土漠の花 感想

月村了衛(著)
〇あらすじ〇
ソマリアの国境付近で、墜落ヘリの捜索救助にあたっていた陸上自衛隊第一空挺団の精鋭たち。その野営地に、氏族間抗争で命を狙われている女性が駆け込んだとき、壮絶な撤退戦の幕があがった。圧倒的な数的不利。武器も、土地鑑もない。通信手段も皆無。自然の猛威も牙を剥く。最悪の状況のなか、仲間内での疑心暗鬼まで湧き起こる。なぜここまで激しく攻撃されるのか?なぜ救援が来ないのか?自衛官は人を殺せるのか?

自衛隊の生存戦争

裏社会的なテーマを取り上げてエンタメ作品を手がける月村了衛によるソマリア国境付近の陸上自衛隊の生死をかけた生存戦争を描いた作品。捜索に当たっていたエリアに現れた、何者かから逃げてきた女性たち。保護のため声をかけようとしたところわずかの時間で女性と自衛隊数名が殺され、生き残った者達が生きて帰るために追ってと戦う活劇小説。生死をかけた戦いと自衛隊各員の過去をのぞかせながら進んでいくスートリーに夜更かしして読み入った。悲壮な思い、トラウマ、克己心を現行に反映させて避けられない戦いに身を投じる各員と勇姿をみせるソマリアの女性。利権問題で敵がなんとしても始末したい女性。
洞窟や街中、川、車上と転々としていく戦場や合気道や銃、爆弾、刃物と様々な命を賭した戦い方と目の付け所が多くて多くて。間にみせる自衛隊の陰湿な事実、各隊員の確執とその経過が没入感を高めていく。それらをはさむタイミングが月村了衛の他の本を読んでいると実感できる巧みさからくるものだと思う。
近接戦闘からスナイパーによる遠距離戦闘まで、狭いエリアから街中といった広いエリアまで怒涛の戦いが繰り広げられていた。
合気道の戦いもいいけど特に元暴走族の自衛隊がバイクに乗って暴走するところとか刮眼になっちゃう。
間にある現地の子ども達に日本の遊びを教えているところで心が温かくなり、後の展開で冷え冷えした。
戦争だ。最後で外交上の見地で業腹になるのも血を流さない戦いであると。

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