僕の愛したジークフリーデ 第1部 光なき騎士の物語 感想

松山剛(著)ファルまろ(イラスト) 2021/6
〇あらすじ〇
かつて魔術師が隆盛を誇り、その後、「反魔素材」の発明で、大きく衰退を見せた世界。残った数少ない「魔術師」である少女・オットーは、旅のさなかにある一人の剣士と出会う。
 その者、「光なき」眼帯の女性剣士。
 名を『ジークフリーデ・クリューガー』。
 両目とも見えぬはずが、一瞬で野盗の群れをなぎ倒すその力に、「新種の魔術」の片鱗を見たオットーは、その力を研究したいという一心で彼女を追う。それが、身も心も《沼》に落とすことになると知らずに……。
 混乱の時代に出会った少女二人の、数奇な運命を描く。

松山剛先生の新作が出たことが何を意味するのか。それはMF文庫Jから刊行されている宇宙×夢の「君死にたもう流星群」の打ち切りの確度が跳ね上がったことだと思う。(つづく)とあった2019年12月の5巻を最後にしたまま。新作を知った時はうれしさと悲しさが同居した複雑な気分であった。上記は全て推測であって何の根拠もない。ただ2回重版した事実がある。

装丁から注目する

表紙をめくってタイトルが明記された1ページ目を見てある作品を思い出した。
淡い淡い水色が滲んだ面にフレームに囲まれたタイトルと著者とイラストレーターの情報のみのページ。思い出したのは、電撃文庫の読ませる文章による硬派戦記「レオ・アッティール伝」

姫君が暴君になろうと騎士道を全うするジークフリーデ

師匠が作った『大魔術典』の最後の1ページを埋めるべく魔術の探しの旅をしている主人公が、とある国の反逆者となった眼帯をつけた少女と出会って始まるダークファンタジー。魔術への知的好奇心にあふれ、魔術探しのため過去砂漠をわたるなど厳しい旅路を歩んできた胆力ある主人公。ジークフリーデに対する接し方のコツをだんだんとつかんでいく様子や子どもに物語の読み聞かせをするところなどダークファンタジーに差し込む温かな日常があって読み心地がよかった。ってところで思ったのは著者の松山剛先生のデビュー作『雨の日のアイリス』から感じるシリアスな物語の根底にある先生の「優しさ」のある筆致だと思う。このダークファンタジーが生温いというわけではなく、ダークなところにぽつぽつと心温まるピースがある。それらのピースが結実してもしなくても読み終わった後には「ああ、よかったな」って思える。

仕えた姫が暴君になろうとも、街の活気がなくなっても、かつての同じ騎士と相まみえてもジークフリーデは騎士道を全うする姿勢の数々を見せてくれた。悪い王様であったならどんなによかったことだろうと切なげなつぶやきをする彼女と姫君との間に余人が入り込む隙間などありはしない。国とは王であり民であると言う彼女は、反逆者と誹られようと彼女なりのやり方で国への忠誠を示している。目を見張る忠誠から目を疑う忠誠まで揺るぎない騎士道をありありと見せてくれた。そんな彼女に主人公がどう何か働きかけていくのか。
数は分からないけどジークフリーデの理解者が国内にいることは救いだと思った。ジェフがいるし、かつて同じ騎士だった仲間から物資の調達もある。

冒頭のようにジークフリーデと王女の安寧だった時の微笑ましい話を次巻でもあれば読みたいと思いつつ今の姫君の残忍さも同時に展開して対比ある構造もいいなぁ。姫君については2~3回装飾品としてあげられた赤い指輪が関係あるのかと思いつつ。

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