ハル遠カラジ3 感想

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遍 柳一(著/文)白味噌(イラスト)
〇あらすじ〇
成都を発って以降、なぜだかひとり物思いに耽ることが多くなったハル。テスタがハルの様子を気に掛けるなか、一行は家屋の下敷きとなっていた一人の女性アンドロイドを救う。ローゼと名乗るそのAIは、想いを寄せる人間に会うため、遥かアフリカよりひとり中国までやってきたというのだが・・・。ローゼの想い人に隠された秘密。アニラの恩返しと、はじめてのおつかい作戦。頬傷のある白髪の少女との邂逅。そして、旅の果てに待ち受けていた逃れられない必然に、テスタとハルは、自分たちが信じた答えを見失っていく。

ネタバレあるかも

人間をしるほど過去の自分を顧みて思い悩む少女と、自分の望みが先行して人にすることの真の意味を理解できていなかったロボット

この森で一生を終えるのが、後にハルと名付ける少女にとっての幸福なのだろうか?
機械特有の精神疾患を抱えたことで線戦を離脱して訓練施設へと送られ、最後に誰かの役に立ちたいと思っていたテスタは、森の中で命が完結していた少女に出会い、幸せな人間になってほしいと言葉を与えた。人類の多くが突然消失した終末の世界で、超能力を繰り出す白髪の少女、かつての友との望まぬ戦いを経たテスタは、改めて責任をもって娘ハルを育てていくはずだった。1~3巻の前半を追っていくと分かるように少しずつ野蛮なハルが人の温情を獲得していき粗野な面が少なくなってきて、かつての生きのびるための"自分のため"から"人のため"に行動するようになってきた。だが、言葉を学び、人の温かさ、命の重みを少しずつ着実に理解していくほど、過去の自分と向き合わざるを得なくなるハルの心境はいかほどか。その手は洗っても落ちないほど汚れてしまっている。ハルに同行する誰1人さえ理解できず、医工師のウシャルが感づいていた。いや、もしかしたら今は亡きヴェイロンはこうなることが分かっていたのかもしれない。

「テスタ。たったひとつの命であっても、最後まで守り切ると言うのは容易なことではない。ましてや、それを育てるという行為がいったい何を意味するのか、あなたは絶えず考え続けなければならない。これはほかでもない、あなた自身がした選択なのだからーーー」

ハル遠カラジ1巻 P290~

物思いに耽っていたハルがとうとう告げた10ページほどにも及ぶ語りは、今までの彼女では想像できないくらい流暢で、その分考えに考え抜いて整理しながら吐き出したもので痛切に耳朶に響いてきた。テスタの心中ももちろんだが、ハルの成長を追ってきた読者視点でも感じ入るように読み込んでしまう。「うん…うん」って。
向き合っているようで迷走してきた2人が最後に迎えた結末からの4巻へは期待が高まる。前半でアニラ視点による硬質な描写の中に歯に衣着せぬチクチクしたコメディ要素が面白い話とローゼの話から見えてくるハルの溢れてきた人間味。その分だけ感じ入るラストだった。

ーーー善に至る道は、悪でしか実現しない。だから、悪魔には私たちがなろうーーー
テスタがかつて見たテロ予告メッセージと『協定世界時、十一月三日九時』という日時
悪魔とは何を指していたのか1つのヒントが明かされた巻。
この世界だからこそ、人がもつ言葉は嘘であり、本物たり得ないことを得心させる凄みのある文章に圧倒。
背景から目に見える現実に迫る描写まで、遍柳一先生の文才により現実と地続きのとても深い物語を噛み締めることができる。それは1巻で感化されていたことだけど。1巻のあとがきであった出す予定であった作品も世に出たら著者買いしたい。

遍 柳一(著) 白味噌(イラスト) ガガガ文庫 2019年8月26日
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