86―エイティシックス―Ep.9 ―ヴァルキリィ・ハズ・ランデッド―  感想

里 アサト(著)しらび(イラスト)I-IV(メカニックデザイン)
〇あらすじ〇
犠牲は――大きかった。〈電磁砲艦型〉との戦いは、セオの負傷はもちろん、幾人もの仲間の命をその荒波で飲み込んだ。シャナ。シデンの隊「ブリジンガメン」副長だった彼女も、その一人であった。復讐を誓うシデン、そしてシン行方不明の報に動揺して狙撃できず、シャナ死亡の遠因となったクレナは、平静を失う。しかし、戦況は少年少女らを慮ることはない。〈電磁砲艦型〉の逃亡先――現在交信可能な最後の国家・ノイリャナルセ聖教国。レギオンの脅威と戦う同胞でありながら、ヴィーカたち連合王国や、連邦上層部すら警戒する謎の国家に、シンたちは足を踏み入れる……!

今までは動くロボットを鉄くずに変えるだけだった

暴力の世界しか知らない子どもは、再びその世界に身を落としてしまう。
そんなとある小説で読んだ、現代の紛争地域の子どもの境遇についての一節を思い出した。
生きのびるために戦うことしか選ぶことができず、戦い抜くことが日常であった86たちの前に、生き方の選択肢が提示される。86ではない者からの働きかけで未来を考えるようになっていく86を横目に変われずにいる86が、戦場こそが自分の居場所であると気づいてしまう。主要人物のように外部からの働きかけが少ないのか、それはあるが漠然としていて実感がわかないのか分からないけれど、戦場以外の世界を知らないから、知っている戦場の世界に戻ってしまうといった現代にも通底する子どもの生き方を見ているようだった。違う生き方を考え始めてもいいのかもしれないと思っているシンエイ・ノウゼンは、レーナからの働きかけがだいぶ大きいと思うから。

戦いぬく、と。これまで1つの屈託も呵責もなく自分たちエイティシックスが言ってこられたのは戦う相手が<レギオン>だったからだと、命など持たぬ機械仕掛けの亡霊たちだったからなのだと、今更のように思い知る。

P308

表情や感情などもたぬ機械を相手に戦ってきた。取り込まれた死んだ仲間がいたら解放してやるためにひきがねをひいてきた。ついては動くロボットを鉄くずにかえるだけだった。撃てない86たちを見て学習したレギオンが次からは命の尊厳など度外視した残忍な搦め手でくるのかどうか、そんなレギオンを前に86たちがどうするか気になった。
戦士が不足するノイリャナルセ聖教国が採用した非人道的な兵器運用は、十分考えられる帰結の1つであると思った。

久々にエイティシックスを読んで著者の使用過多である「誇り」、体現止め、倒置法、とってつけたような詩情を思い出した。



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