ヴァンダル画廊街の奇跡 感想

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美奈川 護(著) 望月 朔 (イラスト)
〇あらすじ〇
人は誰もが、心の中に一枚の絵を持っている──。 統一された政府により、様々な芸術が規制を受け始めた世界。しかし、そんな世界各地の壁面に封印されたはずの名画が描き出される事件が起こる。 『 Der Kunst Ihre Freiheit! (芸術に、その自由を!)』 絵とともにそう書き残していく<アート・テロリスト>を、人々は敬意をこめて「破壊者(ヴァンダル)」と呼んだ。 政府を敵に回すという危険を冒してまで彼らが絵を描く理由とは。そして真の目的とは──? 第16回電撃小説大賞、<金賞>受賞作!

物語に踏み込んだ感想

「人は誰もが、心の中に一枚の絵を持っている」
最初に読む一文。自分の心の中にどんな絵があるんだろうと思いつつ手に取って読んでみた。
舞台は近未来で、現代にある絵が数々登場する。ゴッホの「ひまわり」やルーブル美術館にある有名な絵にこめられた思想が学べて、ルーブル美術館に行ってみたいと思ったし、ただただ美しいと思っていた芸術に趣を感じられる味わい深い作品だった。
作者の美奈川先生の芸術への造詣の深さくる描写が秀逸な印象を度々抱いた。
「あ、うまい」と読みながら直感することが。美術作品の描写が上手なもんですから物語の情景描写も巧みな言葉選びをされているなーと思うことが多かった。表現するとき、作者の中には一枚の絵があり、絵の美しさを文に落とし込んでいるような。
絵とは別に好きなフレーズが

結局自分はプロヴァンスの色から逃れられなかった。閉じ続けてきた箱の中身は、アルルへと戻る片道切符だったのだ。

p126

前半、芸術の規制によって人生が左右された人物の物語が描かれ、始めのキーとなる言葉を結びの言葉としてい展開は印象深く、小説の魅力だと改めて思った。
戦場で育ち、戦場でしか生きられないサイボークとなった主人公の協力者、ハルクの過去編の最後の方の一文も好き↓

たが、不要となった配船(ルビでハルク)はどこへ行けばいい?

p212

芸術の規制で何かをあきらめたり、規制が近因となって起きた悲劇によって大切なものに蓋をしてしまったりする人に焦点を当てた人生の話。主人公とその周りの人物の初めての邂逅を含めた深い過去編の話があることで隠された真相に興味が沸きつつ、今動いているテロリストたちの思いに共感の連続で没入感が高かった。味読だった。
警視と警部補の話もごもっともで、どちらの正義が正しいのか?政府を統一し、争いの火種を生む芸術を規制することで成り立つ世界は本当の平和といえるのか?仮初の平和なのか?
と動向が気になってどんどん読めるのでよかった。テロリストたちがもたらす影響を間近で見て、声を聴いて警部補の考えが変容していく過程も印象に残るところ。
芸術が規制された近未来の舞台で抗うテロリストたちの物語!
政府が統一される前も後も、見上げた青空の美しさは変わらない。
人は誰もが、心の中に一枚の絵を持っている。
読後、絵に込められた熱意に魅せられる。

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