機龍警察 自爆条項〔完全版〕 下 感想

月村了衛(著)
〇あらすじ〇
ライザ・ラードナー、警視庁特捜部付警部。そして元テロリスト。自らの犯した罪ゆえに彼女は永遠の裏切り者となった。イギリス高官暗殺と同時に彼女の処刑を狙うIRFには〈第三の目的〉があるという。特捜部の必死の捜査も虚しく国家を越える憎悪の闇が遂に見せる最後の顔。自縄自縛の運命の罠にライザはあえてその身を投じる。

テロ組織脱退理由が詳らかに。そこを揺さぶってくる詩人

警察に雇われた龍機兵搭乗員の元テロリストが過去、テロ組織から無言で脱退する過去が詳らかになった。脱退に起因することとなった過去を突いてくる元同僚の詩人のテロリストの手口は巧妙で悪辣だった。機龍警察シリーズは、はじめの1冊で龍機兵搭乗員の姿警部の過去を入れつつ本編が進んでいったが、この機龍警察自爆条項は2冊を通じてテロリストの生い立ち~加入~脱退を描き、本編にて所属していたテロ組織との戦いを描く。それらの背後に警察上層部にいる敵や、糸を引いている中国が蠢きながら。

当時ライザの心を惹きつけた詩人が書いた本と、機龍警察技術班の主任の父が書いた本との対比が、ライザの心を過去と現在の間で低回させているようで印象に残る。世界を信じず、他者を信じない詩人の本と、他者への思いやりに満ちた日本人の本。双方の本に自身を顧みながら思案に暮れ、いきついた先。あの無表情で無感情の様をみせてきたライザが日本人の書いた本を読んで表情をかえていく。本を書いた人の娘である技術主任の若い女性と、互いに女性同士どんな会話がされるのだろうかと想像を膨らませたくなる。 1巻で遅れて現場にやってきた元テロリストは、経験を生かして冷然と活躍してくれるだろうと思っていたら、この2冊でがらんと印象がかわった。

現場での有人機甲兵装同士のバトル、オペレート側の敵を詰みにいくための一手を繰り出すまでの過程は変わらず見物だ。元外務省の底が知れない沖津部長自身が詩人キリアンが紡ぐであろう物語を熟読した読者だったのかもしれない。現出した偶然でさえも物語に落とし込んでいく詩人と、この作者であればどんな物語を書くのか?と熟考を重ねていく沖津部長。この話すことなく敵の顔が見えない両者の対決も白熱。

スポンサーリンク