精霊幻想記 17.聖女の福音 感想

北山 結莉(著/文)Riv(イラスト)
〇あらすじ〇
その日、シュトラール地方の辺境でひとつの国が滅んだ。
民衆を革命へと導いたのは、聖女エリカを名乗る黒髪の女性。
新生国家の初代元首となった彼女は、休む間もなく列強諸国へと自ら足を運ぶ――すべては、己の悲願を達成するために。
「貴様、ただの道化ではないな。もっと質が悪い魔女の類いか」
「私はただ弱者が存在しない世界を作り上げたいだけです」
一方、リオは復讐を終えた報告をすべく、ヤグモ地方への帰郷を決めるが、その途中で思いもよらぬ人々と再会することに……!?

リオは進路はどこに向かっていくのだろう

前巻の「騎士の休日」に引き続き、平穏なパートが大部分をしめる構成だが、もともと「小説家になろう」発の連載形式で話を積み重ねていく構成で、もう17巻ということもあり、のどかな話が続いていても安堵感をもって読み進めることができる気がする。ここまで読んでれば精霊幻想記のキャラ達が動いて何かしている様子だけでも自分は十分だと感じてしまっている。 この世界でお風呂のシャンプーについてリオの花嫁候補たちが話の花を咲かせていようとも。シャンプーの質と使用者のレビューまでうかがえるという異世界の生活感ある描写ができるのが、このシリーズの読み手によってだいぶ変動する大なり小なりのチャームポイントでもあると思う。

新キャラの聖女で話の興味が引き立てられそうだけど自分は、1人の勇者とその子分たちが物語の構想について話し合っているシーンが短かったけど興味もった。

「ロリババアとただのロリの対比。そこがこの作品のテーマだからな。ただのロリとロリババア、どっちが魅力的よ?と、読者に問いかけるわけだ。(略」

P79

イラストレーターもいるしロアナ嬢が加わった4人で作品を作り上げて、まわりの貴族たちがどんな感想を抱くのか、作者が勇者ということでどんな言葉選びで感想を伝えるのか、市場に展開するための商流の検討や、作品作りや販路の拡大に没頭していった勇者にどんな心境の変化があるのかなど、そこんところだけでも1冊あっていいくらい。「異世界でライトノベルを広める」そんな話の展開が。

出発前にシャルロットに詰め寄られたリオとその周りで騒ぎ立てるヒロインたち。

(出発前からどっと疲れが出てきた)
これから出発だというのに、旅を終えた後のように精神的な疲労を感じたリオ。

P111-112

ルシウスに復讐するために戦いが避けられない道を歩んでいたリオは、周りのヒロインに危害が及ばないよう距離感を意識してきた。その復讐を終えて、今まで支えてくれたヒロインのために行動することが生き方の指針の1つとなったリオだが・・・2巻や3巻の頃の居場所にしばられない旅路を歩んでいた頃の方が自由で気楽だったのではないかと思ってしまう。その構図はさながら多くは望めないが自由な平民と裕福で贅沢な暮らしはできるが数々の縛りがある貴族と似ている。

あとは3巻の面々との再会も見どころの1つ。懐かしかった。

味わい深い物語を求める人に

硬派戦記「烙印の紋章」「レオ・アッティール伝」を手掛けてきたの著者の新シリーズ。

タイトルで想起される軽やかな筆致の物語ではない。
じんわり温まる小説や心揺さぶられる小説、熱い小説に読んでいれば幾度出会うことはあれど、はじめから最後まで味読ができた上で上記のどれかの小説たり得るものは、電撃文庫でデビューして20年活躍している杉原智則先生の小説が筆頭に挙げられる。面白いシーンで楽しませることも大事だけど小説の本質は、読ませる文章で深い没入感があり、味わい深く読める小説であると思う。物語を形作るのは文章だから。面白い上に味読ができれば、最高な小説に化ける。というのは杉原先生の本を手に取ってパラパラめくれば直感で全体的に文章がぎっしり詰まっていると分かる。とにかく読ませる文章と()のキャラの心の声によるテンポが堪らない。笑みをこぼしたり、ぐんぐんのめり込んだり、ドン!と考えさせられる心境に陥ったりと地の文の多さが魅力にしか映らない小説。会話の勢いでごまかさず、紛れもなく地の文で形作る物語で勝負している小説。
物語は、英雄の1人が災厄を阻止した平定後、敗戦国に立って目のあたりにした事実から自身の正義に問いかけ、悩み、虚飾に満ちた真実にメスを入れる物語。現地に立ってみて体感することは、真実は事実を曇らせるということ。読者の現代に通底するテーマがあり、現実に影響を及ぼす力があるライトノベル。
イラストレーターをかえた2年ぶりの続刊に、作品を追っていた多くの読者が歓声を上げた。

少しでも気になったら、1巻の熱いAmazonレビューの数々をご一読ください!
3巻は2年ぶりの続刊であるにもかかわらず1巻よりも星の数が多いのでファンの方々がどれだけ切望されていたか伝わってくるかのようです。著者はブログやTwitterをやっておらず宣伝は発売時の公式アナウンスだけなので多くの口コミが集まるのはうれしい限り。

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