星詠みの魔法使い1 魔導書作家になれますか? 感想

六海刻羽(著)ゆさの(イラスト)
発売日 : 2021年1月25日
〇あらすじ〇
世界最高峰の魔法使い教育機関とされるソラナカルタ魔法学校に籍を置く上級生の少年・ヨヨ。
魔法学校の地下空間に広がる工房迷宮でヨヨが出会ったのは、夢を抱く新入生の少女・ルナだった。
「わたし、魔導書作家になりたいんです!」
あまりにも非現実的な夢を、当然のように口にするルナの瞳は輝いていた。
目的を見失っていたヨヨには、より一層そう見えた。空っぽの少年・ヨヨと、夢を追う少女・ルナ。
二人の魔導書を巡る物語が、今幕を開ける――。

物語が大好きな星に手を伸ばした少女が魔導書作家を目指す話。物語の魅力を内包し、読み手に響いた魔導書がもたらす現象は神秘的で素敵なものであると思った。舞台が地球ではなく、魔法があるファンタジーな世界に立った魔導書作家が起こす奇跡は、この世界ならではの魅力的な発現だと思う。
大好きな物語を、その人だけに贈りたい物語を、届けたいテーマがある物語を魔導書作家になったルナは紡いでいくのだろうと、だいぶ先かは分からない展望を想像していた。
本作は、六海先生の好きを注いだ作品であるという。
第7回オーバーラップ文庫大賞<<金賞>>の作品
PVあり

力をもらい、時には支えになりたい。その人にとっての物語の主人公

奮い立たせる力をもらい、時には支えになりたい気持ち。それが相互に作用して前へと進む登場人物たちを描く印象に残る物語だった。抱えた傷や悩みに向き合った上で前へと踏み出す一歩が力強く、差し出す手が温かいような印象が。
物語が大好きで魔導書作家になりたい少女、ルナ。優れた魔法使いでありながら夢破れて心の空隙が満たせていない先輩のヨヨ。
面白い物語の着想を得るべく、1年生にしては危険な迷宮の層に行き空腹で倒れてしまったルナがヨヨに助けられてご飯を恵んでもらった後、打ち明けた魔導書作家になりたい夢を素敵だと言われ応援してくれたところがルナにとって身に沁みる励ましであり物語の始まりのところでもある。
ルナが魔導書作家になりたいと思ったきっかけの過去、夢を追うルナをかつての赤髪の少女に重ね、夢破れることとなった今でも引きずっているヨヨの過去にそこそこのページを割いてくれたのがよかった。
ヨヨの方は赤髪のエレナとの辛い出来事を回想させる書物で語られていたが。回想して、応援していると伝えた少女に投げかけてしまった言葉も過去を思い、過去を再現したくないが故の言葉だと思うと心痛であり共感する思いもある。魔法使いの極致といえる魔導書作家は難関であり、それを目指すと言った少女が数々の言葉を周りから浴びせられた過去は想像に難くないはずなのに、言ってしまった。伝えることもまた脱落者が多くたどり着くのが難しい5年生に至った先輩としての優しさだとも思った。
ヨヨの過去。将来の期待を課せられた魔法貴族である赤髪のエレナは、気高くて心配事など赤髪から連想される炎で焼き払うかのように自信がみなぎって、夢に向かって日々努力し猛進しているヨヨの同級生の少女だった。
だが数年が経って、努力しても越えられない大きな壁を前に徐々にまいっていく。そしてーーーってな話でヨヨは夢を追うエレナの背中を押してやりたくて数々の励ましの言葉をかける。
だけどヨヨは彼女を推し量った言葉をかけてやることはできていなかった。彼は魔法使いの中で、才能がある側に立っていたからではないかと思う。そして5年生に進級する試験レベルで互いのレベルの差を明白にしてしまった。

そんな過去があってヨヨは高すぎる夢を追うルナにかつてのエレナを重ねてしまう。
(エレナのキャラデザとても好きです)

物語の紡ぎ手として、主人公の懊悩は斯く在るべきものとして認めなければならない。彼のことを主人公であると望んだ彼女だからこそ、ルナ・アンジェリークという少女はヨヨが持つ苦しみや痛みーーーあらゆる絶望すらも抱き締めずにはいられない。

P183

ヨヨが時々陰りを帯びた表情を浮かべることはきっと過去に何かあったのだと推測しているルナだが、本人に聞かず、「何かあったら言ってください。わたしにできることならがんばりますから!」と支えになりたいことを伝えたうえで本人から話してくれることを待っている少女である。ヨヨの過去のことは知らないけど、ヨヨのあの言葉をかけられても、ヨヨがルナが思い描く物語の主人公であることは変わらず、最高な物語を書いて届けてやるという気概は彼女らしい一面であると思えた。主人公は懊悩するものであり、奮い立たせるきっかけが届ける物語であったらいい、なんて尊いのだろうと。

そしてカラー口絵になっている主人公が流星術式を起動するシーンは盛り上がる。きっかけもいいけど術式の仕組みも書名を思わせるすてきなものだった。 彼女の過去ともつながる感動のシーンでもある。
ヨヨという主人公の物語であり、魔導書作家を目指すルナの物語でもある。楽しそうな魔法のファンタジーを舞台にした物語の魅力を再確認できる話でもあってよかった。

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