リビルドワールドIII〈下〉 賞金首討伐の誘い 感想

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ナフセ(著/文)吟(イラスト)わいっしゅ(イラスト)cell(メカニックデザイン)
〇あらすじ〇
アキラが発見したヨノズカ駅遺跡の奥から現れた超大型のモンスター達――過合成スネーク、タンクランチュラ、多連装砲マイマイ、そしてビッグウォーカーは、その余りの強さにハンターオフィスから賞金首に認定される。
 規格外モンスターの討伐のため、集結する精鋭ハンター達。その中にはアキラ、そしてカツヤの姿もあった!
 書籍版オリジナル展開で贈る、大規模モンスター連続討伐ミッション! 書き下ろしエピソード「運の問題」も収録!!

物語に踏み込んだ感想

頼む、生き延びてカツヤをまた殴ってくれ

アキラが見つけ出した未発見の遺跡は、想定をこえて多くの死者を出し、モンスターの巣窟と化し、賞金首に指定されるほど討伐が切望される変異種が生まれたりと、大いに物語を盛り上げる起点となった。自分には運がないから・・・と誰かが討伐してくれることを期待して賞金首がいないエリアの依頼を受けて時間をつぶすアキラだったが、同じことを考えているハンターが多く、仕事が少なくリターンが乏しい。
そこで徒党ドランカムの上位ハンター、シカラベからハンターオフィスを介さない個人契約でアキラは雇われることになり賞金首の討伐に1回にとどまらず数回向かうことになる本巻。

過合成スネーク戦では、読んでて胸が張り裂けそうになった。レーザー砲を再度使用できるか確認に向かったユミナが、2度目の使用ができることを確認できたが、照準の役割を担う車体が大破してしまったので固定砲台となり、1人、狙いの賞金首が近づいて制御スイッチを起動できるまで持ちこたえなければならなかった場面。アキラとカツヤがいがみあいながらも2人で囮となって過合成スネークの注意をひきつけていたが、ユミナがレーザー砲を起動したところ、それを最優先と定めた賞金首がユミナに襲いかかる
事情をカツヤから聞いたユミナは、自分が一人であり、過合成スネークが一直線に向かってきており、周りからも別のモンスターが殺到してきていることに気づく。そこで彼女はーーー

通信を切ったユミナが装甲車の中で溜め息を吐く。そして浮かべていた苦笑を明るい笑顔に無理矢理変えて意気を高めた。

P260

・・・え?ユミナ!? ムリムリムリムリムリ!不穏な予兆しか感じない。自分の状況を悟って無理矢理笑顔にかえるところがユミナらしいんだけど、最悪の未来を想像させられて心が叫んでたわ。
一番押してるヒロインなだけに。主人公と関わりの深いシェリルやエレナ、サラが人気でドランカムのカツヤの一番の理解者であるユミナは読者のランキングではどの位置か分からないけど、自分にとってはユミナであることが前巻で確定となった。早々揺るがないだろう。前巻の感想で書いたことは記憶に新しい。


本巻では、神がかり的な動きが数回出てくる。そう本巻で表現しているように色々度外視した動きが見られる。
過合成スネーク戦でも、最初のタンクランチュラ戦でも見られたが、遠隔操作で車を運転して、スビートを上げて敵の攻撃を避け続け、激しく揺れる車体に必死につかまるどころか精密な重心制御で立ち、銃を構えて正確な狙いで銃撃を続けられるハンターってなんだよ。アキラだ。傍から見たら人外な動きなんだけどアルファのサポートがえぐい。それだけじゃなく、空中に放り出された車体と散らばる岩々がある中、宙の岩にタイヤのグリップを効かせて運転をして放物線を描いた後見事着地する車体ってなんだよ。アルファが運転する車だよ。
他に車体を2回転させながらアキラが銃撃で囲んだ敵を一掃する展開もあったけど。隣の子は放り出されないようつかまることに必死だったけど。

上記のようにひりつく感情や、疾走感ある展開による胸の高鳴りが大いにあり、激しく読者を揺さぶってきて最高だった。主に「動」のところを書いたけど、「静」のところでは交渉中の互いの思惑が毎度健在で読み入る。シェリルに気づかされたカツヤの踏ん切りも実践につながって、あの切り替えには笑ってしまった。
うじうじ悩んでいたイメージがあったカツヤだったが最後にはどこまでも峻険な道のりを歩み、毎度姿が勇ましく映る。カツヤの成長の話でもあった。

アキラも技術的な向上の他に、アルファに頼りすぎていたことを危険な状況に陥って再認識していた。そこは自身を嘲笑いながら狂気的な様相で危機を潜り抜けたところが痛快だった。
書き下ろしエピソード「運の問題」では、手に入れた強さと名声はアルファとの出会いが大前提にあるとアキラが振り返る回
運の後に研鑽を積み重ね、覚悟をもって死線を潜り抜け勢いよく成長しているアキラだ。
自分の腕だけでモンスターを倒す描写もあり、成長を実感している。アルファのサポートが自身の強みであり、そこに無意識に頼りすぎてはならないと改めて身をもって実感した本巻なので、今後のアキラの方向性が変わっていくのか。

大人数で挑んだ賞金首をソロか少ない人数で倒せるハンターが東側にはごろごろいるという。
未発見の遺跡や旧世界の文明、ハンターのレベルと、横にも縦にも広がりに満ちたこの物語は春に続刊がでる知らせがあったのでうれしい。

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