亡びの国の征服者 2 ~魔王は世界を征服するようです~ 感想

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不手折家(著/文)toi8(イラスト)
〇あらすじ〇
家族の愛を知らぬまま死に、“もう一つの人類”の侵略に脅かされる王国で新たな生を受けた少年ユーリ。
彼は騎士家の名家であるホウ家の跡取り息子として、王女であるキャロルや魔女家の生まれであるミャロらと共に、騎士院での生活を送っていた。
そしてユーリは生まれて初めて、“もう一つの人類”――クラ人と出会う。
亡命してきた宗教者であり、クラ語講師であるイーサ。
ユーリは彼女からクラ語を学びながら、「敵国」への理解を深めていくのだった。
数年の時が流れ、ある目的から学業の傍ら事業を興すことを決めたユーリ。
前世の知識を元に植物紙の製品化を目指す彼は、協力者を得ながら試行錯誤を繰り返していく。
しかし事業が成功した矢先、王都を裏で牛耳る魔女家の魔の手が迫り……!?
のちに「魔王」と呼ばれる男は、静かに、しかし確実に覇道を歩む――。
「小説家になろう」で話題の超本格戦記譚、待望の第2幕!

ネタバレを含む感想

本作の魅力本領発揮前の丁寧に下地を作って本作の舞台を数々みせてくれた。タイトルの通りの『亡び』が滲みでる巻となった。

終始、安定感が抜群なんですよね。1巻、2巻とユーリの動向から、きめ細やかに設定された舞台を明かしていく。情報では3巻でも本格派戦記を謳う本作の戦記の描写はないっぽいとのことですが下地を積み重ねてからの爆発力を自然と期待してしまうほど1巻、2巻と安定した面白さがある。てかキャラの動かし方と描写が巧みな印象を受ける。

騎士院に入学したユーリとその周りを描き、国家の憂いを帯びた現状を描く。
軍権は五大将家
政権は七大魔女家がもっていて今の王権は絶対王政とはいえず七大魔女家が経済を牛耳っていて既得権益をからお金を貪っている。
利益が見込めそうな零細~中小、脅威となる事業などを潰すか吸収していく様は、
事業を起こそうとする発起人の熱意を削ぎ、生まれる雇用を削いでいき、いきつく先は各国から文明レベルで遅れをとった旧態依然とした国家になってしまう。

現に次々と難民が流入し、雇用がなくて餓死、冬場になれば凍死した者が道端に転がっている。特許に似たシステムを実装して事業を立ち上げたユーリによって多くの雇用を生み出したがすぐに現状をかえられるわけではなく、今後亡びを予感しているユーリの動向が気になるばかり。特許と、将軍家という家柄があってこそ今のところうまくいっているところか。前世で研究資料の横領から訴訟を起こして大金を手に入れた元研究者だから用意周到なんだろうけど。魔法とか簡単に状況を覆せる手品がない世界だから魅力的。

頼るものに頼り、協力する仲間、従業員を増やし確かに着々と未来を見据えて行動しているように見える小遣い稼ぎ。魔女家に目を付けられるも、魔女家に招待されて、ユーリに武術を叩き込んだ強者じいさんソイムを連れて魔女家に足を踏み入れ会談中の突発的に迫ってきた敵を不敵な笑みを浮かべながら返り討ちにする豪胆さ。ふと笑みをこぼしてしまう爽快感が2巻もあって魅力的。

貧困の惨状を目にしたいといった王女だがユーリから教えてもらった現実に打ちのめされ、口先だけであることを反省している。
ユーリにみせるデレがより前巻より際立っている印象。
この二人のやりとりは好き。好きな場面は、

「猫をかぶってるんです、こいつは」
「かぶってません、キャロル殿下」
「やめろ、鳥肌が立つ」

p86

「やっぱり、お前の瞳と同じ色をしてる。深く透き通った青だ。似合っているぞ」

p315

普段の会話のような流れで言い切るユーリ
王女殿下キャロルにとって1巻の最後と同じように、後々思い返す大切な思い出となるんだろう。

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