14歳とイラストレーター3 感想

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むらさき ゆきや(著/文)溝口 ケージ(イラスト | 企画/原案)
〇あらすじ〇
「イラストレーターにとってラノベは、成功したらデカイが確率の低い仕事なんだよ」大手レーベルから依頼を受けたイラストレーターの京橋悠斗だったが、姉の京橋彩華が「その仕事、お姉ちゃんがすることになったから」と言いだす。友人の錦は、ブラコンの彩華が弟の仕事を横取りするなんて、と裏を疑う。知人の編集者が語る噂とは!? 美人イラストレーターのナスさんは友人から「ユウトが好きなの?」と問われ、おおいに狼狽えていた。悩める14歳の乃木乃ノ香は、悠斗への気持ちを自覚することに。絶好調の神絵師ハラミが作業ネット生配信に大挑戦! 脱げと煽られて着ている服を!? 希望と現実、そして欲望に振り回される、イラストレーターのガチな日常の第3弾!

ネタバレを含む感想

励ましで終わらない、奮起の一言

乃ノ香が聖母様。イラストレーターの6段階のランク、ラノベ表紙イラストを描く上でのポイント、やるべき書店ごっこ等イラストレーター業界話は毎巻、1巻ごとに学んだ内容をリスト化してまとめるべきだと思いつつ、物語を通して業界の見識を深めていく話と抜きんでたキャラクターの魅力が光ってた話だった。つまり乃ノ香が聖母であると。自分のお願いでありながら悩んでいる悠斗を勝負の舞台に引っ張り上げる一筋の光明であり、誰かのためにのびのびと描くイラストってこんなにも見る者を魅了するのだと共感した。
初手は踊りながらエールを送り、次は打ちひしがれている悠斗にそっと寄り添い、ひとつだけわがままなお願いと言って、たった1人だけに向けたイラストを描いてほしいという。悠斗が乃ノ香発案の誕生日祝いの夕ご飯の約束を忘れて、彼女を長時間待たせたにもかかわらず、乃ノ香は悠斗の胸中を推し量って優しく、そしてただ励ましの言葉だけで終わらせず、彼が絵を描き始める力強い再起の言葉を贈ったのだと。

「……わたしは、ユウト先生が、たった1人に向けて描いたイラスト、見てみたいです。そんな風に伸び伸びと描いた絵を」
「乃ノ香ちゃんのために?」
「ダメですか?」

P173

ダメですか?とか狙って言ってないと思うんだけど、私ずっと待ってましたの展開から、お願い、ダメですかという抱擁とささやきによるこの流れから出る表舞台に引っ張り上げる含蓄のある言動が凄まじい。
たった1人に向けて~がたった1人のために書いた小説の展開で感動につながった『妹さえいればいい』を思い出した。人を突き動かす原動力が『人』なんだなあとしみじみ思うのだった。

物語で語られたイラストレーターのランクで最上位にいる彩華はずっと人のために描いてきたイラストレーターだった。とうとう放送で弟を紹介、溺愛ぶりを披露していた。実力をつけたところで彩華の弟として立ち位置が変わらなかったかつてのペンネームを捨て、新たなペンネームで活動していた悠斗は『ユウトはイラストレーター彩華の弟』であることを姉に許した。
積み上げて積み上げて自信がついた証なのが『彩華の弟』なのか。

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