機龍警察〔完全版〕感想

月村了衛(著) 2017/5
〇あらすじ〇
テロや民族紛争の激化に伴い発達した近接戦闘兵器・機甲兵装。新型機“龍機兵"を導入した警視庁特捜部は、その搭乗員として三人の傭兵と契約した。警察組織内で孤立しつつも、彼らは機甲兵装による立て篭もり現場へ出動する。だが事件の背後には想像を絶する巨大な闇が広がっていた…

警察の異端組織特捜部が龍機兵を武器にテロ組織と戦う

ミサイルや銃、その他武器を抱えた近接戦闘用有人二足歩行兵器『機甲兵装』が紛争に投入されている世界を舞台に新型機甲兵装『龍機兵』をもつ日本警察の異端組織が、国内で起きたテロやその背後で糸を引いている禍々しい組織を相手に戦う警察官の物語。2021年3月時点でシリーズ継続中であり、続刊の『機龍警察 自爆条項』で日本SF大賞を受賞している。公式が機龍警察の概要と読む順番についてガイドしている↓

10周年記念〈機龍警察〉オフィシャル・ガイド|Hayakawa Books & Magazines(β)

出没した機甲兵装が多くの国民を巻き込んで立てこもる事件から始まる導入。揺れる警察の威信や事件の動向に夢中になって読めることと、間間にみせる各人物の過去や経歴、ある事件をきっかけに法が可決して作られた『特捜部』が異端視されているところが気になりつつ今後の展開次第で読ませてくれる期待感が高まっていく。
まず、龍機兵自体が謎だけどそれに搭乗する面々が契約した傭兵であること。傭兵業界で名が知れている日本人、元モスクワの警察官で指名手配されていた男、多くの人を殺してきた元テロリストの若い女性の以上3名。1巻の特捜部の主要メンバーが上記3名と警察からの選りすぐりの精鋭たち。そして1巻読んで一番得体の知れない人物こそ本巻の人物紹介で一番目に並び、特捜部のメンバーを集めた部長である。龍機兵の搭乗員と同じく外部の組織・外務省からやってきた人物で古巣の人間は世界各地を転々としてきた彼の職務経歴を誰一人知らない。数回言う"偶然を信じるな"と優れた指揮、警察官の胸に刻む言の葉、冷徹で冷酷な判断と物言い。一目置かれている彼の采配にも注目。
警察組織という縦社会において特捜部のメンバーは裏切り者扱いで疎まれている。いきなり警部扱いで紛れ込んできたのが全面的に信用するのが難しい経歴をもつ日本人と外国人だし、選りすぐりのメンバーは試験も受けずに出世扱いになった者だし、彼らを統括するのが元外務省の人で警察官の成り上がりではない。白い目で見られることにより、同じ警察官として事件解決に向けて協働するべきなのに連携に支障をきたし、何かと不自由な面がある。だが裏切り者の烙印をおされようとも警察官としての誇りを胸に、懸命にささいな手がかりから解決の糸口を手繰り寄せる警察官の物語をみせてくれる。契約した傭兵たちも警察官として積極的に現場で動いている。そうした少しずつ見えてくるテロの背後にいる怪しげな組織、その組織とマークしている人物との関係などの捜査の物語にプラスして機甲兵装同士の戦闘でも盛り上げていく。
龍機兵3機はそれぞれシルエット、ボディの色、戦闘性能が違って名前はフィアボルグ、バーゲスト(黒い妖犬)、バンシー(アイルランドの民間伝承に出る死を告げる女精霊)
この3機が特性を生かした戦闘をみせてくれる。
1巻でも十分に読ませてくれたのに、まだまだ深遠な物語の入り口付近に立っている気分だ。

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