神様のメモ帳7 感想

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杉井 光(著) 岸田メル(イラスト)
〇あらすじ〇
クリスマスが近づき、探偵事務所のそばにあるホームレス公園の改装工事が始まろうとしていた。そんなある日、事務所にやってきた依頼客は、なんと売り出し中のアイドル歌手。子供の頃に失踪した父親そっくりのホームレスをその公園で見かけたのだという。父親捜しの過程で浮かび上がる、エアガンで武装したホームレス狩り集団。そして、なぜか探偵団を離脱する少佐。「これは自分ひとりでかたをつける」やがて-事件が起きる。僕が探偵助手として体験した中で、最も奇怪なあの事件が…戦慄のニートティーン・ストーリー、第7弾。

物語に踏み込んだ感想

たった1つの冴えたやりかた

こんなのってあんまりだよ!と2巻続けて、それで本巻は中盤あたりで心打たれるれることになるとは。
たった1つの冴えたやりかた。
その結末はあまりにも悲しくて優しくて玲瓏なお話だった。残酷な仕打ちから始まっても最後の結末に残酷なんて言葉はつけない。だって残酷を、アリスが墓から掘り起こして代弁した「たった1つの冴えたやり方」が塗り替えてくれたから。あとがきであるように今までと毛色が異なる警察沙汰の事件だった。警察じゃ死者の想いを代弁なんてできなくて、死者の想いを言葉にして伝えられるアリスだからこそ、依頼者が受け取るべき真実と死者の想いを届けることができた。アリスは犯人に興味がなく、依頼を受けて真実と死者が残した言葉を求めることに徹底している。時に冷酷な真実を調査の過程と、仕事の成果の時に依頼者に言うことはある。だが、最後に依頼者の悲痛な叫びという返り血を浴びるのは喪服をきたアリスだけ。
墓荒らしと表現していたが、アリスは優しく残された想いを紐解いているところに温かさがある。
失われてしまったものに対して何かなし得るのは作家と探偵のみでアリスは探偵を選んで、ずっと前に決めた覚悟が一貫してあるんだと思った。
だけど後味の苦さが読後感に同居してる。父親は娘といて、娘は父親といなかったなんて・・・死がつきまとう親子の物語を2巻連続で読んでいるだけに、痛痒を感じるとともにアリスが代弁した死者の想いが優しく冴えさえとしている感じ。

四角く切り取られた光の世界から求める声により再始動する展開は、熱がこみ上げて途中からひきずっていたやりきれなさと混じりあって物語にひきつけられていた。ミステリーで終わらせず毎巻心動かすメッセージ性があるところと、寂寥感があるところ、死者の心中はどうだったんだろうと思いを馳せずにはいられない感じ、印象に残る比喩の上手さが噛み合って「神様のメモ帳」たらしめている。

そしてナルミ。四代目がナルミの立ち位置を言葉にしていた。

「おまえは俺とちがう。アリスたちニート共とも決定的にちがう。平気で他人の中にずかずか踏み込む。そういう無神経な人間が、一人は必要だ」

P196

ニートたちの在り方をみて、こういうものなのかと腑に落ちることなく疑問をもっているところが染まることを知らない必要な人財なんだな。

ねえ、アリス、きみだってほんとうは探偵に向いていないんじゃないのか。僕は声に出さずに問いかける。だって、答えを手にしたきみはいつも萎れてしまいそうなくらい哀しげだ。仕事をやり遂げたきみがたどり着くのは、いつも乾ききった砂漠だ。それでもきみは立ち止まらない。真実とかいう蜃気楼に向かって歩き続ける。

P235

完結巻まであと2巻となった。そんな人財が最後に何の答えを見出し、あるいはどんな想いをかたちにするのだろう。

神様のメモ帳は事件と絡めて登場人物たち一人ひとりを過去も含めて掘り下げてくれている。本巻は、少佐。
最後はアリスか・・・。親族が出てくる話があって少し事情は今までに明かされている。

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