西野 ~学内カースト最下位にして異能世界最強の少年~ 感想

ぶんころり(著)またのんき▼(イラスト)
〇あらすじ〇
学園カーストの中間層、冴えない顔の高校生・西野五郷は、界隈随一の異能力者だ。ダンディズムを愛する彼の毎日は、異能力を使ったお仕事一筋。常日頃から孤独な生き様を良しとしてきた。シニカルなオレ格好いいと信じてきた。だが、その日々も永遠ではない。高校二年の秋、童貞は文化祭を通じて青春の尊さに気付く。異性交遊の大切さを知る。これはそんな西野少年が、過去の淡白な人生から心機一転、日々の生活態度を改めると共に、素敵な彼女を作って高校生活を謳歌する為、あの手この手を用いて学園カーストを駆け上がらんと奮闘するも、一向に登れそうにない、なんちゃってハードボイルド物語(異能バトル付き)

異能世界の強者は輝かしい青春に手を伸ばす(一介の高校生とは考えが異なる)

裏では闇社会で名をはせている凄腕の異能もちエージェント、表では金はわんさかあるが虚無感が募る日々で、今後の人生を見据えた結果、まずは輝かしい青春を過ごすべく一念発起したごく普通の容姿の自分をかえる物語。
新たな自分に生まれ変わる決意は並々ならぬものだったと思う。家を飛び出して裏で稼いだ金で賄って一人暮らししているだけでもすごい。どんな経緯があって異能が発現したとか日の目を見ない裏方の稼業に手を染めたのか分からないけど自身を見つめなおし、このまま年老いたビジョンを描いた時に決意して即時行動に移す行動力や、適宜必要な判断は殺伐とした裏稼業で身につけてきたのだろうか。だがそこで醸成された見方・考え方と現在の普通や青春を謳歌する一般生徒とのそれにズレがあり、そこから次々とネタとなる様相を見せてくれるのが見物だった。だが笑いは腹の内にとどめておいて応援したい気持ちがあり、努力の方向性がズレてもいるが考えて行動し続ければきっと誰かの目に入って、介入され、物語の面白みをプラスしてくれるのではないかと今後の話への期待も高まった。
自分をかえると決意をしたきっかけとなったビジョンの描き方がすごい。中長期視点どころか老後の己の最期まで描いてみせる。

決して潤いの無い世界。
今以上に枯れた世界。

P137

中々残念な言動で意図せず周囲を逆撫でしてしまう主人公ではあるが、そこを面白おかしく表現できるところと仕事の場面では生々しく殺伐とした雰囲気を表現できる三人称視点は物語との相性がいいと思った。
表紙の少女の中では主人公への興味と利用価値がどれくらいの按分なんだろう。

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