精霊幻想記 19.風の太刀 感想

北山 結莉(著)Riv(イラスト)
〇あらすじ〇
少年の不在。そして、少女たちの戦い。
リーゼロッテ奪還のため、ガルアーク王国を離れたリオ。
その不在を最大の好機とみたレイスは、リオへ復讐心を募らせる【天上の獅子団】の傭兵たちと共にガルアーク城を強襲!
城内が騒然とする中、留守を預かる少女たちは襲撃者に抗うべく、否応なしに命がけの戦いへと身を投じることになるが――
「守られるだけの存在じゃないって、示したいんです。自分が弱いせいで、ハルトに距離を置かれたくないから!」
少女たちの覚悟に応え、一陣の風が戦場を駆け抜ける!!

強力なリオ陣、魅力が不足する敵

リオ不在での少女たちの戦い。巻が進むごとに戦闘も心理も描写が雑になってる。
なんかもうどっかの演劇公演を見ている気分だった。淡々とした戦闘、抽象的な描写。もう小説でのぞく必要がないように思えてしまった。と同時に自分の感性がもうライトノベル向きではないのかと痛感させられてしまう読後感でもあった。 並行して精霊幻想記シリーズのはじめのほうから比べて何か変わってしまってはいないか?とも思えてしまった。結局リオ陣営の戦いは「どうせなんとか上手く片付く」感が強く、ゴウキの登場がその印象を強めた。すでに必要十分な戦力のところにゴウキが加わってしまった。ルシウスの退場から敵が小物に見えてしまう。総じて自分がライトノベル向きではなくなってるんだろうなと老いというものを感じた。ライトノベルの原点は中学生の時に読んだ「涼宮ハルヒの憂鬱」だぞっとここに記録

本を読むときに印象的なところに小さな付せんを貼る読書スタイルなんだが、本巻は1つだけだった。惰性で読んだ感じだ。といってもこれからも読んでいく。上記の感想は自分の感性の変化であって作品はなんも悪くなく、シリーズもの精霊幻想記はいつも通りだと思う。思いたい。

次巻の聖女の侵略が今の心境ではよい刺激かもしれない。

他に味わい深い小説を求める人に

硬派戦記「烙印の紋章」「レオ・アッティール伝」を手掛けてきたの著者の新シリーズ。

タイトルで想起される軽やかな筆致の物語ではない。
じんわり温まる小説や心揺さぶられる小説、熱い小説に読んでいれば幾度出会うことはあれど、はじめから最後まで味読ができた上で上記のどれかの小説たり得るものは、電撃文庫でデビューして20年活躍している杉原智則先生の小説が筆頭に挙げられる。面白いシーンで楽しませることも大事だけど小説の本質は、読ませる文章で深い没入感があり、味わい深く読める小説であると思う。物語を形作るのは文章だから。面白い上に味読ができれば、最高な小説に化ける。というのは杉原先生の本を手に取ってパラパラめくれば直感で全体的に文章がぎっしり詰まっていると分かる。とにかく読ませる文章と()のキャラの心の声によるテンポが堪らない。笑みをこぼしたり、ぐんぐんのめり込んだり、ドン!と考えさせられる心境に陥ったりと地の文の多さが魅力にしか映らない小説。会話の勢いでごまかさず、紛れもなく地の文で形作る物語で勝負している小説。
物語は、英雄の1人が災厄を阻止した平定後、敗戦国に立って目のあたりにした事実から自身の正義に問いかけ、悩み、虚飾に満ちた真実にメスを入れる物語。現地に立ってみて体感することは、真実は事実を曇らせるということ。読者の現代に通底するテーマがあり、現実に影響を及ぼす力があるライトノベル。
イラストレーターをかえた2年ぶりの続刊に、作品を追っていた多くの読者が歓声を上げた。

少しでも気になったら、1巻の熱いAmazonレビューの数々をご一読ください!
3巻は2年ぶりの続刊であるにもかかわらず1巻よりも星の数が多いのでファンの方々がどれだけ切望されていたか伝わってくるかのようです。著者はブログやTwitterをやっておらず宣伝は発売時の公式アナウンスだけなので多くの口コミが集まるのはうれしい限り。

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