イヌワシの目となり翼となる『マージナル・オペレーション01』感想

芝村 裕吏(著/文)しずま よしのり(イラスト) 2012/2
〇あらすじ〇
30歳のニート、アラタが選んだ新しい仕事(オペレーション)、それは民間軍事会社──つまり、傭兵だった。住み慣れたTOKYOを遠く離れた中央アジアの地で、秘められていた軍事的才能を開花させていくアラタ。しかし、点数稼ぎを優先させた判断で、ひとつの村を滅ぼしてしまう。
モニターの向こう側で生身の人間が血を流す本物の戦場で、傷を乗り越えたアラタが下した決断とは──?

ゲーム業界で有名らしい作者による初の小説『マージナル・オペレーション』
ニートを経て就職するも数年で会社が倒産し、職を探していた主人公の目に留まったのが命を失うリスクがある高収入の軍事会社の仕事。任期を無事終えて日本に帰れれば、軍事会社に勤めた経歴で日本の警備会社の仕事に有り付けるのではないか。そんな考えで入社してから軍事的才能を発揮して任地での経験で考えが変わり、いつか子どもたちが戦いとは無縁で平和な世界で生きられるように今自分にできる子どもや盟友を死なせないオペレートをする主人公アラタの戦いが始まる。

シリーズとしては、2020年時点で『マージナルオペレーション改10』まで刊行されている。間に前史にあたるシリーズと他2冊あり読む順番は

読む順番

①マージナル・オペレーション01~05
②遥か凍土のカナン1~7 ←マージナル・オペレーションの前史
③マージナル・オペレーション 空白の一年(上)(下)
④マージナル・オペレーション改01~10

だれ1人死なせない

外国の内戦なんて自分には無害だ。だから無邪気でいられる。だが現地に立って加担した時、シミュレーション訓練のつもりで敵のアイコンをコマンド1つで消したことが現実になって間接的に人を殺めてしまった時、戦いとは無縁の日本人はどんな境地になるのだろうか。例の1つが主人公アラタが陥る状況だった。そこで何がこんな惨状を招いているのか、まずは知るということから立ち上がったアラタの潜在的な記憶力を生かした躍進が始まるところが前半なので淡々とした文のリズムでも読ませてくれるのがよかった。
頼もしいオマル、耳をエルフのようにとがった形に改造したちょっとあれなソフィアに出会い、「貴方はイヌワシのようでした」と言ってきた、兵士に仕立て上げられた村人の少女。そして同じ少年少女たち。アラタ本人の気持ちとは裏腹に実績をあげて全幅の信頼を置かれることになり、主人公の心の移ろいと行動力からどんどん日本にいた時の人物像から離れていく様が見物だし本物の戦場に立つサラリーマンって感じで頼もしくかっこいい。上司が言ったように日本では発揮できなかった軍事的才能が開花していく。戦場に慣れてきて次第にオペレートする兵士をただの数としか見なくなるかというとそうではなく、根底にあって揺るぎないのは、いつか子どもが銃なんて物騒なものを持たず平和を享受できる環境で伸び伸びと生きられるようにすること。子どもの目に映った、空高く飛んで戦況を俯瞰する目となり導く翼をもったイヌワシのような旗手であろうとする。日本にいた時よりも明らかに生きる力をもった主人公の今後の采配と子どもたちの行く末が気になる。

BOOK☆WALKERでたまたま見かけた無料期間中の漫画版を読んで前々から気になっていた本作を手に取った。読めたのは真ん中あたりまでの1,2巻で漫画版の方が話が多いことに気づく。表紙に写っている少女ジブリールが戦場で初めてアラタの指示を聞いて、戦果から恩義を抱くようになる過程があったしソフィとのやりとりも本作にはない話があった。小説の続刊以降で語られる話をもってきたのかは分からないけどマージナル・オペレーションの面白味に触れるつかみとして無料公開は大成功だったと思う。そこで漫画の続刊を買うか、原作を揃えて1から読み始めて続きを読んでいくのかはどれくらいの比率で読者の反応が分かれるのか気になった。

過去に原作の1~5巻がBOXつきのセットで発売されていたのを中古で買った。

スポンサーリンク