機龍警察 自爆条項〔完全版〕 上 感想

月村了衛(著) 2017/7
〇あらすじ〇
機甲兵装の密輸事案を捜査する警視庁特捜部は北アイルランドのテロ組織による英国高官暗殺計画を掴む。だが不可解な捜査中止命令が。首相官邸、警察庁、外務省、そして中国黒社会の暗闘に、特捜部の〈傭兵〉ライザ・ラードナー警部の凄絶な過去が浮かび上がる

龍機兵搭乗員にして元テロリストの過去

とまることがない面白さ。1巻と同じくはじめからおっぱじめる展開から浮上する背後の存在。そして本巻から職歴不明の敏腕部長の古巣でふる外務省が絡み駆け引きがはじまっていく。利用しているつもりでも相手に転がされているのか、逆なのか。駆け引きの間に入国してくる存在。そして驚天動地の抑圧に国内でどんな働きかけがあるのか。予想外につながっていく点と線。そんな展開で見せつつも各々の人物描写では印象に残る書き筋が好印象。龍機兵バンシーに搭乗する元テロリストの過去編でも追々印象が深くなっていくような筆致で物語に深みで出てきて、現在進行中のテロ事案につながっていく。そんな本作は機龍警察シリーズの第2弾にあたり日本SF大賞を受賞した『機龍警察 自爆条項』を上下にわけて加筆した完全版。第一章から第三章が<上>、第四章と第五章を<下>で描く。第二章と第四章が感情の色をうかがわせない龍機兵搭乗員の元テロリストの過去編。

彼女の過去。真実と事実で大きな開きを見た過去だった。伝聞でまわっている情報にどれだけの真実味があるのか。大衆が抱く真実と事実の違いをまざまざとみせられたものだし、本人にしてみれば少しは閉塞感が和らいだかもしれないが後々疼痛となって振り返ることが多いことだろうと思う。詩人のテロリストが過去にも現在にも大きな影響を及ぼす中核となる人物だった。自ら意義を見出して進んだ彼女であったが、それを見越した詩人テロリストによる誘致であるなら恐ろしい。詩人のごとく惹きつける言動で要注意人物となっているテロ組織創設者の1人『詩人』(呼び名) 自分が選択したことに対して人は相手に踊らされていると気づきにくい。正否は定かではなく想像にすぎないがどんな経緯があってテロ組織を脱退して日本警察の傭兵となったのか後々語られたらうれしいと思う。そしてテロ組織は脱退した者に処刑人を向かわせて殺させる。彼女が<死神>として処刑人をやってきただけに元処刑人が処刑人に殺される構図となる。テロ組織は脱退者を組織内で抹消し、外注することはない。脱退者に公的な犯罪履歴がなければテロ組織でどれだけ悪事を働こうと隠匿され、一般の経歴に傷がつくことはない。本作のサブタイトルの自爆は彼女を指しているのだろうか。内面で自爆していくのか、外も含めるのか、外面だけでは分からない彼女の心の痛みを描く話であり、彼女が古巣に殺されるかもしれない話でもある。そう考えるとテロ組織に入ったことで自爆を招くストーリーとなったのか。後半には彼女の龍機兵が特殊装備で活躍する話をみせてくれる。元テロリストを雇った警察組織と狡猾に派手に国内で動く真っ黒な組織の物語。前半だけでも十分。

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