神様のメモ帳6 感想

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杉井 光(著) 岸田メル(イラスト)
〇あらすじ〇
高校の文化祭が押し迫る晩秋、ラーメンはなまるにやってきたのは、チャイナマフィアの後継者兄妹。なんとミンさんの親戚だという。ミン父・花田勝の引き起こした事件をきっかけに、なぜか持ち上がるミンさんの縁談。それに憤然と立ち上がったのは、ヒロさんだった。「おれからの依頼。この婚約、ぶっ壊してくれ」ヒモのくせして、ついにミンさんに本気!二転三転の結婚騒動を描いた「電撃文庫MAGAZINE」掲載作に、ヒロさんの師匠初登場の書き下ろし短編『ジゴロ先生、最後の授業』を加えた、大ボリュームのニートティーン・ストーリー第6弾。

物語に踏み込んだ感想

ナルミの独白「あんたは、それで幸せだったのか?」

紛れもなく、花田勝という現ラーメン店主の父親の物語だ。そして愛される居心地がいいラーメン屋を守る総力戦が描かれる物語だ。口絵で紹介され文中ではナルミ達に相見えず電話越しの存在で終わってしまったのに、その男の生き様をまざまざと刻み付けていくかのような痛烈な物語だった。
そうか、そのための短編集というか。短編集で決めていたセリフを最後に言って帰結させる展開の儚さと清々しさといったら形容しがたい読後感だった。そしてミンさん知っていたなんて・・・〇〇の菓子とは韻の踏み方が最後の展開にはぴったりで、だけど胸中ではナルミに自己を投影して、地の文の、いや、待てよアリス、おかしい、おかしいよそれは からのアリスが告げる真実にナルミが待てよ!と言った時、心でも言ってた。ほんとに待ってよって。それでミンさんは悟っていて今日もアイスを食べにきた客にラーメンを出しているんだよね。
それを見たアリスが、いつも麺とチャーシューと卵抜きのネギラーメンを頼むアリスがその日は舌が焼けるくらいのラーメンが食べたいと言った時には二重の余韻から三重へと移ろって言葉を失うようで万感こみあげる思いがあった。久々のお気に入り作品となった。

今回の相手は日本のヤクザが慈善団体に見えるほどの中国マフィア。
ナルミといえば巷では尾ヒレがつけまくって、ヤグザをボコボコにして退散させたと広まっていて出会い頭で執拗に目をつけられている。そして潜む危険性もどんどん大きくなって命にかかわる局面ではゾッとさせられた。
もう彼は学校の中では一介の高校生でも、一歩学校圏内から抜けだしたら本中で語られる通りの人物像になっているように本当に思わないでもない。対してアリスの心配事は膨れるばかり。アリスへの心配のベクトルがぱっと見あっているようでズームすると少しずれているようなのでアリスも大変そうだ。だけど今までのやりとりで少しずつ、アリスがつくった牙城はいい方向に解体にかかっているのかもしれない。前巻あたりから2人の踏み込んだ内容が散見されて一室にひきこもっているアリスが少しずつ小さな一歩を踏んでいる感じがする。

周囲に、あまりにも気安い人々が集まっているものだから、ときおり忘れそうになる。この不思議な少女が、羊膜みたいな触れがたい孤独に包まれて生きているということ。

P173

ニート同士は重荷を抱えていて、互いに抱えているものに触れようとせず、落っことしそうになったら支えてあげるような関係だ。新参者のナルミは、依頼がないから動けないのか?、ただ身内が困っているんだから助けたいと思うんじゃないのか?と自問するところはまだニート集団に染まっていない彼の心の表れだろう。このニート集団においてナルミの存在が新参者でありながら何か特効薬のような働きがあるのではないかと思う。

「ぼくらニートは、あまりにも慣れすぎている。なにをすればわからない状態に。それから、なにをすればいいのか決めつけてしまった状態にもね。ハンドルのない車にだってバックミラーは必要なんだよ」

P88-90

表現うま・・・・。
あとヤグザがつけたラーメン名もきまってて笑った。
「ウェディングラーメンいっちょう!」

間のナルミへの誕生日祝いのクラッカーは重めな話なだけにほっこりさせられた。
ナルミには居場所があり、再び打開できるギリギリのところで、彼の英断によってみんなの居場所でありラーメンやアイスを食べにくる客が訪れる父が残したラーメン屋を守ったのだ。


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