Babel II 魔法大国からの断罪 感想

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古宮 九時(著/文)森沢 晴行(イラスト)
〇あらすじ〇
幾度となく命の危険に遭いながらも、雫のひたむきな前向き思考と魔法士エリクの機転によって切り抜けてきた長い旅路。カンデラ城での禁呪事件を経た後も、行く先々で何故か騒動に巻き込まれながら、遂に二人は当初の目的地であった魔法大国ファルサスへと到着する。
 日本帰還への糸口を求めて、ファルサス王ラルスとの謁見が実現するが……。
「──立ち去るがよい、外部者よ」
雫の存在を“ありえない異質”と断じ、冷徹な意志を持って王剣を突きつけるラルス。処断を逃れるため、自分が人間であることを証明するために雫が取った行動とは。そしてファルサス城の中で知ることになる、エリクの過去とは。
 やがて解明されていく世界の謎。異なる世界の言語を教え合う中で少しずつ降り積もっていった違和感は、衝撃的な事実として雫たちの前に立ち現れる。

ネタバレを含む感想

言葉に重みをのせて

雫の「は?」「は?」「は?」「え?」「え?」「え?」
からの明るみになる驚きと発見の事実による、七転び八起きのように浮き沈みがあるてんぽのよさが全体を通してよかった。雫の反応は読者の感想を代弁するものであり、それは言わば読書体験としては異世界に赴く上で満足度が高いんですよね。時折驚かすような突飛な行動力に冷や汗をかくことがあるのもまた一興って感じ。
代表格が「私は、人間です」という言葉に重みを、信念を上乗せして伝えるあの強靭な神経。
かつてエリクから剣を受け取ることに躊躇して最終的に断った雫から肝が据わっているわけだ。
不条理に異世界に転移され、あ、ドラゴンがとんでる!とつぶやきをもらした自分をアホに思いながらも次第に地に足をつけて、日本に戻るための手がかりを探るべくなんとかやっていこうと異世界の環境に順応しようとする。写真を『シャシン』と表現し撮ることがなかったシーンは印象的。そこからターキスから剣を受け取って負の存在を前に「私はここに、いる!」叫びで何か吹っ切れて感じで、2巻の雫はだいぶ胆力をもちあわせていることに目がいく。
エリクは頑固っていうのも頷けるし、不退転の決意をもった、この世界における自分の力を痛感している凛々しい女子大生。
なら今の雫なら、動いているものが動かくなると楽しいと言う、人殺しが楽しいカイトに言葉で通じ合えますか?と問いたい。綺麗事の説教に彼が得心をもつところまで押し通すことができますか、と。

流動的ではないから伝える手段として最上なのか

この世界の根源に関わる事実、〇〇単語。
異世界転生/転移系のネット小説の書籍化が目立っている昨今、読む機会はあれど言葉は通じる前提がほとんどで、表記する言語は異世界に準じる場合がある中で『言葉』そのものに着目する着眼点が興味深く、書籍が物語の最後まで世に出されることは何より。定義は分からないけど内容もイラストも新文芸という立ち位置にぴったりあっていると思う。書影は雫の可憐さはもちろんのこと、え、ちょwエリクさん…?え、エリク!?のすまし顔の横顔がエリクという人柄を見事に表現している気がする。
話はずれたけどこの世界の言語の在り方には驚かされた感想と、固定的な印象だった。
だって言葉は『生き物』であり流動的なものだと思うから。何か何年か前に読んだ新聞の言葉についての記事を思い出す。それは『チンする』を筆頭にあげた、時代によって自然と生み出される言葉についてのコーナーだった。
チンしといて? だけで多くの者に伝わる言葉であり、ご高齢の方には伝わらない場合があることを思い出すと、反面、この異世界の〇〇言語の在り方は、伝えたいことを伝える手段である『言葉』の理想的な最上の形なのかもしれない。
恥じを忍ぶ場面では正しい言葉遣いができるよう意識するけど、気心が知れた仲間には誤った用法はあっても伝えたいことが伝わればいいと思っている。現代で本来の意味をはき違えた言葉が浸透しているのも、由来を辿れば潮流の体現である場合もあり言葉は生きていると思うことがある。
って思ったけど言葉について根底が覆されて驚倒している雫がどう歩んでいくのか注目。

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