双血の墓碑銘2 感想

昏式 龍也(著)さらちよみ(イラスト)
〇あらすじ〇
日本は“吸血鬼”が支配する欧米諸国に迫られ、ついに長き鎖国の世を終わらせた。
倒幕派が勢いを増すなか、元新選組隊士の柾隼人は吸血種の少女・柩と出会い、その眷属となる。
刺客からの襲撃を辛くもしのぎ、ついに江戸入りした隼人と柩。薩長の東征が迫る江戸市中で、二人を待ち受けていたのは幕臣・勝海舟だった。
そして、彼の背後には、またもやかの風雲児の姿があり、柩は己が血脈と運命を想う。
そんななか、隼人のもとに幼馴染みの澪がふいに訪ねてきて、ある願いを伝えるのだが……。

交わした約束と再会、新たに契りを結ぶ幼なじみとの物語をここに

なんということか、こんな不条理が招いた悲劇に絶句というか哀切にただただ悲恋の物語ともみてとれる切なさと、胸中にやりばのない怒りが蠢いているような感覚。変わらず沖田総司の剣戟が見物で面白く、悲嘆に暮れる物語であり、己の標を見立てて立ち向かう侍の物語でもあった。

幕末に開国を迫ったのは吸血鬼が支配する欧米諸国、軍門に下って吸血鬼どもの眷属になり末席に加わるのか、抗戦するのか、国内で政が割れてしまっている日本、同族の吸血鬼一人残らず殲滅する吸血鬼勢力という三つ巴の構図で、陰謀やら裏切りやらで侍として何を信じて剣をふるえばいいのか悩む人物に共感する中々込み入った争いが描かれて、終始緊迫感が伴う1冊だった。冒頭の隼人と柩の食レポを除いて。
1巻の最後に登場した裏で暗躍するただならぬ人物、坂本龍馬と吸血鬼による支配に一矢報いたく龍馬に従うジョン万次郎。新選組天才剣士の沖田総司。隼人と記憶喪失の吸血鬼の柩。そして・・・かつて約束を交わした6年ぶりに再会した澪。
しかたなかったといえど、なんとかならんかったのかという無念が残る。侍として生きると決めてから交わした約束を違えない彼は勇ましかったが、彼女との物語では因果の線を辿って自身を壊してしまいかねないほどの動揺があった。彼女も村人を想い、隼人を想い、苦渋の決断をするしかなかったとはいえ負い目を感じ続け迎えた結末がただ悲しく隼人自身辛すぎる。が、新たに約束を交わした隼人の今までと同様の不動の姿勢でもって履行していく背中が大きく見える。沖田が感づいたようにこれで一皮むけた感じ。今日の味方が明日の敵になるのかもしれない状況下で変わらぬ決意は、侍として交わした約束であるということ。
情勢を激変させるトリガーをにぎる柩、柩を守ることと、誰にも負けない2つの約束を決行していこうという隼人。個人の思いで剣をふるうこととなった沖田総司と裏方のジョン万次郎と坂本龍馬・・・敵対勢力を思えば戦力が心もとない中、迎える最終巻は西郷隆盛出るということで今以上の激動を迎えそう。強豪がいる新選組が敵となったのも大きい。

隼人の戦いも見物だけど表紙を飾る沖田総司の剣戟は1巻に引き続いて読み応え抜群。客観的に不利な状況の描写から伝わる危機感。死がすぐそこにあるかのような切迫感を感じさせつつスピーディーな展開が読んでいながら失速感なんてない音を再現した剣戟を想像させてくれる楽しさがある。相手が沖田総司と深い関係の人物なだけに複雑な思いも加わって夢中になった。まさに本巻の主人公といえる沖田総司が奔走する巻だった。

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