神様のメモ帳 4

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杉井 光(著) 岸田メル (イラスト)
〇あらすじ〇
あの男が戻ってきた-四代目率いる不良少年チーム・平坂組の、もう一人の創設者、平坂。折しも四代目は音楽イベントの運営に乗り出し、夏休み中の僕もその手伝いに駆り出される。しかし平坂の指示で動く不良たちが次々に妨害工作をしかけ、やがて平坂組との全面対決に突入する。四代目は平坂との間になにがあったのかも語らず、僕らの協力を突っぱね、かつての友とひとりで戦おうとする。「四代目は間違っている。ぼくは今、探偵の禁を犯す」-ニート探偵アリスがえぐり出す、五年前の悲劇の真実とは?白熱のニートティーン・ストーリー、第4弾。

物語に踏み込んだ感想

生きてさえ、いれば。
死んでしまったら、生きていれば選べた道が潰えてしまう。そんな当然なことを噛みしめて、苦みと読後の澄んだ空気感をも飲み込んで、物語に何回か出てくる冒頭の一文に込められた思いに胸を焦がした。
無知によって保たれていた平穏を壊すのだとしても、知るということ。知ることは死ぬことだというアリス言葉が響く。
鳴海は口先だけの自分に、無力な自分に、分かっていたつもりの自分に怒りの矛先を向けて打ちひしがれていた。文中に自身が脆くなったっていうけど、それはアリスや平坂組、ニートたちに対して感情が豊かになっているというか、親しみを覚えているところからくるものだと思う。そしてアリスが背負う重荷の5%から肩代わりしたいと思っている少年の熱のこもった行動力は毎巻かっこいいんだけど今巻はしびれた。
ボスがやられて怒気に染まっている連中に気づかせ、束ねるところ。自分はひいたほうがいいんじゃないかという引き気味の1巻~あたりから今度はひけるわけがないと、かつて生じた悩みがない。薬物の事件、マネーロンダリング、真相に辿り着くために賭け事をして元ボクサーと拳を交えた気概等、積み重ねから鳴海の男気に磨きがかかっているところがかっこいい。そして鳴海の熱の素になった一人称で内にこぼす後悔や自虐、苛みが丁寧に掘り下げられているので、動かず立ち止まっていてもどれも印象深くなる感じ。弱まった心からくるアリスへの言の葉、アリスの男女間の無頓着からくる鳴海への気遣い。周りの危なげなくも頼りになれる仲間達。みんなの拠り所となる居場所があるっていいな、その居場所をいつか帰ってくる人のために守っているところもしみじみいいなと思った。居場所についてストーリー上哀愁ただようところを、優しく温かな場所のように何度か表現していたところは、かつての輝かしい思い出の時間を想像上で想起させてくれて良かった。それらはあとがきで触れていたテーマに結び付く。
悲嘆していても自分に課せられた仕事を最後までやり遂げた男が平坂組創設者2人の間に立ち、知ることは死ぬことだと承知の上で平穏を守り切るかっこいい話だった。

鳴海には言葉という武器を持って戦っていたように思う。そして言葉が剣となりうることを告げる前のアリスの印象的な一言

「想いの中でだけなら、矛盾するものが同居さえできる。それが現実にそのまま写し取られたとき、どんな歪みと痛みを生み出すのかを、ぼくは知っている。きみだって、そうだった。彩夏がなにも告げずにこの世界から去ろうとしたとき、その想いだけに漠然と触れていたきみはどうなった?」

P199

最後の真相を本人の前に告げる前に鳴海に言わなかったアリス。アリスの抱えてるものを共にもってあげたいと思った鳴海は、まだ彼女の5%の重荷さえ背負えなていないことを悟ったところから、どのような探偵助手となっていくのか。3巻で一区切りのつもりだった神様のメモ帳が9巻で完結しているだけに今後の動向に期待を寄せるばかり。

ところで、P44の鳴海が平坂に言った、生きてれば・・・は彩夏とのことを指しているのかなと思った。
生きていれば再生できるということを。

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