烙印の紋章IX 征野に竜の慟哭吹きすさぶ 感想

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杉原 智則(著) ●3(イラスト)
〇あらすじ〇
西方より舞い戻り、"皇太子ギル"として復活をとげたオルバ。ビリーナとも再会を遂げた彼は、近い将来に起こるであろう戦いに向け準備を進めていく。一方、帝都ソロン。皇帝グールは帰還したギルを偽物と断じ、老練な将軍フォルカーを司令官とした一軍をアプターへ差し向ける。圧倒的な戦力差のなか、皇太子として反皇帝の狼煙をあげなければいけないオルバは、寡兵をもってして鮮やかな勝利を得るべく策を練る。両軍はついに激突の時を迎えるが-。英雄への道を描くファンタジー戦記、第9弾。

ネタバレを含む感想

一度葬ったその名を再びこの世に顕現させる。今まで復讐のために生き、戦場を疾駆していたオルバが今度は自分の戦いと称して多くの家臣の命を預かり、専横に振舞っている皇帝グールに反旗を翻す物語。

かつては復讐のため剣闘士オルバ、皇子ギル・メフィウスとして剣を血の色に染めてきた。
今は復讐から覚悟を決めた自分の戦いであり、ついてきてくれる多くの仲間とともに挑む戦いということで今までの自分は何者であるかの問いかけへの思慮、答えを、巻数を重ねたオルバの今までの歩みにより、じわじわと変化を伴って出してきているところがシリーズもの味わい深さ。文から滲み出ている。
多くの者を巻き込んでしまっているが故の家臣を死なせてしまう恐れからくる自問は、かつての自身の復讐に生きていたオルバなら出なかったもの。そこでオルバの正体を知っていて面倒をみてずっとついてきた、精神的にも最大の力添えであったシークが気づかせ、オルバを支えてきたシークの存在感の高さを示す巻だったともいえる。ずるい、ずるいよこの展開は。オルバがさらに孤高の存在となっていく。
オルバの正体を知らないビリーナが彼の最大の理解者になるのは難しい。外面だけとなってしまう。

皇子自らが先陣を切り一点突破を図る描写は熾烈だった。
内乱なんてのは国力の弱体化であり他国が侵入する起因となってしまうけどもう、ひきかえせない。
全うなオルバたちの叛逆が始まった『烙印の紋章』最終章の第三部幕明けである。
9巻も出してくれていた2011年台にに感謝。このシリーズが出たのが10年以上前でよかった。
挿絵は猛々しい男が多い、だからこそいい硬派な小説。

さて、ビリーナ姫。最悪の裏切りから驚喜と憤激の再会(読者視点
オルバは、"あのビリーナ姫"だからと1,2発の拳を覚悟して姫と相対したが、冷ややかな視線を向けてから拳銃を皇子に向けて"あなたは何者か"と問うとはオルバも読者も"あのビリーナ姫"の想像の範疇を超えていた。
そしてテレジアには泣きじゃくるのだ。皇族の立場は難儀なものだとつくづく思う。

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