ぼくたちのリメイク8 橋場恭也 感想

Amazon  BOOK☆WALKER

木緒 なち(著/文)えれっと(イラスト)
〇あらすじ〇
僕、橋場恭也。大中芸術大学、映像学科の2回生。かつては十年後の世界でゲームディレクターをしていたが、もう一度、人生を作り直すチャンスをもらい、憧れの芸大に進学。課題制作に追われながらも日々が楽しかった。そして二年が経ち、いずれプラチナ世代と呼ばれるであろう皆が頭角を現し始め、僕は立ち止まる。どうやら、改めて自分自身を、これからのことを考える時が来たみたいだ。加納先生の提案を受けて、僕はとあるゲーム会社でバイトを始めることに。自分にしかできない“何か”を見つけるための第一歩を踏み出した――。いま何かを頑張っているあなたの為にある青春作り直しストーリー、それぞれの岐路に立つ第8巻。

未来で伸びていく新たな動画の形を生かした制作発表を終え、気忙しい日々から一段落かと思ったら、仲間たちはそれぞれの道で才能を開花させつつあった。才能に限らず、後にプラチナ世代と謳われる面々が各々の分野で日夜努力してきた物語は既刊で語られている。主人公、橋場恭也は動画制作で奔走していた制作進行という手綱を握っていた立場から、ひとり残され、他のみんなのように進みたい業界に深く傾倒できるよう自分の今後に向き合っていた。元いた世界の自分にならないよう、大学で学んだこと、競い合って一緒に創作した得難い経験を糧にして、自分のやりたいことを掴もうとする物語が始まる。8巻は、自身に問いかけ、動き出す彼の物語だった。
が、

物語に踏み込んだ感想

彼の戦場はぼくたちのリメイクβだ

書名が『ぼくたちのリメイク8 橋場恭也』だと知ったとき、彼の物語なのだから表紙は主人公が飾るものだと思っていた。だが違った。彼は自分の名を残すだけだった。10年前に戻らない『ぼくたちのリメイクβ』が彼の戦場だからこそβ1、2ともに表紙を飾っている。そして思うことは10年前に戻ろうと、戻らずともプラチナ世代という呼び名はどちらの世界でも浸透していそう。本編では今のところ各々が主体的に動いて躍起になっている。主人公が戻らなかった世界でも後のプラチナ世代は、主人公を抜きにしたグループで苦楽を共にし、喧嘩したり励ましあったりして創作に打ち込み、青春を謳歌していたのではないかと思う。九路田もいるし。
かえって干渉しすぎて未来の有名なライトノベル作家をつぶしかねない事態になってしまった。これでは物語を否定しているようだと傍から見えるかもしれないが、そうではなくて橋場の立ち位置を振り返って疑問に思ったまで。
過去に戻って本編では自分の創作の無力さを自覚した上で、一緒にゲーム創りに携わることができるプロデューサーを志望した。今まで未来で輝くはずだったクリエイターを失わないよう動きつつ、みんなで協力して取り組む課題制作を終えたら、新キャラたちと(βの常務がいるけど)、他人の企画の実現に向けて動く…?それでシノアキが気になるような〆か・・・と。企業が学生たちの斬新な企画を募集して、選考が通って採用された橋場チームが総力をあげてゲーム創りに取り組むならわかる。物語がつながっている感じがする。シナリオ、イラストレーター、歌、プロデューサーはそろってるから企業による開発エンジンなどの環境のバックアップがあればノベルゲームとかできそう?業界を軽んじていると捉えかねない書き方になってしまった。
新キャラたちと他人の企画で動き出すことに疑問を覚えただけ。
よって、彼の本当の戦場はぼくたちのリメイクβだ。
幸せなのは4巻のシノアキと結婚して父となり、「開発したエンジンですが、使い物にならないので捨てましょう」と啖呵を切れるほどのポジションと自信を獲得している世界。

味わい深い作品を求める人に

硬派戦記「烙印の紋章」「レオ・アッティール伝」を手掛けてきたの著者の新シリーズ。

タイトルで想起される軽やかな筆致の物語ではない。
じんわり温まる小説や心揺さぶられる小説、熱い小説に読んでいれば幾度出会うことはあれど、はじめから最後まで味読ができた上で上記のどれかの小説たり得るものは、電撃文庫でデビューして20年活躍している杉原智則先生の小説が筆頭に挙げられる。面白いシーンで楽しませることも大事だけど小説の本質は、読ませる文章で深い没入感があり、味わい深く読める小説であると思う。物語を形作るのは文章だから。面白い上に味読ができれば、最高な小説に化ける。というのは杉原先生の本を手に取ってパラパラめくれば直感で全体的に文章がぎっしり詰まっていると分かる。とにかく読ませる文章と()のキャラの心の声によるテンポが堪らない。笑みをこぼしたり、ぐんぐんのめり込んだり、ドン!と考えさせられる心境に陥ったりと地の文の多さが魅力にしか映らない小説。会話の勢いでごまかさず、紛れもなく地の文で形作る物語で勝負している小説。
物語は、英雄の1人が災厄を阻止した平定後、敗戦国に立って目のあたりにした事実から自身の正義に問いかけ、悩み、虚飾に満ちた真実にメスを入れる物語。現地に立ってみて体感することは、真実は事実を曇らせるということ。読者の現代に通底するテーマがあり、現実に影響を及ぼす力があるライトノベル。
イラストレーターをかえた2年ぶりの続刊に、作品を追っていた多くの読者が歓声を上げた。

少しでも気になったら、1巻の熱いAmazonレビューの数々をご一読ください!
3巻は2年ぶりの続刊であるにもかかわらず1巻よりも星の数が多いのでファンの方々がどれだけ切望されていたか伝わってくるかのようです。著者はブログやTwitterをやっておらず宣伝は発売時の公式アナウンスだけなので多くの口コミが集まるのはうれしい限り。


スポンサーリンク