竜歌の巫女と二度目の誓い 感想

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アマサカナタ(著/文)KeG(イラスト)
〇あらすじ〇
「私を守ってくださいますか?」
かつて幼き騎士ギルバートと誓った約束は呪いへと変わり、竜歌の巫女は名もなき少女となり再びこの地に生を受けた。
少年に裏切られ、全てを呪いながら生涯を終えたこの世界。十二年の月日が経ち、生まれ変わった少女は奴隷として売られそうになっているところ、青年となった騎士ギルバートに拾われる……それは彼女にとって望まぬ再会。ルゼという名前を与えられ、やがて始まった彼の屋敷でのメイド生活。新鮮な日々、暖かい人たちとの触れ合いと久々に訪れた優しい時間は止まっていたルゼの時間をゆっくりと動かし――。
 世界を呪った少女と英雄となった騎士。誓い合った二人が、輪廻を超えて再び巡り合う再会と約束の物語。

物語に踏み込んだ感想

その情感の深さは

竜に祝福を歌う竜歌の巫女は何も知らず罪はないが、悪政に反旗を翻す革命にただ血統により巻き込まれ、騎士と交わした自分を守ってくれる誓いは果たされず命を落とした。気づいたらスラム街の少女へと生まれ変わり、かつての騎士と再会して物語は始まる。
たとえ巫女に罪はなくても、民の窮状と多くの死を招いた一族と血がつながっている以上、裁きの対象にならなければ示しがつかず民の怨念は晴れることがない。そのために民に少しでも納得してもらうよう恨みの対象となる者を公開処刑しなければならなかった。
守ると約束できるほどの騎士であることは、同時に国のために慈悲なき選択をしなければならない立場でもある。階級が上位であるほど。子どもといえどどれほどの苦渋の決断だったかは後に語られることになる。

「再会」というのは物語でいえばある程度話が進んだ後、大なり小なり事を終えて別れた相手と再び相まみえる重要なシーンで、自然と込み上げる感情があると思う。本作では再会が物語の幕明けとなっていた。間間に巫女の一人称で過去を語るシーンがあるけど、本編の主要人物の感情に結び付くとても短い話で終始終わっていて残念だった。人と竜の歴史は長いとあったがどんな歴史があったのか、騎士ギルバートが長い歳月苛み続けた痛み、オズワルドの決意の重さ、死を招いた悪政の詳しい内容、そして大事なのがどれほどの思い入れがあって騎士ギルバードは巫女に誓ったのか気になった。暗い話は好きな方だが、どんな経緯で陰りを帯びるようになったのかが詳しくなく、事実と、その事実から抱いた感情の羅列で暗い話を取り繕っているようでいまいち没頭することができず、ひたすらへーへーボタンを連発する感じだった。約束したのにーーー、嘘つきーーーと何度か出てくるので巫女は信を置いていたんだろう。巫女をとらずに民を選んだ騎士ギルバートは長い歳月苛んできたのだろう。と、「だろう」と感じてしまう。物語の重要な要素として「誓い」を挙げるならその誓いの重みが感じられるような巫女とギルバートのエピソードを、当時の世界観の説明と民の生活の描写も入れて50~60ページほど展開してほしかった。オズワルドの様変わりには拍子抜けだった。その程度の情動だったのかと。
どこか遠い目でキャラ達が精算していく様子を眺めている気分で、暗い話に光明が差す感動的な物語の流れなのに、上記のような感想しか出てこず感じ入ることができなかった自分自身が悔しい。
さらに畳みかけるかのように、6~7回くらい変換ミスと脱字があって残念。それだけで物語に浸ることを阻害してくる。使い方はまちがってないけど字面の観点から重言で避けてほしい「違和感を感じる」とか。
「希い」が「恋願い」と表現されてたのは、「ああ…」いいシーンだったから悔やまれる。
本作の強みは1巻で消化できたと感じたので1巻で完結と捉えたいと思います。

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