も次の一手への布石を打つ。新たな戦乱の到来とともに、オルバとビリーナの運命も再び交差する。
ネタバレを含む感想~
周りから何を言われようと自分が得心に至るまで皇子ギル・メフィウスについて不可解な点を追究したい思いから生じるビリーナの行動力と、下手なお芝居には、美点である剛胆さと可憐さがある。皇子は『嘘つき』だと、何かあるに違いないと皇子の部屋をくまなく捜索して失意が色めき立ち、アプターでオルバの刀作った鍛冶師のソダンから、剣闘士オルバに贈ったチェーンつきのメダルを受け取ったときは否応なく現実をつきつけてくるかのよう。だけどそこからの彼女の裏切りの烙印をおされかねない猛進は彼女の悲哀な未来予想図を思い浮かべつつもきっとオルバが引きちぎってくれるのではないかとも思う。
近衛兵のホゥ・ランにはオルバは事象を伝えていなかったのか。縁は切れるものではないという言の葉にはどこか哀愁を帯びているかのようだ。
イネーリは、今後女の怖さを体現してくれるのではないかという干戈を交わす戦争とは別種の戦争を繰り広げてくれそうだ。オルバの「ガキが」を回想して復讐を新たにするところでフェドムに接近するところなので、戦争の相手はまずフェドムから。ビリーナとイネーリが仲良くなる展開はなさそうかなぁ。妹の相手さえ気が立って雑にあしらってる。
タウーリアの姫エスメナ・バズガンには、願いに答えて仮面を少しはずし皇子ギル・メフィウスを明かす。
救国の英傑がタウーリアに火をかけようとも恨まないと言い張るエスメナ姫。救ってくれた事実に変わりなく何か事情あってのこと、皇子ギルの暗殺に心を痛めていたエスメナ姫が心身から笑顔を取り戻せそうだ。
暴君たる皇帝の勅命により、西方遠征という皇子ギルがタウーリアと結んだ和議を踏みにじる軍略に皇子に感銘をうけた将軍とローグとオーダインが「殿下に」と言い杯を交わすシーン。2人の将軍が、ははあ!と皇子ギルの力になってくれたら感慨もひとしおだろうなあ。
西方戦線が終結して防備が薄くなってるところを計ったかのように攻め入ってくるメフィウス軍に対して、作戦立案から雌雄を決する戦線まで活躍したオルバは猛将のそれであった。パーシルと兵刃を交えて問答でオルバが生きていることを明かしてしまって、パーシルはオルバそのものが・・・(皇子なのか?
とか思ってるのかな。オルバと皇子の言動が重なって見えることがあることだろう。
密告をしてきた使者がビリーナだと知った時のオルバのどよめきにはどんな思いがあったことだろう。そしてすぐうたれてしまった。
オルバの中でメフィウスのイメージが、村を焼き尽くした憎々しい為政者が治める国になっている。
次巻が第2部最終巻ということで熱気はとどまるところを知らない。