精霊幻想記 18.大地の獣 感想

北山 結莉(著)Riv(イラスト)
〇あらすじ〇
聖女を名乗る六人目の勇者エリカによって、ガルアーク王国の公爵令嬢リーゼロッテ=クレティアが拉致された。リーゼロッテ奪還に乗り出したリオは、彼女の筆頭侍女であるアリアと共に聖女エリカの足取りを追う。
一方、囚われの身となったリーゼロッテは聖女が国家元首を務める神聖エリカ民主共和国の現状を目にし――……。

適役が増強してきた

おっと、帰ってきたリオを迎え入れる妻がアリアではないかと、既にはまっていたピースのように2人が夫婦であっても疑問を感じない。リオにとってもさ、本巻で描かれるくらいの接待でもてなしてくれるアリアの方が精神的に休まるのではないかと、前巻のつめよってくるヒロインたちと彼女らに心でつぶやいていたリオを見て思う。
最初、表紙は勇者きくちれんじ?のところにいる貴族の女子かと思っていたけどアリアだった。アリアといえば1巻で拷問を受けていたリオをセリアと共に介抱してくれた人物だったと思う。今はリーゼロッテお墨付きの強力な騎士。彼女は主人を守れなかった不甲斐なさを戦力に転化して活躍していた。
誘拐されたリーゼロッテといえば聖女が治める国で王政と民主主義について聖女その側近や議員たちと言いあっていた様子。聖女が掲げる理想には一考の余地があるが、リーゼロッテが今の立場からの現実的な物言いで水掛け論の様相となっていく。転生者にして国の在り方のためにここまで献身的な聖女には一見驚くところだが、それは表の顔であって、裏の顔で笑みを浮かべられるようもろもろ巻き込んで盛大なことを企図している。レイスも絡んで型破りな聖女の今後の暴走に期待。
大地の獣を前にして、リオの力が有限であることを見せてくれた一方で聖女の回復力から今後は長期戦や消耗戦で挑まれた時の展開でみせてくれそう。リオ陣が強力でレイスだけでは適役として心もとなかったところなので聖女の力が面白く絡んできそうだ。そしてアイシアの差し迫った時の包容力や安心感は群を抜いている。14巻の表紙のように。

他に味わい深い戦記を求める人に

硬派戦記「烙印の紋章」「レオ・アッティール伝」を手掛けてきたの著者の新シリーズ。

タイトルで想起される軽やかな筆致の物語ではない。
じんわり温まる小説や心揺さぶられる小説、熱い小説に読んでいれば幾度出会うことはあれど、はじめから最後まで味読ができた上で上記のどれかの小説たり得るものは、電撃文庫でデビューして20年活躍している杉原智則先生の小説が筆頭に挙げられる。面白いシーンで楽しませることも大事だけど小説の本質は、読ませる文章で深い没入感があり、味わい深く読める小説であると思う。物語を形作るのは文章だから。面白い上に味読ができれば、最高な小説に化ける。というのは杉原先生の本を手に取ってパラパラめくれば直感で全体的に文章がぎっしり詰まっていると分かる。とにかく読ませる文章と()のキャラの心の声によるテンポが堪らない。笑みをこぼしたり、ぐんぐんのめり込んだり、ドン!と考えさせられる心境に陥ったりと地の文の多さが魅力にしか映らない小説。会話の勢いでごまかさず、紛れもなく地の文で形作る物語で勝負している小説。
物語は、英雄の1人が災厄を阻止した平定後、敗戦国に立って目のあたりにした事実から自身の正義に問いかけ、悩み、虚飾に満ちた真実にメスを入れる物語。現地に立ってみて体感することは、真実は事実を曇らせるということ。読者の現代に通底するテーマがあり、現実に影響を及ぼす力があるライトノベル。
イラストレーターをかえた2年ぶりの続刊に、作品を追っていた多くの読者が歓声を上げた。

少しでも気になったら、1巻の熱いAmazonレビューの数々をご一読ください!
3巻は2年ぶりの続刊であるにもかかわらず1巻よりも星の数が多いのでファンの方々がどれだけ切望されていたか伝わってくるかのようです。著者はブログやTwitterをやっておらず宣伝は発売時の公式アナウンスだけなので多くの口コミが集まるのはうれしい限り。

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