ハル遠カラジ4 感想

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遍 柳一(著)白味噌(イラスト)
〇あらすじ〇
ライドーに連れ去られたハルの行方を追い、極東のウラジオストクに到着したテスタたち。そこでは生き残った人類たちが貧困に苦しみながらも、地下に街を築いて生活していた。ハルや故障したアニラのために、表向きは地下住人に従うテスタ。しかし突如襲来した白髪によって、地下全体に漂う不穏を知ることに。さらには、人間を消失させたバベルの真の目的に期せずして近づいていく。やがて果たされるハルとの邂逅を経て、テスタは最後の決断を下す。獣だった娘と、病を患った軍用ロボットの親子の旅路は、ついに終着を迎える。

ネタバレあるかも

終末世界で最後まで軍用兵器が母親であろうとし、母親であり続けた物語

銀の一滴。テスタ越しに見える描写が全体的に巧みで、情味があって流麗で・・・魅せられる文なので様々な場面において先が気になる面白さに加えて、味読ができる。味読こそ小説の真髄であると思わせてくれる。「~銀の一滴」の一文に震えと感動
物語の面白さはもちろんのこと、なにより編柳一という作家が紡ぐ文の組み立てが好き。流れる日本語の美しさを感じさせた筆致だった。すごいわ。アニラの人柄から写し出された彼女の視点も最後にあってふと笑みをこぼしてしまう。ああ…アニラらしい描写だなと思えた上で2巻~4巻であれだけ長文で読者を面白くさせてくれるのもいいな。
物語は、白髪の背景が明かされてテスタとハルの酷な再会から最後の展開まで、どのシーンも文章により興趣が尽きない感極まってしまう(それに近い)ものだった。最終巻だから積もった関係、話が結実を迎えたり、並々ならぬ決意に込めた想いが伝わってきたりととても濃い430ページくらいの物語

言葉は嘘でありかりそめのもの。だからイノセンスは「ヒト」を「人間」にしようとした。皮肉にも悪魔の論文によって今の人類になっているということ。アオバが語ったようにヒトは最後には部外者のふりをするということ、機械が進化してヒトは複雑な思考をAIに委ねたり、責任転嫁したりしてきた。引き起こされた悲劇の一部始終が2巻のアニラと、ご主人のリンとその娘アリンの物語だ。
必要な情報を削ぎ落した言葉に悲観する白髪側の主張も正しさをもっていると感じさせつつも、テスタが気づいた本当の想いは言葉にできない流れ(3巻)から、物語の最後の最後でハルが告げた言葉についての話はテスタと同じように信じ難く、すぐ後に熱いものが込み上げるシーンだった。
終章「去りゆくすべてと、あなたに」も想像の余地が楽しい幕引きだった。書名に込められた想いも分かる話だった。
かつては人の命を奪う武器を造る軍用ロボットが、痛みと覚悟を背負い、鉄の心血を注いで母親であろうとし、母親であり続けた物語だった。

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