双血の墓碑銘3 感想

昏式 龍也(著/文)さらちよみ(イラスト)
発売日 : 2021年1月24日
〇あらすじ〇
日本は“吸血鬼"が支配する欧米諸国に迫られ、ついに長き鎖国の世を終わらせた。倒幕派が勢いを増すなか、元新選組隊士の柾隼人は吸血種の少女・柩と出会い、その眷属となる。『誠』の旗を掲げる集団の噂を耳にし、隼人と柩、沖田は仇敵を討つため東海道最大の要害、箱根へと向かう。故郷で侍としての矜持を改めて胸に刻んだ隼人は、柩を護るため、かつての仲間と鎬を削る。だがそこにも、裏切り者の思惑が絡み、隼人たちはさらなる時代の激動へと巻き込まれてゆく――。

平正眼の構えで放つ三段突きと村正の力、沖田総司の剣戟から放たれる轟音

史実の剣豪が出てくる吸血鬼と侍による幕末戦記を描いたシリーズ最終巻!ヒロインの柩が抱えた秘密や非道できな臭い坂本龍馬の狙い、新選組剣士の主人公隼人を裏切った新選組参謀の伊東甲子太郎の陰謀、吸血鬼を滅ぼす同族殺しの一党などごった煮の血戦と陰謀の物語は、戦いに血が滾り、魂の物語に心を動かされる話で満足! 

異能の力「墓碑銘」や、吸血鬼の神祖の始まりから血族が浸透した今の世界の体制までの歴史を振り返ったことで1,2巻との話につながり、各勢力の狙いが分かり、行く末がどうなるのか戦いにハラハラしながら読み進めていた。
シリーズの中で本巻が一番流血が多いと思う。凄惨な描写もとことん生々しく惨い。血戦のシリーズにマッチした描写だと思うし、交錯する多くのシーンで血しぶきが飛び交う戦記の物語で貫徹していたのがよかった。迫る吸血鬼、攘夷派、反倒幕派が入り乱れる中々落ち着いた日常を想像しずらい緊迫感漂う雰囲気が魅力のシリーズだと思うので。なので萌えやお色気シーンや偶発の異性とのドッキリなどでポイントを稼ぐライトノベルでなくてよかった。そういうのを求めていない、物語を読みたい自分としては。

物語は坂本龍馬があれしやがる前と後とだいぶ後の物語で、共通した魅力は、沖田総司の剣戟と柩と隼人の魂の話。戦闘描写でいえばもう一人の主人公といえる沖田総司の剣戟が圧巻。確かに主人公の隼人の戦いもいいけど彼は異能を制御できてなくてそれに頼りがちで無意識下での意図しない動きでラッキーな展開にもってきている。
だが沖田総司は違う。女体化した沖田総司。1巻で明かされているが実際は姉の沖田みつが沖田総司として戦っている。新選組の剣豪である沖田総司は、村正を使いこなしている。意識より先に反射的に咄嗟の回避行動ができるのも積み重ねた鍛錬とくぐってきた修羅場で身に付けた感によるものではないか。血を吸わせて刀「村正」と一体となって繰り出す代償を伴う技から鳴動が伝わってくるような大迫力ある剣戟なので映像で見たいと思ってしまう。
今回の敵が2巻で敵側にまわってしまった史実に出てくる新選組の近藤、土方、永倉、伊東、原田。各々が吸血鬼の眷属となって持ち前の剣の腕前に固有の異能「墓碑銘」の力が加わって強敵となっている。相対するのは柩の眷属で同じく墓碑銘が使える主人公の隼人と、同族殺しの吸血鬼が生み出した、血を吸わせて異能を発現する刀「村正」を持った人間の沖田総司。 多くを背負って苦戦を強いられて戦う沖田総司の剣戟に熱中だった。
1~3巻で吸血鬼に劣る人間である沖田総司が最後まで人間のまま、苦境に立たされながらも気迫と剣術と慧眼でもって立ち向かうバトルシーンが凄まじい。戦いの描写の魅力は沖田総司に尽きる。もう主人公だよ。

隼人と柩の魂の話では2巻の幼なじみの澪が出てきて尊くて切なくて優しい話でだいぶ心が揺さぶられてしまった。魂と血しぶきが舞う剣戟の物語に夢中になる幕末戦記だった。

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