ハル遠カラジ2

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遍 柳一(著/文)白味噌(イラスト)
〇あらすじ〇
人口知能特有の精神疾患AIMD。その治療を専門とする医工師を求め、テスタたちは冬のチベットを訪れていた。イリナと触れ合う中で、徐々に人間世界への興味を抱くハル。そんな主人のために、社会見学と称して、皆で難民街の廃校へと立ち入る。だが、そこでテスタは奇妙な手紙を見つける。『贖えない罪を犯してなお、生きる意味はあるのだろうか』。遺書ともとれるその手紙には、なんと十一年前の人類消失をも予期する言葉が綴られていた。やがてこの地で起きた悲劇を知った時、テスタは思いがけぬ人物との邂逅を果たすことになる。

物語に踏み込んだ感想

見誤ってはいけないのは知ってる。だけど、向き合うことが愛情だ

涙が滲んだ。いつ以来だろう。こんなにも涙がこみ上げる読書体験は最高なんだということを実感させてくれる。人とロボットが命に、己が心に向き合う物語。そういう物語が『ハル遠カラジ』だった。
あらすじでいう「思いがけぬ人物との邂逅」のところなんだけど、核心に迫ることは書かずただ、この読み終わった後の、静かに燃え続ける熾火のような熱さからくる思いを言葉にして並べていくだけ。
感情的になるところをぐっと呑み込んでテスタの心中を推し量ってのアニラの一度目の「見誤ってはいけない」では冷静だった。だけど二度目の「見誤ってはいけない」ではその人物に向き合うことになるんだよね。そこのところのテスタの吐露は揺さぶられてしまうよ。二度目ってところがたまらない。一度踏みとどまったはずなのに、自身が問いかけてハルが返した言葉に、沁み込んだ先に見出した返したい、向き合いたいという答えの帰着がただ感傷に浸ってしまうし美しい。1巻での後悔と、成長したハルの言葉も相まって感涙だった。

この街に潜入する際に、私自身がハルに言った言葉であるはずなのに、それを彼女の口から聞くことで、抑えていた自分の感情が止めどなく溢れていくのが分かった。

P333

テスタや周りのハルへの教えは決して一方通行じゃない。教えている側もまた、子どもから教えられているのだ。
と、邂逅してからもまた、感動の物語は戦闘中も終わった後も続いていく。終わり間際の表情と言葉が余韻に残る読後感をもたらしてくれた。その表情は二人分。その人物とハルだ。
中盤の物語で人の幸せが自分の幸せにつながることを体感したハルは、覆しようがない現実の悲しみを感じ入り、それを機械では生み出せない形で表現していた。中盤での嬉しさをこらえきれない顔と、終盤での悲嘆に暮れる顔。粗野で野性味のあった少女は、こんなにも落差がある悲喜の顔をみせてくれた。

精神が擦り切れようと主人との最後の約束を守り続ける

介護用アンドロイドのアニラとその主人のリン、娘のアリン、難民街の子どものたちの過去話は重く、ぐさぐさくるものがあった。見たこと、嗅いだことを生々しく描いてくれることが、その場の空気感をよりよく伝えてくれるようでよかった。最後の約束を守り続けることに至るまでの50P程の物語。いやあ、十分な掘り下げだよーなんて後から思うものでなく、その辛い過去話に浸っていたので感覚的に十二分な物語だった。こういう体験っていいなと思う。ここが、中学生くらいの少女の容姿であるアンドロイドの歯に衣着せぬ物言いが中々ツボだったりした。そんなストレートな姿勢はテスタやハルたちとの旅路で度々見られて、同じ心根が優しいイリナとは違うハルとのかけあいが楽しい。
雑務を人の代わりに担ってくれる機械が進化していくにつれて簡単には片づけられない判断も委ねてしまうことから歪みが生じていく。そして何か事が起これば機械に責任転嫁する姿勢が人の醜さを写し取っていた。問われる責任の所在というものを感じさせた。人は保身に走ってすぐ逃げるという言及は片腹痛かった。
リンとアリンはあまりにも報われなかったなって。アニラが傍にいてくれる幸せよりも憐憫な印象が残り続ける。そして生きるために縋っていた約束を終えたアニラの、自分の今後について考え抜いて出した本音が勇ましい。責任を背負い今後も向き合い続けて、~のために生きていく姿勢が。

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